第3章 王子たちの妃候補1
「お前たち、よく成長してくれて嬉しいぞ。
三人三様、得意な分野で、力を発揮してくれ。
それと、パトリックは、一年早めにアカデミー入学だが、ヴァシリスは13歳でよい。
アカデミー入学までの5年のあいだに、近衛騎士団の騎士の称号を勝ち取ってほしい。
決して楽では無いだろう。だが同じ苦労をするならば、騎士になれ。
私が、お前を騎士に任命したいのだ。」
「父上、とにかく鍛錬します。」
「よし、では、次は妃候補についてだが、
意中の人はいないか?私は政略結婚を無理強いしたくないのだが、、、」
ラングドン兄上とパトリック兄上がニヤニヤしている。ラングドン兄上が口を開く。
「父上。ヴァシリスは決まっているのでしょう?」
「うぐっ、、あ、あにうえ」
「ヴァシリスには、ご執心の姫がいると、プレップスクールで、もっぱらの噂ですよ。」
「そうだよ、僕たち兄を差し置いて、まだちびっこのうちから、どこぞの姫を溺愛してるって、プレップスクールで聞いたぞ。」
「ちょ、ちょっと、兄上、、」
ご執心、溺愛、何という恥ずかしい言葉だ。
僕は顔に熱がのぼり、真っ赤になっているのがわかった。
「はっはっはっはー!ラングドンもパトリックも良く知っているな。」
「いやあ、父上、プレップスクールの最近の噂は、ヴァシリスとアリエッタの幼き純愛物語で、勉強どころじゃないですよ。なあ、パトリック。」
「そうだよ。シャチ事件のヒーリングの話って、子供はあんまり興味ないんだ。だけど、海に飛び込んだアリエッタをさ、ヴァシリスが、自分の剣を護衛から受けとり、アリエッタの名を呼びながら、海に飛び込んだとか、さっ」
えっ?海に飛び込む時は、黙っていたぞ。
「パトリック、もっと聞かせろ。」
父上、何言ってんだ?
「女の子たちは、『僕の剣を』と言われて助けてもらいた〜いって黄色い声出しまくってるよ。5、6歳くらいの男子で、僕の剣ごっこが流行っている。」
だって、『僕の剣』は、必要だろう?
「アリエッタを助けて岸に戻った時、ヴァシリスも気を失っていたのに、アリエッタを抱きかかえたまま、絶対に離さなくて、騎士達が困ったとか、
ヴァシリスの意識が戻って、アリエッタを護衛騎士に渡す時に彼女の額に口づけをしたとか、
その姿に、近衛騎士団が跪き、剣の礼をしたとか、お前、騎士物語の主人公みたいに騒がれてるぞ。」
「そうだよ。プレップスクールに行くたびに、まわりのご令嬢たちから、『弟君は今日はいらっしゃらないのかしら』と質問攻めに合うし、
プレゼントしたいから、渡してくれとか、、俺たちは、お前の側近かっ」
兄上、もうやめてください、たのむから、、
「アリエッタの誕生日に、ヴァシリスの白馬に騎乗で2人乗りして、海までデートしたとか、なあ、『ヴァシリスさまあ、私もお供したいわあ〜っ』とかさ。白馬に乗った王子様そのものじゃんっ。」
兄上たちの愛馬も、白馬だろ?
見つけやすいように、王子はみんな白馬なんだよっ!
僕は半泣きになっていた。そんなに恥ずかしい事をしたのだろうか。
父上が、腹を抱えて笑っている。
僕は涙目になりながら、抗議した。
「兄上、僕は、僕は、、うぅぅっ〜」
「ラングドンもパトリックも、その辺にしてやれ。ヴァシリスが泣いてるぞ。
まあな、私も指揮本部から見ていたから、そのままを知っているが、見ていた騎士達からすれば、憧れの王道の騎士物語だった。
ああゆう行動は、騎士が騎士道精神で動くから、カッコイイわけだ。それを王子がやったら、どうなる?
