閑話 エドワード王と巫女のセレステ
エドワード国王は、部屋から皆が出て、扉が閉まったのを確認して、頭をぐしゃぐしゃにかいている。
「エドワード様、、大丈夫ですか?」
「セレステ、一体どうなっているのだ。
ヴァシリスはまだ3歳だぞ。あれと話していると、成人王子と交渉している気分になってしまうのだ。3歳とは思えぬ言動に頭が痛くなる。
それに、セレステ、其方の娘も、やっと目が開いてきたところで、まだ口も聞けぬ幼子が、光の調和だと?どうなっている。」
「世界がきっと変わる時代に入ったのではないかと。ヴァシリス様は、真に神童です。
今日の事で、文武両道、必ず力をつけて行かれるはず。」
「あの剣を見たか?トライデントの紋章が浮き上がっていた。3歳だぞ。私があの剣を受け継いだのは、13歳だった。それでも、その責任の重圧に耐えかねるほどだった。
3歳の幼児に渡して良かったのか?」
「エドワード様、間違いではありません。
トライデントの紋章は、巫女の書には載ってはおりますが、建国前の神話のレベルで、どうなるかはまだわかりません。
でもあの子たちを信じるしかありませんし、きっと海洋を護るヒーラーになるでしょう。」
エドワード国王は、顔色が悪くなっている。
「セレステ、私はあと、どのくらい生きられる?次代の巫女が現れたのだ、そう長くはなかろう。子供たちの為にしてやれる事を優先せねば。」
「エドワード様、正しくは《巫女を得た次の国王が立てば、前王はおかくれになる》です。
ヴァシリス様は、シーシェルの王にはならず、アリエッタはまだ自覚のない巫女ですよ。陛下の治世は続きます。」
「そう言う事なのか。今までは、ほぼ入れ替わりであったが、今回は違うのか。」
「そのように捉えて、国力を高めて行かれる時ではないかと。ましてや、王子が3人もおられ、それぞれに秀でた得意分野をお持ちです。」
「確かに。第一王子と第二王子も申し分のない優秀さである。それをはるかにしのぐ、最も能力が高いヴァシリスが第三王子であることも、悩ましい状況ではあった。
あれが、全く王位に興味を持たず、近隣諸国との海洋問題に興味があると言った時は、私の胸のうちを見透かしているのかと思ったくらいだ。」
セレステがクスクスて笑う。
「見透かしているのかもしれません。
トライデントの紋章の剣を持ち、海神ポセイダルゴから賜ったシャチを駆って、海を駆け巡り、巫女を我がものにすると陛下に詰め寄るなど、前代未聞の王子さまです。」
「あれを敵には回せぬな、はあぁ、全く、王子の域を超えたチビ魔王だ。
しかし、そのチビ魔王を、陥落させた赤子のアリエッタは、何なのだ。他にご神託を見ていないのか?」
セレステが苦笑している。
「エドワードさま。アリエッタは、真っ直ぐでどんな命も大切にする博愛と正義を持ち生まれています。自ら剣を持ち先頭に立ちそうです。」
「博愛と正義か、それはいわゆる《勇者》というものではないのか?そんな巫女は今まで聞いた事がないが。」
「ですから、ヴァシリス様のお相手なのです。」
「ヴァシリスのアリエッタへのあの執心と寵愛が続くと思うか?本当にあの二人は結婚するのか?」
「それが一番気がかりですが、少なくとも、あの光の調和に現れた姿は、20歳のアリエッタでした。」
「誰も触れられぬような輝く乙女に成長していたな。其方の若い頃に似ていたから、すぐにわかった。あれを見て、恋に落ちぬ男はおらぬ。」
「まあ、エドワード様、アリエッタはじゃじゃ馬になりそうで、アリエッタを扱う殿方は苦労されるかと。
私が見た未来のアリエッタは、殿方と肩を並べて、走り回っているような印象でした。
アリエッタの強さを上回ることが、常にヴァシリス様の前進力になるはずです。」
「チビ魔王とチビ勇者か。将来が楽しみだな。
我が命も、子供達の未来を見ることができるのは喜ばしい事だな。セレステ、深く礼を言う。」




