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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者:
第3章 王子と王子妃と次代巫女
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第3章 アリエッタの覚醒2

ユリシーズが、素早く、針子を受け止めた。

僕はほっとした。

「ユリシーズ、助かる。」


オランが「隣のお部屋で休息を」と、侍女に指示している。ユリシーズが侍女たちに倒れたお針子を渡して、また私の後ろに控えてくれた。


仕立て屋が、オロオロして誤り倒している。

「構わぬ、気にするな。体調を気遣ってやれ。」


「殿下、有難きお言葉。」

残りの針子に早くせよと、急かしている。

ユリシーズを見ると、馬鹿笑い寸前の顔で、拳を握りしめて、俯き加減になっていた。

何か今日は変だ。もしかして、さっき厩舎にいたから、僕は馬臭かったのか?しまった。王子が臭いのはまずいな。


その時、サロンの扉がパンっと音を立てて開いて、アリエッタが乱入してきた。


「ヴァシリスにいさま、こちらにいらっしゃると聞いて。ワタクシ、プレップスクールのワルツのレッスンで、、、」


アリエッタだ。僕はいつものようにアリエッタに笑いかけた。


乱入しながら、アリエッタが固まった。

「ヴァっ、ヴァっ、ヴァシ、リス、おっ、おっ、おにい、さ、ま」


アリエッタの顔が真っ赤だ。耳も赤い。

体が震えている。


「アリエッタ、お帰り。部屋に入るときはノックをしないとダメだろう?

これが終わったら、話があるから、もう少し待っていてくれるか。」


アリエッタが、俯いたまま、口を聞かない。


「アリエッタ?」


「あ、あの、し、し、失礼いたしましたっ」とサロンを飛び出して行った。


オランが笑いながら言った

「坊っちゃま、姫さまのお着替えをして、仮縫いが終わられたら、書斎にお連れしますね。」


「オラン、アリエッタの顔が赤かった。熱があるかもしれないから、気をつけてやってもらえるか。」

オランは頷いて、サロンを出た。


仕立て屋が、

「殿下、騎士服はこれで終了ですが、もう一着だけ海洋軍の士官服の仮縫いがございますが、続けてよろしいでしょうか。」


「そう言えば、海洋軍の軍服も、父上に言われていたな。頼む。」


ユリシーズがまた説明してくれる。

「殿下が海洋軍のヒーラー部隊を統括されるにあたり、陛下のご希望で、海洋軍全体の軍服のデザインが一新されました。」


「ひぇっ?全部、一新したのか?父上はやりすぎだ。」  


出された軍服に袖を通しながら、父上を恨みそうになった。父上は、なさる事が派手だ。

真っ白を基調として、ラインや縁取りが全てコバルトブルーで、襟には金の縁取りだ。

金ボタンには、トライデントの紋章がついている。更に白とコバルトブルーで作られた軍帽まで被らされた。


「ユリシーズ、これは恥ずかしいぞ。」


「殿下、海洋軍へ行かれるときは、護衛の私も着なくてはなりませんから、、、近衛騎士団の中で、ヒーラー部隊を兼務する者も、支給されます。」


「そうか、ユリシーズが揃いなら、少しは気が楽だ。」


「でっ殿下、御前を失礼いたします。ボ、ボタンを」と先程と違うお針子が、ボタンを止めようと背伸びをしている。

「よい、首周りは自分で止められるから、」と、

自分の手を出した時に、お針子の手に当たってしまった。

お針子は、一瞬、目を見開いて、崩れ落ちた。


「大丈夫か?」今度は、ユリシーズより、先に僕が片腕で受け止めると、周りにいたお針子が、みんなうずくまって崩れ落ちてしまった。

ユリシーズが、僕から、お針子を受け取って、僕に言った。


「殿下、サロンの気温が高く、みな熱に当たったのかもしれません。殿下のお体も心配ですので、先に私室にお戻りください。軍服は、お部屋で着替えてください。後で、仕立て屋に渡します。」


「そうか、わかった。

主人、サロンが暑くて申し訳ないことをした。針子に無理をさせぬように。よろしく頼む。」


「ご配慮、ありがたく。」

跪いた仕立て屋に頷いて、僕はサロンを出て、ユリシーズと私室に戻った。

僕のクローゼットがある私室謙寝室に戻った瞬間、ユリシーズが「ぶはっ!」と笑い出した。


「ユリシーズどうしたのだ?」


「坊っちゃまも、人が悪い。」


「何だ、部屋が暑かったのだろう?それか、僕が厩舎に行ってたから、馬臭かったのか?

