第4章 アリエッタの誕生日 ダンス2
ダンスのレッスンが続きます。
アリエッタは、すでに大魔王の手を取っていた。
「ぐぅっ、父上〜。」
「さっ、ヴァシリスは、私と練習、練習、早く上達して、アリエルちゃんを取り返しなさいっ、うふふっ。」
僕は、音楽が始まったフロアに母上に引きずられて戻った。
「ヴァシリス、もっと、体の中心で支えるのよ。」
「だって、母上の方が僕より背が高いですから。」
「身長差は今は考えないで。アリエルちゃんが、全て力を抜いて寄りかかっても大丈夫なくらいに、あなたの身体の中心をブレさせちゃだめなのわかる?」
踏ん張ってみた。
「そうそう、それでいいから。顔は笑って。剣の稽古みたいな顔はダメよ。
ほとんどの騎士がダンスが上手なのは、日頃から全身を鍛えてるからなのよ。
ヴァシリスも、鍛錬してきたから、自然にダンスが上手くなってるけど、あとは流れるようなリードをすれば、もっと綺麗なダンスができるわ。」
母上、結構厳しい。僕が息が上がるほど踊っているのに、母上は息が上がっていない。
「ほらっ、ヴァシリス、私の手を取るときに、目で追わないで、感覚で指先をとらえるのよ。」
目で追うなって?見えない場所に母上の手があるんだから、、、
「ヴァシリス、アリエルちゃんの腕の長さって、わかってるでしょう。自分を信じて、アリエルちゃんの指先に触れる感じで合わせるのよ。
あなたが、アリエルちゃんを包み込んで行くのよ。わかる?」
「包み込む、、」
そっか、さっきの父上は、最初から最後まで、どんな距離でも、母上を包み込んでいた。
微妙な距離の間があるにもかかわらず、
父上は、いつも母上を全身で抱きしめているような感じだった。
だから見ていて、ドキドキしたんだ。
「ヴァシリス?わかったのね?」
「でも、母上、それは、恥ずかしいです。」
「そうかしら?
エドワードは、最愛の女性と踊るダンスって言ってたでしょう?」
「あっ、そうです。」
「さすがにエドワードも、私以外の女性とあんな風には踊らないわ。
もしそれを陛下がすれば、ただの色男の女たらしになるだけだもの。
私と踊る陛下をみて、世の女性たちは、心の奥で、私の代わりになりたい、と思うから、失神するわけ。
私だって、他の貴族男性に、あんな風に全身は預けないわよ。ダンスって社交だから。
心の中では、これ以上近づかないでって思うことの方が多いわよ。触られたくない人もあるけど、王妃として、踊ってあげなくちゃいけない事もあるのよ。」
「嫌々、踊ることもあるのですね。」
「そうよ、だから夜会では、エドワードも、嫌々、他の夫人と踊らなくてはならない事もあるわけ。情報収集や、敵を丸め込むために、夫人を陥落させる事もあるわけよ。」
「夜会って、そんな場所なのですか?」
「そうよ。だからラングドンには、エドワードが、夜会での振る舞い方を叩き込んでいたわ。
まだヴァシリスたちは、素敵に踊るのを見せつけるだけだから、幸せなほうよ。」
「知らなかった。兄上にはそんな役目も。」
「まあ、それはラングドンの役割だから、心配しないで。それより、ダンスの時は、アリエルちゃんが他の誰と踊っているか、目を離しちゃダメよ。危なくなったら、さりげなく踊りながら近づいて、助けるのよ。
《そろそろ、僕の婚約者を返してもらえないかな?》と言えば、返してくれるから。
あとは、マナー違反ギリギリなんだけど、
《3回続けてアリエルちゃんとだけ踊れば、僕の女に手を出すな宣言》になるわ。」
「ちょっぴり、大人の話だけど、
これからヴァシリスはダンスをする機会が増えていくから、知っておいてほしいの。
アリエルちゃんと結婚するまでの間、ダンスは、
ヴァシリスがアリエルちゃんを全身全霊で
包み込んであげられる唯一の時間になるわ。」
「はっ母上、ありがとうございます。」
「だからと言って、エドワードみたいに、色気は出さなくても、いいわよ。あなた、それなりに、海の王子らしく色気はあるから、ウフッ。」
母上が悪戯っぽく笑った。
「アリエッタ、ヴァシリスとのダンスは、素晴らしく綺麗だった。父として、嬉しかった。」
「お義父さま。ありがとうございます。
あの、お義父さまとおかあさまのダンスは、おとぎ話のように、素敵でした。」
「アリエッタもヴァシリスと、あのように踊れるようになるぞ。」
「本当ですか?」
「今から教える事を忘れないように。」
「はいっ。」
「アリエッタ、もっと、からだ全体で、寄りかかりなさい。力を抜いて。」
「倒れそうで、、」
「私をヴァシリスだと思って。必ず支えるから、信じなさい。」
「はいっ。」
「アリエッタ、下を見ない、顔は顎を上げて、ほらこのくらい、あげるんだ。背中をもう少しそらして。」
「はいっ、お義父さま。」
「アリエッタ、見つめて。ヴァシリスの瞳から、目をそらしてはいけないよ。
一生、そばにいるのだろう?」
「はい、ずっと、おそばに、います。」
「なら、ヴァシリスの瞳から、目をそらしてはいけないよ。ヴァシリスの瞳だけ、見つめてやってほしい。」
「お約束します。」
「そこで、ターンだ。回ってる間も、ヴァシリスの瞳を想って、探すんだ。そう、そう、そうだ。」
「おとうさま。」
「アリエッタは、ヴァシリスに、よく抱きしめてもらっているだろう。」
「はい、いつも。」
「ヴァシリスが騎士団に、入ったら、それはもう、できなくなる。二人が一緒にいられる時間も、後わずかだ。」
「おとうさま。つらいです。」
「だが、其方らが、成人して、結婚式を終えたら、ずっと一緒にいられる。
それまで、15年、ヴァシリスを思い続けてくれるか。」
「はい。必ず。」
「これからの15年、お互いに離れていても、その日のために、するべき努力をしてほしい。」
「はい、必ず、いたします。」
「そのかわり、ヴァシリスとダンスをするときは、ヴァシリスの腕の中だ。抱きしめられていると信じて、心を預けて踊りなさい。」
「おとうさま、ありがとうございます。」
「それから、アリエッタ、これから、どんな舞踏会に出ても、ヴァシリス以外の男とは踊らなくていいからな。
嫌な男に誘われたら、私か、ブランドンかパトリックがアリエッタの相手をしよう。だから、安心しなさい。王家以外の男の手を取る必要はない。
わかったね。」
「はいっ、おとうさま。」
「よし、アリエッタ、ダンスが、上達した。
もう大丈夫だ。
ヴァシリスと踊っておいで。」
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父上の練習から戻ったアリエッタのダンスは、段違いに変わっていた。
僕とアリエッタは、汗だくになり、練習し続けて、父上と母上のOKがでた。
読んでいただき、ありがとうございます。




