第3章 アリエッタの覚醒6
父上が部屋着のまま、陽の宮からでられるなど、前代未聞くらい、急いで下さったのだと、わかった。そのくらい、アリエッタの覚醒は大事な事なんだ。
「パニエール大公とその娘だと?」
父上の片眉が上がっている。
アリエッタはセレステの膝の上で、抱きしめられて、話している。
「パニエール大公の動きが怪しいと思っていたが、まさか、なぜヴァシリスを狙う。」
「兄上の王太子の祝賀会で、アリエッタは大公の部下に拐われて、イライザに僕が刺されるようです。それにイライザは、プレップスクールで、アリエッタを妾と嘲笑ったらしく、アリエッタをミカエラード公爵家の娘と、認識してないのでしょうか。」
「アリエッタがどこの誰かわからぬ事はないはずだ。アリエッタの心を傷つける方法の一つだろう。しかし、パニエールは、親子で王家に逆らうわけか。
アラン、パニエールの最近の動きは?」
アラン親衛隊長と父上が顔を見合わせている。
「陛下、ヴァシリス殿下を狙うとしたら、海洋ヒーラーの力を無くしたいという事では?
シャチ事件は、アリエッタ嬢を狙って、軍港の破壊を狙っていました。
しかし、あの時、ヴァシリス殿下のヒーラーパワーが目立ち、敵は、殿下を直接狙った方が早いと考えたのでは?
今回、ヴァシリス殿下を亡き者にできれば、強大なヒーリングのパワーで、シーシェルの海を守れなくなります。」
「隣国と通じて、攻めてくる気か?」
「陛下から、シーシェルごと、奪う気かも?
これは、パニエールの謀反です。
王子を狙うのは、陛下を狙うのと同じです。
三王子の中でも、海の要であるヴァシリス殿下を抹殺すれば、シーシェルは落ちます。」
「あやつ、、我が息子と我が国を、隣国の餌食にする気か。10年前に殺しておくべきだったな、アラン。」
「御意、私は親衛隊に戻り、隠密で、祝賀会の警護の手配をいたします。」
「祝賀会は、予定通り行う。ユリシーズは、各騎士団から、精鋭をあつめ、隠密行動を取れ。
ミカエラード公爵、アリエッタは必ず守るゆえ、神殿警護隊を、動かしてもらえるか?」
「御意っ、
アラン親衛隊長と協力し、隠密に動きます。」
ミカエラード公爵が、僕の前に来た。
「ヴァシリス殿下、お久しぶりですが、時間がないので失礼いたします。
アリエッタを託します。どうか、、」
「ミカエラード公爵、みなまで言わずとも、痛いほどわかっている。未熟な私であるが、命をかけて、アリエッタを守るゆえ、力を貸してほしい。」
「殿下、アリエッタは幸せです、安心いたしました。では失礼する。」
アラン親衛隊長、ミカエラード公爵、ユリシーズが、急ぎ足で、部屋をあとにした。
父上が、オランにお茶の用意を言い付けていた。
「ここは、アリエッタの寝室だ。
ヴァシリスの書斎に移って、5人で話をまとめよう。」
僕の書斎机の椅子に父上が座っている。
その横の椅子にセレステ。
向かいのソファに僕とアリエッタが座った。
アリエッタの斜め後ろにお茶を入れ終えたオランが座った。
部屋の外には、親衛隊の護衛がいるようだ。
「セレステ、どこまでアリエッタに話した?」
「私が陛下の巫女であり、その娘には、同じ力が宿り、ある日突然、その力が目覚める、という事と、アリエッタが王家の巫女であるゆえ、予知夢を見たと言うところまで。」
「アリエッタ、セレステが話した意味はわかったか?」
「はい。ヴァシリス様が、私の目の前でイライザに刺されて、でも、目が覚めたら、ヴァシリス様がお元気だったので、夢だとわかりましたが、
本当に起きたような感じがしたのです。」
「うむ、怖いか?」
父上は優しく聞いている。
「はい、怖いですが、私が見たことを伝えれば、この国が幸せになると、お母様から聞いて、大事な事だと、わかりました。」
「そうだ。アリエッタの力が、必要なのだ。力を貸してくれるか?」