それか、それか、集団の病気ではないのか?笑ってる場合ではないぞ、なあ、ユリシーズ!」 


ユリシーズが、もう耐えられないという顔で笑い飛ばしている。

「もう無理だ、坊っちゃま、無理ですよっ。」


「だから、何があった?」


「ちょっとお待ちください。」と寝室を出て行って、僕の侍女頭のマリアを連れて戻ってきた。


「さあ、殿下にほんとの事を報告してくれ。」


「坊っちゃま。若いお針子たちは、坊っちゃまの麗しさの熱気に当たって、失神したのでございます。私は夫もおりますし、坊っちゃまと同じ年齢の子もおりますので、その、坊っちゃまに懸想はしませんが、お年頃が近い侍女やお針子たちは、恋がれる熱に当たってしまったかと。」


「はあぁ?なんだ、それ。」


「カッコ良すぎるという事です。8歳にして、お針子を失神させるくらい、坊っちゃまの魅力が、まあ、キラキラと女心を引き付けでいるのですよ。」とユリシーズが、泣きそうに笑っている。


「僕のどこがカッコイイんだ?みんな今日はおかしいぞ。僕は、そんな破廉恥な事はしていないし、女子を引きつけるなど、そんな必要はないではないか。

わかった、アリエッタに聞いてくる。アリエッタなら、いつもの僕だと、わかるだろう。」


ユリシーズとマリアが止めるのも聞かずに、僕は軍服のまま、アリエッタの部屋に行った。


「アリエッタ、入るぞ。」


「坊っちゃま、どうぞ」オランの返事があった。

部屋に入ると、

アリエッタは、寝台の上で、ぼうっとした表情で、ちょこんと座っていたが、僕を見て、また目を見開いて、口に手をあてた。


「アリエッタ、大丈夫か。体調は大丈夫か?」


アリエッタは、コクンとうなずいたが、口に手を当てるのは、やっぱり臭いのか?


「では、アリエッタ、ちょっと意見を聞きたい。

僕の格好は、おかしいのか?

馬臭いのか?」


アリエッタの目が、丸々と見開かれて、涙目になってきた。

そんなにひどいのか?アリエッタがこんな表情をするなんて、初めてだ。いつだって、僕をまっすぐみて笑っていてくれたのに。


「アリエッタ、僕は、そんなに」とアリエッタに歩み寄ると、アリエッタは寝台の上に立ち上がって後退りした。


「お、お、お、おに、い、さま。わたくし、あの、だめです。わたくし、、」


言葉が出ないほど、ひどい?頼む、逃げるな。

アリエッタは、どんどん後退りする。

寝台の反対側に落ちるだろ。


「アリエッタ危ないっ」

僕はアリエッタが寝台の縁から足を踏み外し下に落ちる寸前に、寝台に飛び乗って、アリエッタを抱き止めた。


「何をしている。危ないじゃないか。」


目をウルウルさせたアリエッタが、首から顔まで真っ赤にして、僕の胸に顔を埋めてしまった。


「あらあら、姫さま」

オランとマリアもユリシーズも、笑っている。


ユリシーズが口を開いた。

「ひとまず、坊っちゃまは、その軍服を脱いで、普通の服に着替えてください。

仕立て屋を帰したいので。」


「わかったユリシーズ。それからアリエッタ、大丈夫か?

アリエッタ、すまない。見苦しく臭い格好を見せてすまなかった。見たくないほど、似合わないんだな。すまない。いつもの服に着替えてくるから。安心してくれ。」


「あ、あの、ヴァシリスにいさま。」

アリエッタが僕の胸あたりの服をぎゅっと掴んでいる。


「ん?」


「あの、と、とても素敵です。先程の騎士服も、今の軍服も。言葉が出なくて、ごめんなさい。とても、とても素敵です。」アリエッタが顔を赤らめて、俯いてしまった。素敵だと?


今度は僕が、赤くなった。


ユリシーズとオランに、アリエッタと引き剥がされて、自室に引きずられて戻った。

ユリシーズとマリアに、軍服を脱がされ、軍服は仕立て屋の手にもどり、無事?に、仮縫いは終わった。


ヴァシリスは、自分の魅力に気がつかないのですね。

読んでいただき、ありがとうございます。

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