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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第6章 海洋生物研究所
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第6章 ブリテンからしばらく

2ヶ月滞在したブリテンから帰還し、すぐに最新鋭の潜水艦4隻を出航させた。

3隻は献上用、一隻は送り迎え用だ。


父上も、潜水艦5隻で、これだけブリテン国が便宜を図ってくれたら、安いものだと、ラングドン兄上を褒めてくださった。


シーシェルでは、なぜか、潜水艦を造る技術が高い。資源も豊富で、技術者のレベルも高いし、潜水艦造船の予算が、そんなにかからないのだ。

同盟国や友好国に高く売りつけるつもりはない。シーシェルの国民性なのかもしれない。


それよりも、諜報員の訓練を、ブリテンの魔法省で受けてくれた事は、今後のシーシェルにとっては、ありがたい事だった。


潜水艦には、魔法省で、諜報員訓練を受ける親衛隊の諜報専門の精鋭騎士5名、王立アカデミーの研究機関に行く研究者を10名を乗せ、ブリテン国に送り出した。


私が、シーシェルに帰還した時、アリエッタは、すでにクロノス殿のブラインドの中。私の事は、海洋研究所の所長や先生としか認識せず、私の巫女と言うのもわからなくなっていた。

その分、この半年ほどは、ご神託は、セレステ母君とオランに降りていた。


そして、ブリテンに置いてきた潜水艦の技術者達が、先方の技術者に伝授出来うる限りを尽くし、無事にシーシェルに帰還した頃には、チャンシアの皇女が、チャンシアの同盟国の貴族と駆け落ちして同盟国に渡ったままだと、伝え聞いた。


ラングドン兄上と、私は、その話を聞いて絶句した。諜報員というのか、工作員というのか、スパイというのか、とにかく、全く別方向に物事を向けてしまう、そこに魔法が絡んでいるという事を知っているからこそ、驚きを隠せなかったが、心から感謝した。

アリエッタと私の間に、チャンシアの皇女の問題がなくなり、すぐさま戦争にはならないという事、それが間違いない事が、セレステ母君にご神託がおりて、本当に安堵した。

今回は、ブリテン国に助けられた。


私を含めた海神の騎士達が、ブリテンの女王陛下から、ナイトの称号を授けられた事も、シーシェルの全騎士団の騎士達の誇りとなり、騎士団への入団希望者は後を断つことなく、国を守る力が更に強く、年代層も更に厚くなっている。

ブリテン国を、また訪ねる事になりそうだ。


そして、明日、アリエッタが18歳を迎え、成人する。

また一人で夕日を見るしかないのか、と諦めていた。誕生日に1日だけ覚醒したとしても、婚姻は2年後だし、せっかくクロノス殿のブラインドで、普通の少女にしか見えないように、隠しに隠してもらっているのに、王子が公爵令嬢を、王宮の成人の舞踏会に連れて行くわけにはいかない。何のためにチャンシアから隠しているかわからない。


しかし、アリエッタの人生ってなんなんだ。普通の貴族の子女としても生きられない、セレステのような青春時代もほとんどない、記憶が消え、塗り替えられ、神殿に閉じ込められ、人からも覚えてもらえず、愛を落ち着いて育む時間もなく、、自由だったのは5歳までではないのか。その5年間は濃い日々だったとは思うが、婚姻のあとは私と過ごし生きるしかない。私は、アリエッタを愛しているが、彼女から愛されているのかさえ、わからなくなる事もある。


朝から終日続いた、海洋軍と海洋騎士団の会議がやっと終わった後、会議室にユリシーズ殿と私だけになり、無意識に、大きなため息をついてしまった。

「はぁぁ〜〜〜っ。」


「殿下、明日、姫様の誕生日ですね。」

ため息の理由が会議の事ではないと、ばれたみたいだ。


「ああ、その2日後が、我が国の成人を祝う王宮の夜会だな。ユリシーズ殿が、オランに求婚した。」


例年、アリエッタの誕生日と、王宮の夜会が近い日程で開かれる。アリエッタが婚約者と披露されあのも、アリエッタが5歳の誕生日を迎えて、数日後だった。


「覚えておられたのですか?」


「忘れるはずがないだろ、母上がおとぎ話のように、毎年毎年、話すのだから。それを聞いたハニエル嬢が、アーサーに羨ましいと話して、アーサーがこっそり、パーシーに伝えて、当日、ブリテン国で、女王陛下から賜った騎士服で求婚するらしい。」


「あのパーシーが?そんな派手な事を?アラン兄上は知っているのですか?」


「今は、海神の騎士達しか知らない。当日、私達海神の騎士全員が、パーシーとハニエルに跪く事になっている。ユリシーズ殿、これは、極秘事項だぞ。それに、最初に、そんな派手な求婚をオランにしたのはユリシーズ殿だろう。ウリエル公爵家は王家の血筋を引く、やる事が派手でも構わない。」


