第二章 ヴァシリスの追憶 3歳その3
父上が「ヴァシリス、其方が」と目を見開いて呟いた。
僕は、呆然としつつも、父上の前に跪き、
「ちちうえ、アリエッタをわたくちのちゅまに」と宣言した。
ん?おかしいなあ、《父上、アリエッタを私の妻に》と成人らしく言ったつもりが、3歳に戻っていた。
セレステ夫人が「お人払いを」と言うと、
ミカエラード公爵が、、頷いて、退室し、
父上、セレステ夫人、アリエッタと僕だけになった。
父上が「ヴァシリス、何を見た、大事な事だから、きちんと話しなさい。」
僕は、アリエッタの指に触れてから起きた事を、舌足らずな口で、精一杯伝えた。
そして最後に言い切った。
「僕はアリエッタにきゅうきょんしていました。ちんじゅのペンダントをじゅんびしなくちぇは」
父上は大きなため息をついた。
セレステ夫人は、「殿下、どんな真珠のペンダントか絵にかけますか?」
父上は、外にいる側近に命じて、僕のお絵かきセットを急いで持たせた。
僕は、画用紙に、涙型の大きな真珠のペンダントをクレヨンでかいた。ついでにアリエッタが着ていたドレスも書いてみた。色は、深いエメラルドグリーンに白い小花がついていた。
「かけましゅた」
父上に見せると、更に深いため息をついて、頭を抱えてしまった。
「セレステ、どうするのだ?」
僕はびっくりした。父上がセレステ夫人に、とんでもない口の聞き方をしている。
「エドワード様。間違いありません。」
セレステ夫人も、父上を名前で呼んでいる。
なんか、頭がガンガンしてきた。
見てはならないものを見た気がする?
父上が、ライティングデスクから、一枚の紙を出して、僕に見せた。
「ヴァシリス、これをど思う?」
僕は目を見張った。さっき見た幻想だった。
驚いたのは、その絵には、僕が見たアリエッタだけではなく、アリエッタにペンダントをつけている大人の僕も描かれていた。
「これ、ぼくでしゅ。」
「ヴァシリス、この絵は、セレステが書いたんだ。」
「夫人も見たのですか?僕がきゅうきょんするところを」
「はい。アリエッタを産む瞬間に見ました。」
「父上、アリエッタを僕のきょんやくちゃにしてくだちゃい。兄上たちにはゆずれましぇん。」
何がなんでもアリエッタと結婚しなくては、と言う気持ちが、どうにも止まらない。
「ヴァシリス、わかったから、少し落ち着きなさい、婚約の話の前に、国家機密を話さなくてはならん。」
「きょっかきみちゅは、あとでききましゅから、そんなことより、アリエッタを王命で、ぼくのものにしてくだちゃい!いますぐに!」
焦りはやる気持ちで、僕は父上に迫った。
「ヴァシリス、先に大事な話がある!聞きなさい!」
父上は雷を落とした。
「アリエッタの事が先です。」まだくらいついた。
セレステ夫人が、間に入った。
「ヴァシリス王子様、アリエッタは王子様の妻になるために、生まれてきました。
他の者に嫁ぐことはありません。
ただ、何故、このような幻想を王子様と私が見て、
それを陛下が信じてくださり、
実現するために、頭を悩ませておられるかを、
王子様に知っていただく必要がございます。
今、アリエッタの存在自体が、国家機密であり、国の根幹にかかわる事なのです。」
僕は、さすがに息を飲んだ。
「とりみだして、もうちわけございまちぇん。」
父上が話し出した。




