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第二章 追憶 シャチ事件3 ヴァシリス視点


「アリエッタ!アリエッタ!しっかりしろ。死んではダメだ!アリエッタ!勝手に死んではダメだ!」

僕は、叫びに叫んだ。

アリエッタの意識がない。


僕はまだ7歳だ。全てに対処できる力なんてない。

だけど、アリエッタを守らなくては。

「死ぬな、アリエッタ」と思い切りぎゅうっと抱きしめた。


「神様、僕からアリエッタを取り上げないで、お願いですから、取り上げないで下さい。」

海の底で、思い切り叫んだ!


『ヴァシリスよ、ヴァシリスよ。』

誰かの声が聞こえた。

『海神 ポセイダルゴである。』


神さま、アリエッタを取り上げないでください。

『生涯をかけて守れるのか』


誓います。

神にかけて誓います。僕のアリエッタは、僕の命です。だから、僕に力をかしてください。お願いします。


『其方は、すでに力を持っておるぞ。』

えっ?でも、オレンジの光は、これ以上増えないし、出せない。


『祈れ、未来への希望を思い出せ。

アリエッタを愛し、国を愛し、其方の人生をかけて守る覚悟をせよ。

さすれば、パワーは無限に溢れるであろう』


僕は思いつく限り、ポセイダルゴ様に祈った。

「神様、アリエッタを救ってください。

お願いします。

生命を愛するアリエッタを、僕は生涯をかけて大切にします。

アリエッタの命は僕の命、

僕たちの命は国の命、

皆の命のためなら、僕の命は、いつでも差し出します。この国を守りたいのです。

どんな命も、アリエッタが愛する命を守りたい。」


初めて会ったアリエッタを思い出す、

この5年近く、兄妹のようにすごしてきた。

言われなくても大切だった。

あと何年過ぎても、アリエッタ以上に大切な人は、現れないだろう。子供心に、そう思った。


「アリエッタ、頼むから生きてくれ。」

最後は懇願だった。

何も起こらない。僕の身体がオレンジ色に光っているだけだ。


何が必要なのか?僕を差し出せば良いのか。

僕は死ぬのは怖くない、でも僕が命を落とせば、アリエッタも消えてしまう。

僕はアリエッタを守りたいのに。


その時、父上の王命を思い出した、

『己の巫女を守れぬなら、自らの手で消せ』と言われた。あの時、父上は、2回『王命である』と言った。何がなんでも守りぬけと言われた。

消す事も、守ることだと父上から厳しく言われた。

僕が死んでも、兄上たちがいる。

国はきっと大丈夫だ。

もしアリエッタだけ失ったら、僕だけ生き残る。

アリエッタを失って生きる意味があるのか?

何の力も出てこない。何が超特級ヒーラーだ。

アリエッタを癒す事さえできない。


「アリエッタ、、、すまない。

君を幸せにしてやれなかった。」


まだ、花嫁衣装も、あの真珠の首飾りも贈ってないのに。自分の不甲斐なさに絶望感より怒りが込み上げてきた。

僕を見上げる、あの透き通る濃い緑の瞳。


クールとクーポでさえ守れなかったのに、最愛のアリエッタを、未来の巫女と妻を守れるはずがなかった。鍛錬してきたのに。時間を惜しんで学んだのに。力不足だった。

父上は、セレステを守り抜き、僕達家族だけでなく、国の民を守り続けているのに、

子供が子供を守るなんて、僕が馬鹿だったんだ。


僕に生きる資格なんてない。

僕の命が尽きれば、アリエッタは苦しまずにそっと逝ける。

アリエッタを剣で傷つけたくない。

僕は覚悟した。


海の底に横たわるクールとクーポを抱きしめた。「ありがとう。ずっと守ってくれて。」


クーポの横にアリエッタを寝かせた。

そして、僕の未来の花嫁の唇に、そっとふれるように、最初で最後の誓いのキスをした。

涙が溢れて止まらない。


「大切なアリエッタ。力のない僕を許して。

もし許されるならば、来世で君を必ず見つけるから。」


僕は、父上から賜った剣を鞘からぬいた。

そして海の全てに向かって、

ユリシーズから厳しく習ってきた、騎士の剣の礼を尽くした。


「みんな感謝しています。ポセイダルゴ様、ありがとうございました。」


僕は剣をもちかえ、最後に

《剣舞》を、感謝の気持ちを海に捧げた。

剣舞が、終わり、歯を食いしばり、剣を自分の胸に突き立てた。


「うっ」



その瞬間だった。剣が僕の手から離れて飛んだ。

水中でぐるぐると回り始めた。

僕は死ぬ事もできないのか。


そして、銀色に輝く三叉の矛が現れた。


嘘だろ?なんだこれは。

ポセイダルゴ様のトライデントは金色に輝いているし、もっと大きい。その半分くらいしかないけれど、輝きがすごい。


父上から剣を賜った時、トライデントの紋章が浮き出ていた。まさか、これが僕の力になるのか。


矛に手を伸ばすと、それはヒュンと飛んできて、僕の手に収まった。

どうやって使う?

ポセイダルゴ様が嵐を呼ぶ時にトライデントを回していたのを見た事がある。


僕は祈りながら、トライデントを回しはじめた。

「海の神よ、全ての命を守り給え。

僕の力を、僕の全てを捧げます。」

頼む、お願いだ。みんなを助けて。

トライデントを回し続けた。

これ以上回せないところまできた時に、

トライデントから、

オレンジ色の光が、溢れ出した。止まらない。

アリエッタが放ったグリーンの光に重なるように、海の中にオレンジの光が広がっていく。

僕の体からも、どんどん光が広がり出て行く。


海底から、水面を見上げると、シャチがどんどんカラフルな小さな魚に変わっていく。あっという間に小さな群れになって、どこかへ泳いでいった。

でもアリエッタは目を開かない。


目の前で、クールとクーポが、目を開いた。

「ヴァシリス、ありがとう」と言う声を聞いた。


アリエッタだけ、目を覚まさなかった。


僕はトライデントを握りしめて、最後の力を振り絞り、トライデントを回した。

海の中が、一瞬、銀白色に強く輝いて、何ごともなかったように、いつもの海に戻った。


僕は、アリエッタを抱きしめたまま、意識を失った。



読んでいただき、ありがとうございます。

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