第4章 アリエッタの誕生日 約束と真実の愛
「ついたぞ、アンジェラ。」
海を見渡す丘についた。
丘の下は、切り立った岩が連なり、下の浜辺が広く広がっている。
「ここは?」
「ヴァシリスの離宮を建てる場所だ。海洋研究所に近い。」
エドワード王が馬からおりて、アンジェラ妃を抱き上げておろす。
「浜辺が岬になっていて、周りが海なのね。綺麗だわ。」
「海洋研究所と離宮に、隠し通路を作らねばならない。切り立つ岩の間に通路を掘るつもりでここにした。」
「ヴァシリスが好きそうな場所だわ。」
「アンジェラも、好きだろう。」
「そうね。いつかは海に住みたいなあって、思ったことはあったけれど。」
「もう少し北に、王家の所有地がある。そこに離宮を建てるか?
ラングドンに王位を譲れば、二人でゆっくり暮らせるぞ。」
「エドワード、あなた。そんな事を考えていたの。」
「15年も、そなたを放っておいたのだ。これ以上は、離れていたくない。」
「ラングドン達が、落ち着いたら、そうしましょう。私はあなたと一緒なら、どこでも幸せよ。」
「でも、海に入り浸りたいんだろう?」
「うふふ、嬉しい。」
王は、自分の妻が、こんなに嬉しそうにするのを、初めてみた気がした。
「あらっ、あれ、ヴァシリスとアリエルちゃんかしら。」
「そのようだ。ヴァシリスには離宮予定地を伝えてあったから、まさか、アリエッタの誕生日に連れてきたのか。
本当に仲が良いな。」
「あらっ、海に入るわ。」
ヴァシリスとアリエッタの声が聞こえてくる。
誓いの言葉のようだ。
「ヴァシリスが15年後にここで求婚するって聞こえたか?」
「えぇ、聞こえわ。アリエルちゃんが、必ずヴァシリスを追いかけて会いにくると、言ってるわ。
あなた、あれは?」
「トライデントだ。本当に剣からトライデントが出るのか。
アリエッタに鞘を渡して、トライデントを海に刺したぞ。」
地響きが聞こえてくる。
王と王妃は、顔を見合わせた。
高台からみると、鞘から金の波が出るように見え、海の中の地形が変わっていくのが、よく見える。
「海に海底トンネルができている気がする。」
「ポセイダルゴ様が、離宮の地盤を作ってくださったのね。」
「海底トンネルは、秘密の通路だ。どう作るか、ずっと悩んでいたのだが、人の手では難しい。だから、岩を掘るつもりだったが、何年かかるか、頭を悩ませていたのに。」
「ねっ、あの2人のことは、心配いらないって言ったでしょう。」
「そうだな、アンジェラ。では私は、これから、其方と一緒にいる時間をどうするか、頭を悩ませることにしよう。
アンジェラ、もう逃げられないぞ。私も追いかけ続けるから、覚悟せよ。」
「たくさん追いかけて下さいませ。
あら、あなた、みて、あの子達、ダンスを始めたわ。」
「もう子供の心配はしなくていいのだろう。アンジェラ、私を見てくれないか。」
王は王妃を抱きしめて、口づけた。
「陽が暮れる前に、私たちの離宮の場所を見に行こう。」
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ダンスのあと、浜辺に座って、さくらんぼを食べて、お茶を飲んだ。
アリエッタは、波打ち際で、貝拾いをしている。
「アリエッタ、そろそろ陽が暮れる時間だ。
このま浜辺を走って、夕陽を見ながら、帰ろうか。なまこは、海に返しておいで。月の宮の浴室には、入れちゃダメだ。」
「はーい」と返事をしながら、
ワンピースドレスの両方のポケットから、なまこを出して、海に返している。ポケットが膨らんで見えたから、一応注意したが、やっぱり隠し持っていたな。
離宮ができたら、なまこでもヤドカリでも、好きに持ち込めばいい。
アリエッタが急に波打ち際にしゃがんだ。
やっと乾いたワンピースドレスの裾が、まだびしょ濡れだ。
「この丸いの、、貝殻?」
僕はアリエッタが差し出したのを見に行った。
真珠の母貝でできた丸い輪だった。