「まあ、、そう言われれば、、、」


ユリシーズは罰が悪いらしい。

アランとユリシーズの生家、ウリエル公爵家は王家の血筋を引く公爵家だ。アリエッタの生家のミカエラード公爵家も、遡ると王家の血筋を引く。それぞれに、王弟が初代になり、何代も前に、王女が降嫁したりしている。それもあり、ガブリエル家の巫女の嫁ぎ先としては、安泰なのだ。


「母上曰く、ユリシーズ殿は18歳でも、色気ダダ漏れで、御令嬢を失神させていたんだろう。パーシーも、最初は猪突猛進型で、雰囲気はアラン殿に似ていると思っていたが、ユリシーズ殿に似たのか。最近は、パーシーとアズラエルが兄弟みたいだ。アズラエルは既婚者でも、ご婦人に人気ぐがある。」


「海神の騎士達は、殿下と共に行動するので、殿下に似てきたのですよ。殿下こそ、陛下の麗しさを一番にひいておられますよ。たまに王宮に行かれた時など、御令嬢からご婦人まで、熱い視線と黄色い声に囲まれているではありませんか?8歳の頃でも、ファンの御令嬢に追われてらした。しかし、姫様が成人なのに、夜会すら出席できないとは、何とかならんのですか。」


「ドレスと宝石は準備してあるのだが。ブリテンに行った時に、第二王子殿下と親しくなり、ブリテンの女王陛下御用達のデザイナーに特別に注文できたのだ。首飾りとイヤリングは、石をブリテンの海底で探して、第二王子妃殿下もデザインを共に選んでくださった。ただ、今のアリエッタは、研究所付きのアカデミーの研究科の女性だ、さすがに渡せんだろう。」


「殿下、それですよっ!ブリテンです。」


「ん?ブリテンがどうかしたか?」


「他国の姫として、殿下がエスコートすれはよいのです。姫様のブラインドは、クロノス殿に頼むしかありませんが。16歳の誕生日も、目覚めがあったのです。殿下、成人の祝賀の夜会は、一生に一回限り、大切な姫様のために、何とかしましょう。アラン兄上に、話をしておきますから。陛下と王妃様とラングドン王太子なら、強力してくださるはず。」


「クロノス殿が、動いてくださるだろうか。前回、ぶち切れて、噛みついて神殿をぐちゃぐちゃにしたからな。」


「殿下、姫様のためなら、なんでもできるでしょう?」


「まあ、それはそうだが。わかった。ミカエラード家の神殿に行って頼んでくる。」


「では、私はアラン兄上に話を通して、オランをつれて王妃様にお話を。」


「ありがとう、ユリシーズ殿。」


「殿下、姫様の16歳の誕生日の前も後も、ずっと国務と研究所の事ばかりで、恋の時間などなかったでしょう?成人祝賀の夜会は、この国の者として、受けるべき権利ですよ。殿下の成人の儀の時も、正式な婚約者である姫様をエスコートできなかったのですから、今回は、クロノス様も助けてくださるはず。」


その時だった。

会議室の扉が叩かれた。

「ヴァシリス所長、おられますか?研究所に至急お戻りください。」


「どうした?」


「それが、アカデミーの研究科の学生が、、」


またなんかやらかしたな?私を呼びに来る用事を作るのは、アリエッタくらいだ。


「アリエッタか?すぐにもどる。ユリシーズ殿、夜会の件は、頼んだ。」


「すぐにも。」


海洋軍の会議室がある建物から研究所は、同じエリアだ。走るのが面倒だから、騎乗で移動したが、研究所の正面玄関に近づいて、唖然とした。


研究所の所員全員が、建物の外に避難している。

所員達の顔は笑ってはいるから、事故ではないので、安堵した。


「アリエッタ嬢、これは、どういう事だ。説明してもらおうか。」


「ヴァシリス所長、すっ、すみません。あの、その、、」


研究所の周りが水族館状態になり、研究中の魚たちが、巨大なシャボン玉のような空中海水で、縦横無尽に泳いでいた。さらに中を除くと、研究所の中は水浸しだ。というか、見たことがない赤や黒や金色の可愛い小さな丸い魚が、たくさん泳いでいる。


