第3章 王子たちの道
父上から、王子全員が、揃って呼ばれた。
兄弟とは言え、様々な王子教育が忙しくて、なかなか会える時間は少ない。
父上の側近から、父上が少し遅れる事を聞いて、
僕たちは、お茶を飲みながら、3人で近況報告をしていた、
「ヴァシリスは特に久しぶりだな。
パトリックとは、プレップスクールで顔を合わせるけど、ヴァシリス、デカくなってない?」
「ラングドン兄上、お久しぶりです。東宮の外に出る事が増えてきて。プレップスクールにも、なかなか顔を出せなくて。サボり魔って言われてたら、どうしようかと。」
「ヴァシリス、心配するな。お前の大活躍は、プレップスクールでも、話題の的になってるよ。」
「パトリック兄上、それは恥ずかしいですよ。あの時、死ぬかと思ってましたから。
パトリック兄上も、森林エリアのヒーリングを始めたと聞いたのですが。」
「そうなんだよ、なかなか上手くできなくて、熊や鹿に馬鹿にされているような状態だよ。」
「パトリックとヴァシリスは、外に出られて羨ましいよ。僕は王宮に缶詰だ。」
「だってラングドン兄上は、僕たちと違って、
王位を継ぐのだから、帝王学が山のようにあるのだろう?」
「代わってほしいよ、、、」
「ラングドン兄上、兄上の役に立てるように、パトリック兄上と僕は、外で扱かれまくってるんだし、父上の跡継ぎは、ラングドン兄上のように、全てに優秀な力がないと、僕みたいに海だけ、じゃ務まらないよ。」
「僕だって、ヴァシリスと似ている。森や山中でしか、力を出せないわけだから」
「パトリック、ヴァシリス、ありがとう。お前たちがいると、心強いよ。」
「遅くなったな、おっ、シーシェル王国の麗しい三王子がお揃いだなっ!」
父上が書斎に戻ってきた。
僕たちは、はにかみながら、立ち上がり、礼をした。
「「「父上、参りました」」」
「さあ、座ってくれ。
今日は親子水入らずの、親子会議だ。」
完全に人払いをした。
でも僕は知っている。父上の椅子の後ろの隠し部屋には、父上の巫女・セレステがいる。
父上が口を開いた。
「我が息子である3人の王子は、生まれながらにして
《超特級ヒーラー》の力を持つ。
ラングドンは来月13歳だな、
パトリックは年末に11歳だな。
ヴァシリスは来週に8歳か。」
3人とも頷いた。
「ラングドンとパトリックも知っていると思うが、
先日、隣国から毒されたシャチの大群を送りこまれた。ヴァシリスが超特級ヒーラーの力を初めて発揮し、事なきを得た。
ラングドンとパトリックも、すでにヒーラーとしての力を目覚めさせているので、それぞれに国政に就く準備はしてきたが、
一番下のヴァシリスが、海洋生物ヒーラーとして目覚め、3人が動く事を前提として、国務に着く準備を更に進め、実行に移していきたい。
ラングドンは、再来月の9月からアカデミーに入学だ。入学前にラングドンの王位継承権を確固たるものにしたいので王太子に任じたい。
パトリックも、再来年にアカデミーに入学予定だが、これについては、手前倒しで、来年にアカデミーに入ってほしいのだ。
なので、お前たち3人が王宮に揃っている間に、それぞれの道について、決められる事は決めて、希望を聞いておきたいと思ってな。
将来のことを含めているので、お妃候補も考えなくてはならない。」
「まずはラングドン、王太子になり、アカデミーに入学しなさい。卒業後は、結婚し、王太子妃と共に、私と王妃のサポートをしてほしい。」
「父上、私を王太子にして、よろしいのですか?」
「当たり前だろう。そなたは全てにバランスが取れている。パトリックは山から出てこぬし、ヴァシリスは海に入り浸りだ。」
「「父上っ」」
パトリック兄上と僕は野生児のような言われようだ。
「ラングドン、良いな。シーシェル王国の次期王は、そなただ。期待している。
王太子の立場でアカデミーで学び、将来の側近を選べ。」
「はいっ、謹んでお受けいたします。」
「「ラングドン兄上、おめでとうございます。」」