「自然にできたのもの?」
僕は笑いが込み上げてきた。自然じゃない。
「アリエッタ、その輪っか、もう一つないか、探して。」
「ある。」
「早いな、見つけるの。」
「最初から、2個並んでたから。」
「くっくっ、アリエッタ、よく見てごらん。」
アリエッタが、輪っかを回してひっくり返してみている。
「あっ、うふふっ、あった。」
「なっ?ポセイダルゴ様だろ?」
「私たちの誓いを、聞いてくださったみたい。トライデントの模様が入ってる。」
「そうだ。輪っかの小さな方をかしてごらん。」
アリエッタの手をとって、どの指にはいるか試してみた。左手の中指にピッタリ入った。
僕は、その輪っかに唇をそっとあてた。
「ねえ、ヴァシリス様も手を出してください。」
僕が手を出すと、アリエッタは、僕の左手の中指に輪っかをはめた。ピッタリだった。
「約束」と言って、アリエッタも、僕の左手の輪っかに唇をつけてくれた。
「さっ、アリエッタ、帰ろう。
お前の誕生日だから、もっと派手にしてやりたいとも色々考えてたけど、僕は2人で過ごしたかった。毎年毎年、海ばかりですまない。」
「ヴァシリスさま。3歳の時も私の願いを全て叶えて下さったでしょう。
今日も、私の願いを、全て叶えてくださいました。」
「海に来る以外に、願い事があったのか?何故言わなかったんだ。」
「もう叶いました。
私、ヴァシリス様とダンスの練習がしたかったのです。海にピクニックにもこれましたし、
おかあさまからも、内定をいただきました。
未来のおうちの場所も、見せてくださいました。
そして、大事な大事な大事なお約束も。
ポセイダルゴ様に、誓ってくださいました。
そして、今から、太陽が沈んでいくところを、一緒に見てくださるのでしょう。」
「じゃあ、片付けて、夕陽を見ながら、帰ろうな。」
ユリシーズに声をかけて、出したものをアリエッタと一緒に片付けた。
ランチボックスに全て詰め込んで、護衛に渡した。
アレックスを口笛で呼ぶと、すぐに走ってきた。
僕はアレックスに飛び乗り、アリエッタを引っ張りあげて、横抱きにしたら、
アリエッタが、前を向いて乗ると言いだした。
「アリエッタ、ドレスで馬に跨ってはだめだ。
レディのマナー違反だ。絶対にだめだ。」
「アリエッタが、ほらっ」と、少しワンピースの裾をあげた。
「オランが、馬に乗るときは、長いズボンをもう一枚履きなさいって。」
「じゃあ、いつもの下着の上に長いのを履いたのか?」
「いつもの上に、半分長いのを履いて、その上から、この長いのを履いたの。長いのだけは、ワンピースと同じ色で、他のは、いつもの白いの。」
ユリシーズを見ると、頷いている。
そっか、5歳になって、少し背が伸びて、ドレスの丈が足首になったと、母上が話してくれてたけど、下着も、女性らしく変わってるんだ。
「わかった。じゃあ、前向きでいいけど、乗り方を考えるから、待って」と、
横抱きから、どうやって前向きに座らせようか、ユリシーズに聞こうとした時だった。
何と、アリエッタは、一瞬のうちに、鞍の上に素足で立ち上がり、僕の頭に手を置いて捕まりながら、しゃがんで、鞍に跨ってしまった。
「はい、できましたっ。」
「アリエッタ、何をしたっ。そんな行儀の悪い事をして、破廉恥だろうっ。
それに、何で素足なんだ。サンダルはどうした」
僕の剣幕に、アリエッタが怯んだ。
目を丸くして固まっている。
「殿下、叱りすぎですよ。」とユリシーズが言う。
「ユリシーズ、今のは破廉恥ではないのか。男の前で、素足で、、しゃがむなど、、」
僕がユリシーズに向いて、食ってかかっていると、ユリシーズが笑い出した。
「ごめんなさい、ヴァシリスさま。」とアリエッタが謝っているので、アリエッタを見ると、いつのまにか、横座りに戻っている。僕が見てない間に、また鞍に立って横座りしたんだ。
「アリエッタ、だから、鞍の上に立ち上がるなと言っているだろう。」