「アリエッタ嬢、研究中の海洋生物が、なぜ、外で泳いでいる。百歩譲って、研究所の中の廊下で泳いでるならまだしも、何故、外に出した。」


アリエッタが、説明に困ってるなど珍しい。目が泳いでいる。

「あ、あの、き、きん、きんぎ、、 」


研究所のエントランスから水浸しのパーシーとアーサーが出てきた。アーサーが爆笑している。

「所長、建物の中の魚は、全部、淡水魚なんですよ。」


理由がわかった。

「淡水魚の魚が入り込んで、水が混じらないように、海水魚を外に避難させたのか?」


アリエッタが頷く。

「先生、ご、ごめんなさい。淡水魚を少しだけ、水槽一つ分を、私の研究室に移すつもりが、、全部来てしまって、、」


聞き捨てならない言葉に片眉が上がった。

「全部? 来た? どこから?」


アリエッタが狼狽えている。

「お、丘の先の川から、、」


「川?この近辺の川には、こんな淡水魚はいないだろう?今、研究所の廊下で泳いでるのは、東洋の観賞魚だろう?」


「ふえて、、」アリエッタが俯く。


また片眉が上がった。

「増えた?いつ繁殖の許可を出した?」


「に、2年前に、、所長が、よい、と。 」


2年前?16歳の誕生日の頃か?輸入品と一緒に入ってきた淡水魚を買ってきて、確か、水槽で3尾ほど飼いたいと、聞いたような。そう言えば、離宮の巫女部屋の天井まわりにも、数尾の淡水魚が泳いでいたな。いや、あの日も、漁師からもらった魚を、母上の月の宮の廊下に泳がせていただろうが。


「アリエッタ嬢、あの時、見たのは3尾だったのでは?これは、鰯の大群より大量の淡水魚ではないのか。」


「その、あの、大事にしていたら、気がついたら、増えていて。。水槽が足りないので、丘の先の川に網を張って逃げないようにして。自然破壊にはならないようにヒーリングカーテンはしていました。で、今日、久しぶりに見に行ったら、数がたくさんで、、」


「理解した。」


とりあえず、研究中の海水魚を戻さねば。


「みな、自分の担当の魚はわかるな?」


「「「「「はいっ」」」」」


「では、研究所の中の淡水魚と淡水を全て出すから、各自、担当している研究魚を、元の水槽に戻すように。分類できないものがあれば、パーシーとアーサーに頼みなさい。それぞれの海水域の海水の成分に合わせて注意して戻さないと、魚が危険だぞ。パーシー、アーサー頼んだぞ。」


パーシーとアーサーもサポートに入る。


アリエッタが、おずおずと聞きに来る。

「あ、あの、金魚たちは、外に?」


「アリエッタ嬢、ここは、海洋生物研究所だ。海水魚が優先だ。」


「ヴァシリス先生、ど、どうか、こ、殺さないで、く、ください。」

アリエッタが半泣きになっている。


「とにかく、君は今は黙っていなさい。研究所の研究を全滅させる気かっ。トライデントっ!」


全く、私が、アリエッタの誕生日と成人祝賀の夜会の心配をしている時に、何で金魚なんだ。

とにかくトライデントで、研究所の外に淡水エリアを作り、研究所内の淡水魚と淡水を全て、外に出した。


あとは、研究員が、担当している海水魚をヒーリングパワーで、選り分けて捕まえ、元の場所に戻していく。


「よし、各自の水槽を確認して、問題がなければ、今日は帰宅してよい。魚が足りない、弱っているなど、問題があれば、報告してから帰宅するように。ご苦労だった。週末はゆっくり休むように。」


お疲れ様です、と声をかけあいながら、みんなが研究所の中に入っていく。


「さて、アリエッタ嬢、所長室に来なさい。」


「ヴァシリス先生、金魚たちは、どうなるんでしょうか。」


「だから、それを今から何とかするために事情聴取をするんだろう。早く来なさい。」


所長室の椅子に座って、アリエッタは俯いて半泣きになって、金魚たちの命を嘆願していた。


「処分するとは言ってない。だが、こんなに増やしてどうするんだ。」


「本当に、こんなに増えるとは思ってなかったのです。」


「アリエッタ嬢、皆の前では黙っていたが、其方の巫女部屋にも、泳いでいたな。あれが増えた時点で相談すべきではなかったのか?」


「ヒーリングのあと、よく眠る事があって、アカデミーの研究やレポート提出に追われて、確認が後回しになって、申し訳ありませんでした。」


「確かに、ヒーリングでエネルギー充電の為の休養時間もかなり必要だったから仕方ないが、ならば尚更、無責任に増えてしまわないようにするべきではなかったのか?」


「先生のおっしゃる通りです。ごめんなさい。」


「アリエッタ嬢、其方、今年は成人の年であろう。貴族の令嬢なのだから、嫁いでもおかしくない年齢だ。目先の見通しができて当たり前と言われる年齢だ。こんな事では、、」


ちょっとお叱言を言って、金魚を助けるつもりだった。


「先生、私は結婚しません。ずっと研究所にいます。だから、研究をして、、 」


アリエッタが聞き捨てならない事を言ったか?


「きっ、君は、結婚しないのか?」


「お相手がないので、、、 」


目の前にいるではないか?18年前から婚約者だぞ。思わず聞いてしまった。冷や汗がでる。


「其方、思い人もいないのか?」


「えっ? 」

アリエッタが固まって、私の目を見つめた。

アリエッタが成人します。

読んでいただき、ありがとうございます。

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