パトリック兄上と僕は、ラングドン兄上に跪いた。
「ありがとう、パトリック、ヴァシリス」
「うむ。
次はパトリックだ。山から出てこぬ其方は、もちろん森林保護・超特級ヒーラーだ。
ラングドンを助けて、王国の土地と民を守ることに尽力してほしい。
そのために、アカデミーの入学を一年早めてほしい。」
「父上、森林、農地、陸はお任せください。
しかし、アカデミー入学を早める理由は何でしょうか。」
「ラングドンと重なる期間を多くとりたい。2人は、2歳違いで歳がちかい。
アカデミーで、できるだけ協力体制をとり、パトリックは、ラングドンを手助けするには何が必要か、
ラングドンもパトリックにどう動いて欲しいか、側近を巻き込みながら活動すれば、卒業後、すぐに国政につける、と言う事だ。
側近を、アカデミー在学の、できれば伯爵以上の子息や子女の中から、選んでほしいのだ。」
「父上、よく理解しました。ではラングドン兄上の一年後の入学を目指して、いま取り掛かっている勉強やヒーラー能力の活性化などを、入学までに頑張ります。」
「うむ。
で、ヴァシリスだが、
年齢的には2年ほど早いのだが、体力的にも体格的にも準備ができたので、来月から近衛騎士団に入団せよ。
更に、海洋軍のヒーラー特殊部隊を発足するので、海洋軍にも在籍し、騎士団と海洋軍を兼務し、訓練を怠らぬように。」
「父上、お待ちください。」
「何だ、ラングドン。」
「父上、お言葉ですが、ヴァシリスは王子です。
近衛騎士団に護衛される立場です。近衛騎士団は、王家のために命をかけます。ヴァシリスにそれをさせるなど。
ましてや海洋軍の部隊に入れば、前線に出すことになるのですよ。」
「父上、ヴァシリスは王子です、僕たちの弟です。なぜ、ヴァシリスだけ、命に関わるような」
「ほう、ラングドンもパトリックも、よく理解しているではないか。
だが、ちょっと待て。話は最後まで聞くものだ。
ヴァシリスは、海洋生物超特級ヒーラーだ。
今まで、王家から、海洋生物ヒーラーは出なかった。我が国は周りを囲まれた島国だ。
どうしたって、海を守らなくてはならない。
我が王立海洋軍も、近隣諸国と比べて、負け知らずと言われるくらい強い。
だが、軍を出すたびに、兵の命が奪われ、負傷するのは当たり前の事とされてきた。
シャチ事件の時、潜水艦と駆逐艦を出すつもりだった。魚雷も大砲も使うのが当たり前だった。魚雷を使えば海の豊かな生き物は死に環境を破壊することになる。
だが、ヴァシリスと、ミカエラード公爵家のアリエッタの2人で、死傷者をださず、環境を破壊することなく、鎮圧された。
海洋ヒーラーは、活躍の場が海だ。常に前線にいるしかない。
だからこそ、ヴァシリスが生き延びられるよう、騎士団で鍛錬し、海洋軍を率いる実力を持たねばならないのだ。
海洋ヒーラーに生まれた宿命だ。」
ラングドン兄上とパトリック兄上が青ざめている。
「兄上、心配してくださり、嬉しいです。
でも、王子である以上、どこで何をしていても、狙われるときは、狙われます。毒だって盛られる。側近に裏切りが無いとは言えない。
僕より、王になるラングドン兄上の方が危険です。
せっかく3人の兄弟なのだから、
それぞれの能力をしっかり使って、王国を守って行きたいと思うのです。
ラングドン兄上には父上の後継者と言うことで、兄上なりの苦しみや人間関係の苦労があるだろうし、パトリック兄上だって、今はひとりぼっちで山の中にこもって奮闘してる。
僕は、それがたまたま、海だっただけです。
と思っていますが、、」
「ヴァシリス、お前、いつからそんなに大人になったんだ。」
「ヴァシリス、山の中も海も、超特級ヒーラーにとっては、ある意味、本拠地だからな。
そこまで考えているなら、応援する。」
「兄上、ありがとう」
「ようし、では、進路については、3人とも、納得したな。」
「「「はいっ、父上っ」」」
王子たちの未来の道標がみえてきました。