「くっくっ、殿下、今日のところは殿下の負けでございます。お誕生日ですから、今日はお怒りを収めて下さい。それに、姫さまは、殿下に、まだ、その大人の男性を感じてはおられませんし、殿下も、そう言う雰囲気を匂わせているわけではありませんから。」
そう言われればそうだけど、淑女の嗜みは、幼い頃から身に付けねば、身を守る振る舞いを身につけてくれなければ。。
「わかった、ユリシーズ。怒ってすまない。」
「女性が騎乗で、同乗する方法はいくつかありますが、それぞれの体格や筋力で、乗り方が変わります。
これから、騎士団でも習得いたしますので、今日はお怒りを収めて下さい。
アリエッタ様が身軽すぎましたね。」
「僕の前に、前向きで乗せるにはどうしたらいいか、それだけ教えてくれないか。アリエッタは、すぐに言い聞かせておかないと、独自に突っ走るから危ないんだ。」
「先に姫さまを乗せてから、殿下が後ろから跨るのが一番早いのですが、万が一、馬が勝手に走り出すと女性が馬に連れ去られてしまいますから、
こちら側から乗るのであれば、殿下が乗ってから、姫様を引き上げながら、殿下が腰を持ち上げて、姫さまが、ドレスの中で、跨る側の足を後ろに曲げながら、鞍の反対側に足を滑らせば、乗れます。
殿下が姫さまを持ち上げる力と勢いが大事です。それと、乗ったら、すぐに姫さまの、お腹まわりを支えて、手綱をしっかり握って下さい。」
「アリエッタ、前向きに乗せてやるから、一回おりろ。あんな破廉恥な乗り方はダメだ、」
アリエッタは大人しく、ずるずるっとアレックスから降りた。また勝手にずるっと降りている。
「アリエッタ、降りる時も、勝手に降りるな。頼むから、僕のエスコートを待ってくれないか。お転婆がすぎるぞ。」
ユリシーズが笑いを堪えている。
「アリエッタ、僕が右手を取って、引き上げながら、左手で腰も引き上げる。その瞬間に、右足を少し後ろ側に曲げて、鞍の上に来たら、足を下ろすんだ。わかるか。決してドレスが捲れ上がるような足の曲げ方はするな。わかったか。」
「はい、ヴァシリスさま。ごめんなさい。わかりました。」
「前向きに乗りたいんだろう。練習してできるようになるまで、今日は帰れないからな。」
「はいっ」
「アリエッタ、手を」
僕がアリエッタを引き上げて、腰を抱え上げた瞬間、アリエッタは鞍に乗っていた。」
「ヴァシリスさま、簡単っ!」
「ほうっ、殿下、姫さま、お見事です。」
アリエッタが振り向いて、にっこり笑ってさた。
「ありがとうございます。ヴァシリス様。」
意外と簡単だった。怒るほどではなかったのか。
「殿下、姫さまが前向きだと、横座りよりは、速度を出しやすくなります。帰りは、少し飛ばしてみましょう。」
「あっ、ヴァシリスさま。サンダル履くの、忘れました。」
「うぐっ、もうよい。
誰かアリエッタのサンダルを持っているか。」
「殿下、こちらで、確保しております。」
「すまない、あとで、ランチボックスと一緒に侍女に渡してもらえるだろうか。」
「はっ。」
「では、アリエッタ、夕陽が沈むまでに、浜辺を抜けるぞ。しっかり、手綱のここを持って。離すなよ。」
「はい。ヴァシリスさま。ありがとうございます。」
「帰るぞ。」
僕達は、海に沈む夕陽に向かいながら、浜辺を駆け抜けた。
アリエッタが顔をしっかり上げて、夕陽を見ている。横座りと違って、目線が僕と同じで身体が安定しているからか、あちこちを見ている。
「あっ、クーボとクールが、ついてきてる。
太陽が綺麗。海の色が、少しずつ、変わっていく。わあっ、きれい。」
クールとクーボがジャンプしながら、ついてくる。
太陽が海に沈み、海面がオレンジ色の黄昏になった頃、海を後に、月の宮への林に入った。
反対側から、騎乗の一群だ。砂埃が見える。
「ユリシーズ、あれは、不審なものか?」
「いえ、陛下と王妃さまです。親衛隊長と親衛隊の護衛がおります。」
父上と母上が遠出?
