第6章 魔法の国
ブリテン国では、女王陛下との謁見後、歓迎され、宰相を含む海軍省、魔法省での内容の濃い会議と共同演習のスケジュールがびっしりと組まれた。
海軍省での演習は、共同でチャンシアに対抗するための、軍事作戦と演習をいく通りも組み立てたが、シーシェルの最新鋭の潜水艦が注目された。
海軍省との潜水艦での演習後、大将クラスの会議で、ラングドン兄上が、シーシェルの最新鋭の潜水艦の造船注文の打診を受け、頭を抱えていた。
ランチタイムになり、兄上が私に小声で相談してきた。
「ヴァシリス、5隻も、作れるか?こちらも、チャンシアとの戦いに向けて、戦艦の装備が必要になっているのだから。」
「兄上、今回、3隻で来ていますから、2隻を差し上げては?」
「はあっ?お前、何を言ってるんだ?」
「兄上、今回は、3隻で来ましたが、乗組員は少ないしゃないですか?だから、帰還するのは1隻あれば十分ですから。」
「そう言う話ではなくて、ヴァシリス、お前、大丈夫か?」
「ブリテン国との友好関係は大切ですし、チャンシアに立ち向かうには、ブリテンとの連携が、絶対的に必要です。魔法省との会議や演習で、ブリテンの魔法力の総力も聞きました。もちろん、素晴らしい力はありますが、シーシェルでの私とアリエッタの力とは、一線を画しています。」
「確かに、それは気がついていた。魔法とヒーリングではパワーや使い方が違うのだろう。」
「そうです。で、兄上、父上から聞いておられるはずですが、万が一、世界が滅びそうな場合は、私とアリエッタが命をかけて、世界を守ります。かと言って、その力は、おそらく一回限り。何回も使えるものではありません。シーシェルだけ守っても世界が滅ぼされそうな場合は、全てを守るしかないわけですから。そこに至るまでに、回避できるものは、回避するべきです。今、一番危ない国はチャンシア、海を守る事が、チャンシアをはびこらせない事につながります。」
「だからと言って、、シーシェルには、潜水艦はあるのか?」
「はい。もちろん、海洋軍には、最新鋭の潜水艦は、、かなりの数が。しかし、潜水艦を出すより、海洋ヒーリングで対処する方が、効果的です。シーシェルが潜水艦を出す時は、海洋騎士団と海洋軍の人的被害を覚悟せざるおえないのです。戦艦配備は、最低限にしたいのです。それが、ユリシーズ殿と私の見解です。」
「では、ブリテンは、戦艦で対応するしか仕方ないと言う事か。魔法のパワーでは戦えないという事か。」
「その魔法をどう使うかを、これから探って強化していけたら、と考えています。だから、今は、戦艦にしか頼れない国に、先に渡してください。きっと、他の事で助けてもらえるはずです。」
「わかった。海軍省の大将と話を詰める。」
その後、ブリテン国の騎士団と、海神の騎士達との交流、魔法省の魔法師達との交流と研究の中で、チャンシアに対抗するための方法を模索して確立していった。
ブリテンでは、騎士は騎士職、魔法は魔法師、軍事は軍人と役割が分かれているが、シーシェルは、代々、貴族家から生まれたものは、大なり小なり、ヒーラーとして生まれてくる。
基本的にヒーリング能力があり、そこから騎士や軍人、研究者などになるから、能力は掛け合わされる。そこに大きな違いがあった。
ラングドン兄上は、シーシェルの王太子として、第3王子の私を伴い、海軍省の大将と、魔法省の大魔法師との会談に臨んだ。
「昨日、打診をいただいた最新鋭の潜水艦ですが、5隻を献上したいのです。」
「ええっ?王太子殿下、それは、、。」
海軍大将が驚く。
「我が国シーシェルでは、世界に誇る海洋軍があり、潜水艦の造船についても、世界一と自負しております。が、近年、攻撃よりも防御を優先し、兵士や騎士達の命を守る事を優先してきました。同時に、高いヒーリング能力開発を今も第一にしています。ヒーリングパワーで足りない部分を戦艦で補っています。
ですので、最新鋭の潜水艦を、こちらから供出させていただき、シーシェルで弱い部分を助けていただきたく。」
「ラングドン王太子、これはまた、太っ腹ですな。ありがたい事ですな。我がブリテンの情報で、貴殿の国で弱い部分があるとすれば、諜報活動では?チャンシアは、ここにおられるヴァシリス第3王子殿下に、皇女を押し付けようとしているはずですが、、」