あの日、王妃に、ヴァシリスの話をしたら、
『わたくしもヴァシリスのような殿方に出会いたかったわ』と言っていたぞ。」
「母上にまで、バラしたのですか?」
「其方らの母は、社交界のど真ん中にいる王妃だぞ。知らなかったでは、済まされない。
王妃は、ヴァシリスがしたことを正しく広めているから、心配するな。」
「父上は、僕を母上に売ったのですね?
僕だって、近衛隊副隊長のユリシーズに3歳からしごかれて、あの時は命がけだったのですよっ!」
「くっくっくっく、ヴァシリス許せ、親が子供の活躍を語り合うのに、問題はないだろう。
お前が命がけだったのは、わかっている。
王命で、行け!と言ったのは、私なのだから。」
「父上の命令だったのですか?」
「パトリック、何を驚いている。
アリエッタを助けに行きたいヴァシリスは、
護衛騎士3人に引き留められていた。
それこそ物語のように、勝手な行動はできない。私は軍を出すつもりだったからな。
だが、アリエッタを助けられるのはヴァシリスしかいないと思った私が、軍を止めて、ヴァシリスに行け、と言ったのだ。」
「父上が、ヴァシリスに命じたのでしたか?
ヴァシリスが命をかける命令を。」
「そうだ、ラングドン。私は公の場では、親である前に国王だ。ヴァシリスにアリエッタの後を追うように命じた時、周りは、7歳の子を海に落とす非道な王、という非難の視線があった。
私はヴァシリスを信じていたから行かせたけれど。
だから、鎮圧しアリエッタを助け戻ったヴァシリスに、騎士達が礼を尽くしたのだ。」
「そうだったのですね。王命ですか、、
父上、私はいつか、パトリックとヴァシリスに命をかけなくてはならぬような王命を出さなくてはならないのですね。」
「そうだ、ラングドン。パトリックとヴァシリスだけではない。そなたが口をひらけば、常に王命になる。臣下は逆らえない。
パトリックとヴァシリスも同じだぞ。ラングドンには命令できないが、お前たちが臣下に命ずることは、命に関わる。3人とも肝に命じておけ。」
「「「はいっ!!!」」」
「ヴァシリスの噂のせいか、最近、騎士団の入団希望者が増えたと親衛隊長が言ってた。騎士団は狭き門だからな。
その日のうちに、海洋軍大将から、ヴァシリスを海洋軍に欲しいと打診があったし。
不思議でならないのは、この話が、7歳のヴァシリスと4歳のアリエッタの話なのに、
成人する18歳くらいの恋物語になってるから、プレップスクールで流行るのは仕方あるまい。社交界でも、飛び交っているからな。」
「僕は、2度とプレップスクールには行かない。」
「まあ、ヴァシリス、拗ねるな。やらかした事は仕方ないからな。」
「父上っ、やらかしたって、何か間違えましたか?」
「いや、間違ってない、、強いて言えば、そなたがまだ7歳だからな、まあアリエッタにご執心?なのは、事実だし、側近全員がわかっているのだから、このまま突き進め!」
「父上っ!もういいです。わかりましたよ。
この際ですから、僕の妃候補は、アリエッタだけにしてください。できるなら、さっさと婚約もさせてください。
そしたら、もう誰も僕に興味はなくなりますから。そうですよっ!僕はアリエッタにご執心ですよ。でっ、でっ溺愛してますから、早く婚約させてください。婚約を進めてないのは父上の責任ですからねっ」
「ヴァシリス、偉いぞ、さすが僕の弟だっ。」
「ヴァシリス、ぼくも兄として鼻が高いぞっ。」
「兄上たちのお妃が決まったら、絶対に揶揄ってやるぅっ。」
なんでこんな話になるんだ。
「では、ヴァシリスは、アリエッタと言う事で。
ヴァシリス、婚約は急ぎたいのか?騎士の称号を受けるまで待つのはどうだ?」
「父上、騎士の称号が簡単に取れるとは思えません。もちろん死にものぐるいで鍛錬はしますが、騎士寮に入ってしまうので、婚約だけは早くしたいのです。
プロポーズは、騎士の称号を得たら、します。」
「「ヒューヒュー」」
「兄上っ!もう僕の事はいいですから、
ラングドン兄上もパトリック兄上も、意中の方はないのですか?」
頑張って書いています。読んでいただきありがとうございます。




