第4章 婚約内定3
父上とセレステと話し合って、かなり気持ちが楽になった。
あとは、巫女の剣を、どう扱うかだ。
しばらくすると、ユリシーズが、アラン親衛隊長と戻ってきた。アラン隊長はウリエル公爵家の長男で、ユリシーズの兄だ。
兄弟揃って、騎士団のトップだ。ウリエル公爵家は、代々、軍閥で、騎士団や軍を束ねる家柄だ。
「陛下、ヴァシリス殿下の剣について、ユリシーズに聞きました。」
「アランは、どう思う?
巫女の剣を私が使っていた時は、獅子の炎だった。ヴァシリスに引き継いで、トライデントになった。
ヴァシリスは、王の剣も、王太子の剣も持たない。」
「まず、陛下、殿下、ご相談ですが、《巫女の剣》を別の言い方に変えていただく方がよいかと。我々の間ではわかりやすいですが、
周りに聞かれると、巫女とは何かと勘繰られます。」
「迂闊であったな。ヴァシリス、呼び名は何がいい」
「父上は、守護の剣と言われてました。」
「ヴァシリスに渡す時にな。先王から賜った時に、巫女を守る、守護の剣、と言われたからだ。
この剣は、王剣より尊い。実際に、王剣は何本も作られているし、折れることもある。
しかし、この王国の歴史の中で、巫女の剣は、この一本だけだ。
いずれ、ヴァシリスが息子に譲る事になる。」
「陛下は獅子の剣と、呼んでおられたが」
「トライデントとは、言いにくいです。
普段は普通の剣ですし。」
「海神の剣は?」
「そうですが、急いでいるときに、言いにくい。」
「確かに殿下は、いつも《僕の剣》と呼んでおられますね。」
「呼び名が決まるまでは、僕の剣で、良いですか?父上の《獅子の剣》の印象が良すぎて、思い浮かばないです。海の剣、波の剣、海神の剣は、恥ずかしいし、、」
「ヴァシリス、話を先に進めるぞ。」
「はっはいっ」
「ユリシーズとも意見は交わしているのですが、
殿下が、日々の鍛錬で、守護の剣を使いこなせるようになってきて、守護の剣の役割と言うか、使い道が、本来の目的になってきた可能性があります。
陛下は、巫女を守る時だけに使われたので、獅子の炎しか出なかった。
しかし、ヴァシリス殿下は、最初は、巫女を守るためとは言え、自害するために使い、トライデントになったわけです。
その時のトライデントの用途は、ヒーリングパワーを溢れさせています。決して直接的な攻撃ではありません。」
「殿下との稽古の中では、直接的な攻撃方法としては、トライデントの雷で倒す、または、紺碧から色が変化して、対象が爆発するような攻撃をしています。」
「ヴァシリス殿下、普段、紺碧色だと、何が切れますか?」
アランが色々と分析してくれている。
「ユリシーズ、何か切った事、あったっけ?」
「殿下は、あまり攻撃的なご性格でないので、、、生き物は、助けても、切り捨てることはしませんし。」
「あっ、ユリシーズ、前に、浜辺で鍛錬していて、たまたま、剣がそれて、浜辺の舟に突っ込んでしまった時、木は切れてたぞ。」
「舟の木が切れたら、人は切れます。
では、紺碧からコバルトブルーになった時は、何かありませんでしたか?」
「剣の色が変わり始めると、殿下の体は、オレンジの光をまとうようになりますね。コバルトブルーの剣は、海を割るんですよ。」
「えっ?ユリシーズ、いま、何と言ったのだ?」
「兄上、殿下がコバルトブルーの剣をひと振りすると、海が割れます。
割れて左右に海水の壁ができます。
で、コバルトブルーから、銀に変わると崖の岩を吹き飛ばすんです。」
「ユリシーズ、お前、殿下の練習になってないではないか?何をやっているのだ?」
「兄上、普通に斬り合いと言うか、騎士団の練習と同じようにしても、殿下の剣は、変則的にしか動かないのです。」
「アラン、ユリシーズの言う通りだ。普通に剣を交えようとしても、何か起きてしまう。
それと、練習では、ダメみたいだ。
軽く剣を交える程度では、軽い手合わせみたいになってしまう。
本気で相手を倒す気でないと、つまり、切り殺してしまうところまで覚悟しないと、剣が剣にならないのだ。」
「真剣勝負で、初めて威力が出る、という事ですな?」
そんなの、毎日は無理だ、誰かが怪我をする。
「たぶん、そうです。」
「殿下、騎士団入団後に、一度、お手合わせ願います。」
「えっ?アランと、ですか?」
「殿下の力を引き出すには、手合わせしないと、騎士の鍛錬方法が決められません。
守護の剣なしでの、基本的な力と、守護の剣をどう活かすか、方針を決めましょう。」
「アランと剣を交えて、生き残る気がしない。」
「殿下、何をおっしゃるのですか?
殿下が、守護の剣で本気になられたら、私もユリシーズも、海の藻屑になりますよ。はっはっはっはっ。
昔、陛下が、敵を倒した安堵から、無頓着に私に獅子の剣を向けてしまって、私は咄嗟に避けましたが、ウリエル家・家宝の剣が、一瞬で消えました。
だから、ユリシーズも、殿下と本気で真剣勝負をしてないのだろう?」
「兄上、殿下の剣は、最強ですから、気を許すと、こちらの命が無くなります。かと言って、守護の剣を使いこなさねば、殿下のお命に関わるので、それもあり、騎士団への入団を決めたわけですから。」
「ユリシーズが、おおよそのところを掴んでいるから、あとは見極めだな。
海洋軍に協力してもらおう。
砲弾を殿下が切り裂けるか、消せるか、もやってみないと。
守護の剣なら、潜水艦くらい、消してしまえるだろうしな。
殿下、ウリエル家の名にかけて、私アランが、殿下の鍛錬を担当いたしますゆえ、ご安心くださいっ。」
「あっありがとう、アラン。よろしく頼む。」
父上と僕は、あまりにも飛躍した話に固まっていた。
そんなに凄いの?守護の剣。
魔王の剣か、海神の剣としか言いようがない。
つまりは、そこまでして、巫女は守らなくてはならない、と言う事を、改めて、理解した。
その時、扉が強く叩かれた。緊急のノックだ。
色々な事が起きていきますが、ヴァシリスは成長中です。
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