魔法省の大魔法師から、その話が出た。
「もう、ご存知でしたか?その情報を得て、急ぎ、ブリテン国に参った次第です。」
私は正直に伝えた。
「ラングドン王太子と、パトリック殿下は、成人してすぐに婚姻されましたが、ヴァシリス殿下は、すでに成人し20歳を過ぎておられると聞いておりますが、婚姻はまだでしたな?」
「おっしゃる通りです。さすがに貴国の諜報機関は、よくご存知ですね。」
「ブリテンの諜報活動は、魔法師が関わっています。どんな情報も必ず集めてきます。ただ、ヴァシリス殿下のお相手が、いないはずがないのですが、その情報が入ってこない。」
「大魔法師殿、我が弟のヴァシリスは、シーシェルの至宝であり、海神ポセイドンの加護を受けた海洋ヒーラーです。そして、ヴァシリスの婚約者は、天神クロノスの庇護を受けた海洋ヒーラーであり、シーシェルの至宝でもある。絶対に失ってはならない女性ゆえ、その存在を、ひた隠しにしてきました。国民はもちろん、貴族でさえ知らない。まだ未成年ゆえ、婚姻が先延ばしになっています。あと2年あまり待たねばなりません。」
「我が国の魔法師が探っても、わからないなど、ありえんのだが、そこまで隠し通せるとは、シーシェルは神々の国と言われるだけありますな。」
「そこで、貴国に助けていただきたいのです。チャンシアからの、弟への理不尽な皇女との婚姻話をなかった事にしたいのです。」
「ラングドン王太子殿下、ヴァシリス殿下、承知した。チャンシアは、あちこちの国に迷惑をかけて困らせている故、足がつかないように、諜報員で対処しよう。しかし、その程度の手助けに、潜水艦5隻とは。1隻でよろしい。」
「海軍大将殿、大魔法師殿、どうか、受け取っていただきたい。大国ブリテンから、認めていただいた潜水艦です。私、海洋騎士団団長、海洋軍中将として、貴国と女王陛下に献上させていただきたく。シーシェルには、このくらいしか、強みがないのです。」
「えらくご謙遜を。シーシェルの海洋生物研究所での、海洋汚染についての研究や、自然保護の取り組みなど、学術面でも素晴らしい功績を持っておられる。」
「それに、ラングドン王太子殿下の外交手腕も素晴らしいし、お二人の王弟殿下方との仲が良く、助け合っている事も、我々から見ると素晴らしい事です。」
「お褒めに預かり、光栄です。では、我々が帰国する際、潜水艦2隻と、技師を数名、残します。残りの3隻は、追って、秘密裏に送りますので、到着後、乗組員を帰還させていただければ。」
「承知した。あとは、同行された海神の騎士殿と、王立騎士団との交流が、素晴らしいものになったと、アースウッド卿から女王陛下にご報告があり、陛下からナイトの称号を授けたいというお話があって、是非、受けていただきたい。」
「ええっ?ナイトの称号を、ですか?」
「シーシェルの騎士団始まって以来、最年少で、騎士団入団式当日に、騎士見習いから騎士になった5人と、聞いています。ブリテンでは円卓の騎士の伝説があり、まさに海神の騎士殿が、シーシェルの円卓の騎士ですな。」
「そんなことまで、ご存知なのですか?」
「我が国の魔法師の活躍で、、それに、海神の騎士殿は、王立アカデミーでの研究員との会議でも、素晴らしい学問上の意見交換もあったそうで、一人一人のポテンシャルが高く、目を見張るものがあったと聞いてな。素晴らしい。はっはっはっ!」
「もっと潜水艦を贈りましょうか。」
「はっはっはっはっ、潜水艦5隻で十分すぎますから。魔法省に、留学されてはいかがかな?こちらで、諜報員として、育てることも、やぶさかではないですぞ。」
結局、後日、潜水艦3隻を送り届ける時に、特級ヒーラーの力を持つ騎士を5名、ブリテンの魔法省に預けて、諜報員として教育してもらう事になった。
私達、海進の騎士5名は、女王陛下からナイトの称号と剣を賜り、ラングドン兄上は、ブリテンの勲章を賜り、世界における、チャンシア問題に立ち向かう為、国力を合わせることを約束し、シーシェルへの帰路についた。
おそくなりましたが、やっと投稿再開です。
読んでいただき、ありがとうございます。