驚いているうちに、父上の漆黒の愛馬ライアンが近づいてきた。さすがに、ものすごく早いし、父上は、かっこいいなあ、と思ってしまう。
近くまで来て、少しスピードを緩めて、話しかけてくる。
「おう、ヴァシリス、其方もデートだったのか。」
そなたも?どう言う事かわからないけど、一応、冷静に答えた。
「はい。アリエッタの誕生日のプレゼントに、離宮の浜辺にピクニックをしに。父上も、デートですか?」
誰とデートだ?
「そうだ。私たちの隠居後の離宮の領地を見に行っておった。」
薄暗くて、父上の腕や身体で気がつかなかった。
なんと、母上が、父上の馬に同乗している。
よく見たら、父上の瞳色のワンピースだ。
母上が、横座りで、父上の腕と胸に守られて、馬に揺られている。
思わず言ってしまった。
「お熱い事で。」
「まあ、嫌だわ、ヴァシリスったら。」
母上の極上の笑顔が、また出た。
今日は朝から、父上と母上の熱気に当てられっぱなしだ。
「アリエルちゃん、楽しかった?」
「はい、おかあさま。とっても、素敵なプレゼントをいただいて、浜辺でダンスもして、幸せな時間でした。」
アリエッタ、そんな恥ずかしい事言うな。
「お熱いことで。王子殿。」
父上が、片眉を上げて、ニヤニヤしている。
「くっっ。」
「よし、ヴァシリス、王宮まで競争だ。大事な女性を落とすなよ。」
「負けませんよ。アレックス行くぞっ、」
「陛下っお待ちください。」
「殿下、危ないです。お待ちくださいっ。」
両方の護衛が焦って追いかけてくる。
「ユリシーズ、絶対に負けたくないっ。」
「殿下、体を低くして。姫さまも、殿下の身体の向きに合わせて上半身を、低くしてくださいっ。」
アリエッタが、体をかがめてくれた。お転婆なだけはある。反応が早かった。
王宮までは、デットヒートで、ほほ同時に帰着した。
勝ち負けより、父上とこんな競争したのは、初めてだった。
「ヴァシリス、早くなったな。充分に騎士団で通用するぞ。」
「父上、ありがとうございます。でも、父上は、やっぱりすごいです。」
王宮について、アリエッタを下ろそうとしたら、サンダルを履いてない事を思い出した。仕方ない。
「アリエッタ、サンダルがないから、ほら、僕に捕まって。」
結局、赤ちゃん抱っこで、部屋まで連れて帰った。
それを見た父上が、また、母上をお姫様抱っこしている。父上、僕の真似をするなっ。
月の宮の侍女たちが、右往左往している。
母上は父上に抱き上げられ、僕もアリエッタを赤ちゃん抱っこだ。
オランが出てきて、目を丸くして、苦笑している。
「アンジェラ様は、陛下にお願いいたします。
さっ、坊っちゃま、姫さまをお預かりしますね。姫さまは、またサンダルを脱ぎ捨ててきたのですね。」
「オラン、すごいです。当たりですぅ。」
アリエッタは、素足を、意気揚々と威張っている。
とりあえず、アリエッタをオランに預けた。また水遊びをしたので、ワンピースごと海水に浸かった事を伝えて、湯浴みを頼んだ。
すぐにエントランスに引き返して、
ユリシーズ達と厩舎に戻る。
第三騎士団の護衛に、今日の礼を言って、アレックスの世話をするのに厩舎に入った。
父上が、愛馬ライアンの世話をしていた。
「おう、ヴァシリス。
今日は、お前たちのおかげで、アンジェラと久しぶりにゆっくり過ごせた。礼を言う。」
「えっ?僕は何もしてないですよね?」
「ヴァシリス、お前がアリエッタを大事にしているだろう。それをな、アンジェラが、羨ましいと言ってな。」
「母上が、そんな事を?」
父上が、ライアンにブラシをかけながら、話してくれた。
「昨日、アンジェラが、ブチ切れていただろう?
