第二章 ヴァシリスの追憶 4歳その7
アリエッタが、1歳になりました。
ヴァシリス、歯を食いしばって努力中。
父上から剣を受け継いで、僕の日々は大きく変わった。
アリエッタを託されて1年が経つ。
アリエッタは一歳になった。ぼくは4歳だ
僕の隣の部屋に、アリエッタの部屋ができた。
アリエッタは、ほとんど泣かない赤子であった。
この一年は、良く寝ているか、起きている時は、空間を見つめて小さな緑の光を飛ばしていた。
早く強く賢い男にならねばと、毎日頑張った。
近衛騎士団副隊長のユリシーズが、僕とアリエッタの護衛責任者になり、
僕は頼み込んで、ユリシーズを師と仰ぎ、毎日、勉学の合間に、乗馬と剣と格闘技の稽古をつけてもらっている。
ユリシーズは手加減なんてしなかった。手加減されては、強くなれない。
今日も、朝から騎乗で剣の稽古をし、落馬して、傷だらけで部屋に戻ってきた。
「まあまあ、坊っちゃま、傷だらけではありませんか。」
「済まないオラン、加減を忘れて本気になりすぎてしまった。」
オランがユリシーズをキツく睨む。
ユリシーズが僕の護衛責任者になってから、知ったのだが、オランはユリシーズの妻だった。
乳母と養父みたいで、僕の部屋は、かなり家庭的だ。
「オラン、アリエッタは?」
「姫さまは、よく眠っておいでですよ。
坊っちゃま、姫さまに会うのは、傷の手当てをしてからで、、坊っちゃま!」
今日は何故が、アリエッタにすぐに会いたくなっていた。
傷の手当てを後回しにして、アリエッタの部屋の扉をパン!と開けたら、
アリエッタがベビーベッドから下に落ちようとしていた。いや、よじ登って飛び降りようとしていた。
「アリエッタ!危ない!」
僕は、ベビーベッドにスライディングして、落ちるアリエッタを危機一髪で抱き止めた。
僕のお腹に着地したアリエッタは、キャッキャキャッキャと僕を見て、笑っている。
「アリエッタ危ないじゃないかっ!」
一瞬、怒鳴った。
アリエッタは、深いグリーンの瞳で、じっと僕の目を覗き込み固まった。
しまった、怒鳴りすぎた、泣かせてしまう、と思った瞬間、
僕の顔の傷を見て「ヴァチュチュ」と言い、指の先で傷をなぞった。
瞬間にグリーンの光がキラキラと僕の傷にかかった。
アリエッタは、次々と僕の傷を見つけては、「ヴァチュチュ」と言っては、グリーンのキラキラでなぞっている。
「坊っちゃま、傷の手当てをして、お着替えをしないと、、汚れていますから、、あらまあ」
オランが唖然として、そして叫んだ。
「ユリシーズ!来てください!」
ユリシーズが「何事か」と怒鳴りながら、凄い勢いで飛んできたが、僕たちを見て、唖然としている。
僕は床に転んだまま、アリエッタは僕に馬乗りになり、「ヴァチュチュ」と言いながら、グリーンの光を撒き散らしていた。
オランが僕からアリエッタを引き離そうとしたら、アリエッタが「ヴァチュチュ〜」と泣き出した。滅多に泣かないアリエッタが、僕に指を向けて泣いてる。
「アリエッタが、ベビーベッドから、飛び降りたから、受け止めただけだ。」
「飛び降りたのですか?姫さまが?」
「落ちたのではなく、自分で柵をよじ登って、
上から飛んだのを見たんだ。」
アリエッタの泣き声がうるさくて、オランと僕の会話が途切れる。
「オラン、アリエッタを僕に渡してくれないか、少しの時間でいいから。」ときちんと頼んだ。
僕は起き上がり、ソファーに座り直して、アリエッタを受け取ると、泣き止んだ。
「オラン、ユリシーズ、アリエッタはどこも打ってないはずだよ。僕のお腹に着地してるから。」
説明してる間に、アリエッタは、またグリーンの光を撒き散らしはじめた。
アリエッタの指は、僕の腕や足や、怪我したところに触れては、キラキラグリーンを出して、10分足らずで傷を治してしまった。
そして僕の膝から滑り降りると、よちよちと歩き出した。
「嘘だろ?」
オランのところまで歩いて、オランの足にしがみつき「オリャン」と言った。
次はユリシーズまで歩いて、ユリシーズの靴の上に座り込み「しーじゅ」と言った。
もう一度、僕のところまでよちよちして、僕の足に抱きついて「ヴァチュチュ」と、天使のような笑顔でにっこりした。
僕たちは、驚きと喜びで、固まってしまった。
オランが復活して
「坊っちゃま、まずは湯浴みとお着替えをなさってください。アリエッタさまが汚れます。」
僕は自室にもどり、浴室に向かった。
「坊っちゃまの傷、姫さまのグリーンの光で治った気がするのですが、、」
「王子の着替えが済んだら、傷は私が確認する。姫さまが、ベッドから飛び降りたのなら、姫さまに怪我がないかどうか見てくれ。」
「姫さま、お傷を見ましょうね」
「オリャン、んっふー。」とよちよち歩いている。
その後、3人で話したが、僕の傷は全て治っていて、
アリエッタにも傷一つなかった。
一歳になり、よちよち歩きができた。僕たちの名前が、半分くらいは言える。
そして、ヒーリングのグリーンの光を撒き散らす、と言う成長したことが、わかった。
そしてベビーベッドは撤去された。
もうしばらく、男の子視点・ヴァシリス視点で、幼い2人の成長ををたどります。
読んでいただき、ありがとうございます。




