第二章 ヴァシリスの追憶 3歳その1
ヴァシリス3歳の頃からの追憶です。
アリエッタとの出会いからです。
僕が、アリエッタ・アン・ミカエラードに初めて会ったのは、3歳の時だった。
その日は、家庭教師に我シーシェル王国の歴史を教わっている時だった。
勉強中にも関わらず、父上の側近が、僕を呼びにきた。すぐに来るようにと。
子供部屋がある東宮から、側近に手を引かれ、急いで歩かされた。
いつもは王宮の廊下を走ると「はしたない、もっと堂々とゆったりと王子らしく歩きなさい」と叱られるところなのに、手を引かれ、もう1人の側近に背中を押されている。
「そんなに急いでは、しぇんしぇいに、しかられましゅ」と言ってもダメだった。
「ヴァシリス王子、陛下がお待ちです。」と、更に急かされた。
王宮の執務室に行くのかと思っていたら、
父上の私室がある陽の宮だった。
父上の私室に呼ばれる事は滅多になかった。
よほどのお叱りを受ける時だった。
はて?何か叱られることをしてしまったのか?と、冷や汗が出てきた。
父上の陽の宮は、常に厳重な警戒で、
父上のお部屋までに、通り抜ける扉が、幾つもある。
二つ目の扉で、1番上のラングドン兄上に会った。
「おう、ヴァシリス、其方も呼ばれたのか?
私は、もう父上にお会いしたぞ。其方、何かいたずらをしたのか?」
「ラングドンにいさま、ぼくは何もしていましぇん。」
「知らないぞ、お叱りをうけても」と笑っている。
僕は、少し、涙目になった。
側近が、僕の背中を押している。
嫌々あるきだした。
四つ目の扉で、2番目兄のパトリック兄上に会った。
「おう、ヴァシリス、其方も呼ばれたのか?
私は、もう父上にお会いしたぞ。其方、何かいたずらをしたのか?」また同じ事を言われた。
「パトリックにいさま、ぼくは何もしていましぇん。」
「父上はいつもより難しいお顔をしておられたから、お叱りをうけるぞ。すぐに謝れ、いいな。」
「しょうちいたちましゅた」
パトリック兄様は、いつも僕を庇ってくれる。
父上の雷が落ちるのは確実だった。
僕は半泣きになりながら、5番目の扉の前に着いた。
近衛騎士団長と、副団長が、扉の前に仁王立ちだ。
いつもの王宮の執務室よりも厳重だ。
「ヴァシリス第三王子殿下、陛下がお待ちだ、側近はここで待つように。」
今日は側近も入れないのか。
ぼくは、秘密裏に殺されるのかもしれないと思った。
扉をあけると、父上とミカエラード公爵夫妻が、難しいお顔でヒソヒソと話している。
勇気を振り絞って挨拶した。
「父上、只今、まいりましゅた。」
「おう、来たか、ヴァシリス。」
涙がポロポロ落ちる中、跪き、精一杯謝った。
「父上、たいへん、もうしゅわけございませんでちゅた。かくごはできておりまちゅる。」
父上のお顔が固まっている。もうダメだ。
「???ヴァシリスどうした?何かしたのか?」
「えっ?ラングドン兄上とパトリック兄様が、父上がおいかりで、、おさたがあるかと、、」
「はっはっはっは!其方、父が沙汰を下せばならないような事をしたのか?」
「おもいあたりましぇぬが、お勉強がたりないとか、馬からおちたとか、剣術のれんちゅうがしゅしゅまないとか、、あとは、あとは、海でヤドカリを取りすぎで、お部屋に離したら、オランに叱られましゅた、今も、お部屋にたくさんヤドカリが、歩いていて、、」あぁ、もうだめだ。
「ヴァシリス、其方はよく頑張っている。
オランを怒らせたのは、反省と罰が必要かもしれぬが、ラングドンとパトリックに食わされたな」
豪快に笑っている父上を見て、死罪は免れたとわかった。
「ヴァシリス、本日は別件で呼んだのだ。」
「えっ?」お怒りではなかった。
少しずつ全貌が見えてきますので、読んでいただけると嬉しいです。