アンジェラと結婚してから、遠出したのは、一回だけだった。
王が巫女を得ると、先王との引き継ぎ時間は限られていてな、数年で、この世を去られる。
だから、世継ぎを早く作り王権を安定させなくてはならず、それ以外は全て国務が優先だった。
アンジェラがパトリックを懐妊したとき、父上がこの世を去られ、私は国務一筋になった。
パトリックが生まれた時も、国が喪に服していて、そばにいてやれなかった。
ブランドンとパトリックは、もちろん王子だから、世継ぎのプレッシャーからは逃れたが、願った海洋ヒーラーではなかった。
喪があけて、周りから海洋ヒーラーの世継ぎを迫られ、アンジェラは懐妊した。そしてヴァシリス、やっと、お前が生まれたんだ。
それから3年でアリエッタが生まれ、お前と光の調和がおきて、アンジェラを放置せざるおえなかった。結婚して、15年近く、月の宮に閉じ込めた。そして、今日、やっと、2度目の遠出に連れて行けたのだ。」
「父上、、、」
「アンジェラが今日、着ていたドレスは、14年前に、私が贈ったものだ。また遠出しようと、約束したのに、15年もの間.アンジェラを待たせてしまった。
ヴァシリスとアリエッタがいてくれたから、
今日、お前が、アリエッタにドレスを贈り、海に出かけたのをみて、アンジェラが、お前たちの恋に恋焦がれているのを知ることができた。
だから、アンジェラを遠出に連れて行けたのだ。
ヴァシリス、15年は長い。
私は結婚してから、今日まで、アンジェラを忘れた事は一日もなかった。会いたくて、たまらなかった時もあった。だが、周りの目は、王としての振る舞いを求めてくる。
ヴァシリス、今日、お前たちが、海に誓っているのを、丘の上から、偶然みたのだ。
羨ましかった。浜辺で、2人でダンスをしているお前たちを誇らしく思った。お前たちは、必ず幸せになれる。だから、大事にしろ。
お前が王位につかないから、私は長生きできると言ったのは覚えているな。
ヴァシリス、お前がいるから、私は王位を譲ってから、アンジェラを幸せにする時間を得ることができるのだ。
だから、礼を言いたかった。」
話を聞いてる僕の方が、涙が出てきた。
昨日、母上が、色々な話をしてくれた。
ポセイダルゴ様も話してくれた。
今日は、父上が、話してくれた。
どれほど苦しかっただろうかと思う。
僕が、今からの15年を考えると、苦しいから、わかるんだ。
「ヴァシリス、お前が泣いてどうする。」
「父上、、うっ、、うっ、、
だって15年が、長いのは、僕が一番わかってるから、だから、今日、海で誓ったんだ。
15年は、勝手には過ぎてはくれない。
ちゃんと生きてかないと、15年は過ぎてくれないんだ。早く大人になりたいけど、飛び越せないから。、だから、父上、父上、、」
父上が僕を抱きしめてくれた。
「ヴァシリス、お前ならやれる。私の息子だ。
私は15年経って、アンジェラの思いを知った。
しかし、お前は違う。すでにアリエッタの気持ちを知っているではないか。ヴァシリス、お前なら大丈夫だ。」
「父上、わかっているのです。ただ、なぜか苦しい。手に入らないものを追いかけてるわけでもない。片思いでもない。
アリエッタが僕を思ってくれているのも、わかっているし、アリエッタも僕の愛情をわかっているはずなのに、苦しいのです。
どこまで、何を我慢すればいいかさえ、わからない。
だから、何度も同じ事を言ってしまう。
今日は、アリエッタの方が、僕に約束して誓ってほしいと、言ったのです。
きっとアリエッタも、苦しいはず。
こんなに大切なのに、僕の手から離れてしまう。」
「ヴァシリス、、離れるのではない。時間があくだけなのだ。」
「15年も?」
「そうだ。だが、心は離れないと、信じろ。愛は疑うものでも、忘れるものでもない。
お前がアリエッタを愛している自分自身を信じるんだ。愛してほしいと思うな、考えるな。
もう愛されている。だから、愛してくれるアリエッタを、愛し続けていく自信を持て。」
「僕自身の気持ちを僕が信じるのですね。
それで、失わずにすみますか?」
「失わない。
お前の愛が、揺らがなければ、アリエッタは失わない。だから誓ったんだろう。
自分自身が、強くなる、と。
先を走り続けるから、自力で来いと、お前は言っただろう。あれで良いんだ。
アリエッタも、理解できているんだ。
アリエッタは、必ず追いかける、と誓っただろう。
それが愛だ。ヴァシリス。それが真実の愛だ。
愛し抜け。」
父上の腕のなかで、僕は声をあげて泣いた。
思いが溢れます。そこには愛があるはず。
読んでいただき、ありがとうございます。