「はい。今日、ヴァシリス様も、国と民の幸せのために、騎士団や海洋軍に入って、強くなる、と話してくださいました。だから、私も、ヴァシリス様のお嫁さんになるのですから、頑張って強くなりたい、と思っています。」
「アリエッタはヴァシリスを大切に思ってくれて、感謝するぞ。」
「王様、私、頑張ります。
でも、お母様は王様に見たことをお話しするのなら、私は誰にお話しするのですか?」
「アリエッタ、それは、これから、だんだんとわかってきますよ。母とオランと一緒に、巫女になるお勉強を、これから、しますからね。」
「わたくし、王家の巫女になったら、ヴァシリス様のお側にいられなくなるのですか?」
「アリエッタ、そんな心配はしなくて大丈夫だ。其方の母上も、王の巫女だが、公爵と結婚しているだろう?アリエッタが誰の巫女になっても、僕はアリエッタを離さないし、守るから安心してほしい。それに、海洋ヒーラーとして、僕達は一緒に国を守るのだから。」
「あっ、そうでした。ヴァシリス殿下と一緒に、ヒーリングをして、海を救うのですね。
でも、それなら、わたくし、ヴァシリス様の巫女になりたいです。」
父上が苦笑しながら、アリエッタに向いた。
「アリエッタ、其方が、三王子の誰の巫女になるかは、まだわからないが、その日がくるまで、
焦らずに、巫女教育と、妃教育を受けてほしい。
できるかな?
もしヴァシリスの巫女になりたいなら、頑張って神様にお祈りをしてみてはどうかな?」
「はい王様、わたくし、努力いたします。」
アリエッタの目がキラキラしてきた。
思ったより、落ち着いているので、ホッとした。
「では、アリエッタ、明日は王妃の後宮面談を受けてくれるね。」
「はい。精一杯、王妃様に、ヴァシリス様をお慕いしていることを、お伝えしてまいります。」
「うむ。アリエッタ、王は嬉しいぞ。
我が息子、ヴァシリスは、何年も前から、アリエッタを妃にしたいと、真剣に私に頼んできた。
父の私が見ていても、王としてみても、ヴァシリスの其方への愛は信じるに値する。
其方ら二人は、まだ未成年だ。アリエッタが成人するまで、まだ13年ある。長い道のりの間に、離れ離れになる事もあるだろう、心ない噂に傷つく事もあるやもしれぬ。だが、其方ら二人の出会いは、互いの信頼の絆を深め、愛を成就させ、
国を幸せに導いてくれると信じている。
これからの13年を、互いの愛を温めながら、大切に生きてほしいのだ。
アリエッタ、私の愛する大切な息子・ヴァシリスを、愛し続けてくれるだろうか。」
アリエッタの目から、涙がポロポロと落ちている。アリエッタが父上の前に、淑女の礼をした。
「王様、わたくし、王家の巫女の名にかけて、ヴァシリス様を愛し抜くと、お約束いたします。」
「アリエッタ、嬉しいぞ。
しかしな、その約束は、ヴァシリスにもしてやってくれ。二人っきりの時になっ」
アリエッタが、一瞬、僕をみた。また顔が真っ赤になってきた。
「よし、では、私は宮に戻る。セレステは、どうする?」
「陛下のお供をいたします。
アリエッタ、あなたが見たご神託は、王太子祝賀会に起きる事です。母は、陛下の巫女として、対処をせねばなりません。
オランがいますから、ヴァシリス様のお側で、頑張れますね?」
「はい、お母様。」
「明日は、王妃様の面談です。それが終わったら、またお話ししましょう。」
セレステは、アリエッタを何度も何度も抱きしめて、僕に言った。
「殿下、アリエッタをお願いいたします。」
「お任せください。」
「ヴァシリス、明日、アリエッタの面談の時、書斎にまいれ。」
「はっ!」
父上がオランに何か言い、セレステを連れて親衛隊に囲まれて宮に戻られた。
僕も早く、父上のように強く勇敢になりたい。
これからのアリエッタの道が変わっていきます。
読んでいただき、ありがとうございます。




