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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第3章 王子と王子妃と次代巫女
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第3章 アリエッタの覚醒4

僕は、昨夜、一睡も出来なかった。

昨日は、ユリシーズ達と、アリエッタを守る話をして、引き続いて、父上とも、同じ話をして、心は荒んでいきそうだった。

それでも、いや、それだからこそ、今日は真剣にアリエッタに話をしなくてはならない。


時間通りに、オランを伴って、アリエッタが僕の執務室に来た。

ユリシーズが扉を締めて、その前に仁王立ちになる。


「ヴァシリス兄様、ごきげんよう。」

「うむ、アリエッタも元気そうだ。」

「お部屋がお隣なのに、ずっとお顔を見ることができなくて、、心配しておりました。」


少しうつむき加減に、頬を桜色に染めている。

今日のアリエッタの表情は、初めてみる気がした。


確かに、部屋が続きにあるのに、ゆっくり、顔をみていない。寂しい思いをしていたはずだ。

僕だって寂しかった。朝から夜まで、グダグダな話に、来月の準備に。


しかし、今日は、アリエッタに大切な話がある。

もうすぐ5歳になるアリエッタは、愛くるしい幼女から美少女へと変化している最中だ。


「アリエッタ、私は来週から、第三近衛騎士団に入団し、騎士見習いになる。騎士の称号を得るまで、寮生活になる。

同時に、王立海洋軍の特殊任務ヒーラー部隊の参加が義務づけられた。」


アリエッタの目が見開かれ、濃い緑の瞳が、少し曇ってきた。


「ヴァシリスさま。それは、、危険なところばかりではありませんか。王子が、騎士見習いや軍事参加って、そんな。」


予想はしていたが、目が潤み始めている。


「アリエッタ、よく聞いてくれ。

王子と言う立場は、国と民を守り、良くして行くと言う義務があるのだ。

先日のシャチ事件の時、其方とヒーリングをした事で、大津波を防ぐことができた。

それでも、私はそなたを救う術が最初はわからずに、共に死を覚悟した。

其方を安心して守るためには、もっともっと研鑽せねばならぬのだ。」


「でも、あの時、助けて下さったのは、ヴァシリスにいさまです。おにいさまが、危険な目にあわれるのは、いやっ、、、」


ああ、涙がこぼれてしまった。また泣かせている。

「アリエッタ、私たちの未来のために、強くならねばならない。」


アリエッタは、口をまっすぐに結んで、手を握りしめて下を向いてしまった。


「僕が努力している間、君も努力してくれないだろうか?」


「離れ離れの寂しさを堪える努力ですか?」

アリエッタにしては、ストレートな物言いだ。


「それはお互いさまだ。寂しさを抱えるのは僕だって同じだ。」


アリエッタが、びっくりしたような顔をする。

「寂しいのは私だけではないのですか?」


「当たり前だろう。本当は勉強や訓練をすっ飛ばして、アリエッタと一緒にいたいけれど、そう言うわけにはいかないのだ。

アリエッタには、

王立アカデミーの講義内容を前倒しで勉強してほしい。それから、海洋生物研究所の保護院で、保護された生き物のヒーリングを手伝ってくれないか。

最後に、、、これは、絶対にクリアしてほしい事だが、王宮のお妃教育を受ける事。」


「ええっ?」


僕は席を立って、アリエッタの横に座った。

「アリエッタ、明日、母上の、王妃様の面談がある。僕の妃候補に、君だけを望んだ。まだ内々定なので、極秘事項だが、私との婚約が進められている。ミカエラード家にも、話は通した。」


「そんな、、あの、ヴァシリスさま。。私でよろしいのでしょうか。」


「アリエッタ、君でなければ嫌だ。他はいらない。ずっとこの5年、共に過ごしてきた。

僕は、君以外を望むつもりはないし、君以外を押し付けられても、受けいれる気はない。」


「あ、の、。」


「迷っているのか?」

首を横に振っている。迷ってはいないのか。少しホッとする。


「アリエッタ、僕の妃になりたくないなら、先に言ってほしい。」

首を横に振っている。なってくれるはずだ。


「とりあえず、必要な話をしておく。

兄上お二人の婚約も整っている。

兄上たちの妃候補もそなたも、妃教育の結果を王宮の内務部で検討し、合格してからの正式な婚約発表になる。

そなたはミカエラード公爵家の姫と言う身分も申し分なく、それが問題になることはない。

ただ、妃教育は、泣こうが喚こうが、すべきことをクリアしないと、先がないのだ。

真剣に取り組まねば、2年や3年くらいは軽くかかるぞ。

それから、もし婚約が整った後に、、万が一、そなたに想い人ができた場合、僕のことが大嫌いになった場合は、婚約の解消はできるから、安心してよい。

もちろん、私から婚約破棄する事はない。

これらの事を理解して、受け入れてくれるだろうか?」


「にいさま、、、ほかに思い人が後から出ることはありません。」


「ならば、何が、その、君の気持ちを暗くしているのだ。」


「自信がないのです。いま、私の周りには、プレップスクールでも、ヴァシリス様のお妃になりたいと言う人がたくさんいて、私なんて」


「アリエッタ、私の話を聞いていたか?

今、僕は、君以外を望むつもりはないし、君以外を押し付けられても、受けいれる気はない。と言ったはずだが、疑っているのか。

貴族なら、王子と結婚したい御令嬢はたくさんいるだろう。だから、何なのだ。僕はアリエッタが良いと、父上にも母上にもお願いしてきた。

なのに、君は周りを優先するのか?」


「ごめんなさい。」


「アリエッタ、これは求婚ではなく、そこにたどり着くための必須の勉強の話だ。

私もそなたも、必要な課題を全てクリアできたら、正式に私から、必ず求婚する。だから、王宮の皆から認められるように、努力をしてほしい。」


アリエッタの深い緑色の目から、また真珠の粒のような涙がポロポロ落ちている。


「もし、もし、クリア出来なかったら、私たちはどうなるのですか?」


「クリアできないと思うのか?」


「自信がないのです。」


「アリエッタ、本気でそれを聞いているのか?」


消えいるような声で、「はい、、」と答える。


僕は、溜息をついて口を開いた。


「アリエッタが妃教育に不合格になったら、

そうなったら、、、、、

私は、王家のために、好きでもない女を娶り、

王家の次に高い地位の公爵家の姫である其方も必ず政略結婚になる。好きでもない男に嫁ぎ、私の側近になる。

世の中には女人好きの男もいるが、わたしは妻以外の女に興味はもたぬ。それがどんな地獄になるか、わかっているのか?」


アリエッタが気を失いかけているのがわかる。

オランがさすがに止めようとしたが、ユリシーズがオランを制した。


「アリエッタ、しっかりせよ。

現実を見てほしい。

もう、人魚の王子さまを夢見る時は過ぎだ。

あの時でさえ、私は約束したではないか。

そなたが成人してレディになったら、花嫁衣裳を贈る、と。」


「ちゃんと覚えています。」


「アリエッタ、この話を、受けたいのか、受けたくないのか、本心を聞かせてほしい。」


「お受けしたいです。でも、、」


「わかった。でも、の先は聞く気はない。

その気持ちだけ、大切にしてほしい。周りに何か言われているのであろうが、

もう一度言う。周りの差し出口と、僕の気持ちと、どちらを優先するのだ。」


「ヴァシリス様です。」


「ありがとう、アリエッタ。

今はまだ、そなたの年齢でわからない事もあるだろし、僕だってわからない事だらけだ。

ただ、万が一、結婚せずに離れ離れになったら、

年頃になるにつれて、お互いに苦しみが増えるだけだ。

その意味も、妃教育を受ければわかる。

まずは、明日、王妃様に謁見してきてほしい。

それから、また2人で話そう。」


「はい。ヴァシリスさま。」


「アリエッタは、秀才だから、学問と海洋研究所のヒーリングに関しては、楽しくやれるはずだ。

力を入れ努力するのは、妃教育だけだ。

アリエッタ、私がそなたのこの手を取り続けられるように、努力すると約束してくれ。」


「ヴァシリスさま。私の手を離さないでくださいますか」


「アリエッタ、悲しそうな顔で聞くな。

僕が、其方の手を離した事があるか?」


「ない、です、、、」


「そうだろう?私からは、絶対に離さない。誰が何をして離そうとしても、離さない。だが、そなたの努力不足で、私たちの糸が断ち切られたら、2度と手を取る事はできなくなる。それはわかってくれるな。」


「はい。わたくしも、、離しません。」


「オラン、くれぐれもアリエッタを頼む。」


「坊っちゃま、お任せくださいませ。」 


今ここで、連れ去りたい。



二人の気持ち、です。

読んでいただきありがとうございます。

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