第6章 画策
国王がアリエッタに告げる。
「アリエッタ、案ずるな。とにかく、ヴァシリスとアリエッタが婚約者である事は変わりないし、アリエッタの20歳の誕生日に、婚姻の式を挙げることも決定だ。シーシェルでは、一夫一婦制だから、他の女性を娶る事などさせないから、案ずるな。」
「お義父様、ありがとうございます。でも、外交として、政略結婚を押し付けられて、回避できるのでしょうか。」
「アリエッタ、それを今から皆で検討する。だから焦るな。どんな方法をとったとしても、其方らが幸せになれるような策を取るゆえ、信じてくれるか。」
「ありがとうございます。皆さまを信じます。もし、私に出来ることがあれば、命じてくださいませ。」
その時だった。書斎の扉の向こうから来訪の声があがる。
「陛下、王太子殿下がお見えです。」
「通せ。」
「父上、緊急とのこと、参りました。」
皆が一礼する。
ラングドン兄上は、みんなを見渡して、一言言った。
「ご神託ですか。」
「兄上、、ご存知だったのですか。」
「ヴァシリス、お前には苦労ばかりさせているな。私も王太子だ。息子が生まれた時に、父上から説明を受けた。」
確かに、父上の後を継いで、王位を継ぐ王太子であるラングドン兄上が、巫女の存在やご神託を知らずに済ませる、と言うわけにはいかなかった。
ましてや、王太子は、国王と共に外交にも関わっている。
その後、皆で、まず戦争の回避策や、アリエッタを含め巫女たちが、またチャンシアから狙われないよう、存在を隠すことも決まった。
「陛下、かねてより、ブリテンから外交を深めたいと言われていた件も、そろそろ進めては?」
アランが難しい顔をしながら、促している。
「そうだな、アラン。問題は誰が行くかだな。皆も知っているが、ブリテンは魔法をつかう国だ。だから、チャンシアのターゲットにもなっているが、ブリテンの王族はチャンシアと縁を結ぶ気は全くないらしい。ラングドンとパトリックは、アカデミー在学中に外遊して知っているが、ブリテンはシーシェルの王家や貴族がヒーラーである事は知っていて、国交を深めたいと言ってきている。」
「父上、ブリテンと友好を結ぶためにも、王太子である私は、行かねばならないと思っています。」
「そうだな。ラングドンと、、ヴァシリス、お前にも行ってほしい。」
「えっ?私ですか?」
「そうだ、お前は、我が国、最大の超特級ヒーラーであり騎士でもある。ブリテンも、シーシェルと同じで、海に囲まれた島国だから、海洋騎士団を束ねる海洋ヒーラーであるお前は、王子としてだけではなく、ラングドンの側近としても、行かねばならぬ。」
「承知いたしました。海洋の騎士は?」
「我が国が誇る騎士だ、全員連れていくのだ。ユリシーズ、5人が抜けてもシーシェルの守りは問題ないな?」
「はっ、シーシェルの守りは問題ありません。前日来より、ヴァシリス殿下とアリエッタ姫、パトリック殿下、ソニア妃が、国土と領海の防御を最大限にヒーリングしたところです。細かな部分は、海洋騎士団と森林騎士団が、日々、保守しつつ、ヒーリングしております。ヴァシリス殿下が外交に出られて、心配になる一番の守りは巫女の守りです。」
「わかった。アリエッタの守りは、ヴァシリスからクロノス殿とポセイドン殿に頼んでもらえるか。」
「そうします。」
ブリテンへの出発は10日後となった。
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離宮に戻ってから、アリエッタがまだ私を覚えていたので、少し、ゆっくりと過ごせた。
久しぶりに、浜辺で、ピクニックらしいティータイムだ。
「ヴァシリスさま、私、きっと、また忘れてしまうのですね。」
「アリエッタ、お前を守るためだ、私だって、常に側に置いておきたいが、アカデミーを卒業するまでの辛抱だ。婚姻の日も決まっている。何が起ころうと、アリエッタを妻にする。どうにもならなくなったら、チャンシアを滅ぼしてもいい。」
「ヴァシリスさま、そんな恐ろしい事はしてはいけませんよ。お気持ちは嬉しいですけど。」
「心配するな。」
私は、アリエッタの腰を引き寄せた。ヒーリングの事以外で、ゆっくりするなんて、16歳の誕生日以来だった。
「それよりアリエッタ、アカデミーの研究はどうなっている。最近は、ぶっ倒れてばかりだから、進んでいるのか?」
「うっ、、、」
「アリエッタ、ヒーリングと海水汚染とプラスチック問題以外の研究は、どうなっているのだ、私はアカデミーを首席で卒業しろと、言ってあるぞ。」
「だ、大丈夫です。ちょっと珍しく魚類を見つけて、いま、研究しています。」
「なら良いが、一人でする研究の論文もしっかり書くように。大変なのは、わかっているが、妃になるには、それもできねばならぬからな。」
「はい、努力します。ヴァシリスさまは、もうブリテンへの出発準備は整われたのですか?」
「女性と違い、男は簡単だ。騎士服と王子の正装だけあれば足りる。お前を連れて行きたかったが、お前の身を守る為に、留守番をさせてすまない。いつか一緒に世界の海を巡ろう。」
「約束ですよ。」
「なんだ、今日はえらく、聞き分けがいいな。」
「記憶があるときくらい、ヴァシリス様とゆっくりしたいですから。」
それでも、アリエッタの目は、ウルウルとしていた。離れがたい思いは互いに変わらない。
「ヴァシリスさま、必ず、ご無事でお帰りくださいね。」
アリエッタをさらに引き寄せて口づけをした。
アリエッタを置いて、国を離れるなんて、考えた事がなく、さすがに私も狼狽えていた。
私がブリテンに出発する前には、アリエッタにブラインドがおり、私の婚約者である事を忘れて、周りにも更に強烈なブラインドがかかった。
すでに、アリエッタは、普通の学生として、研究所で研究に打ち込んでいた。
ユリシーズとオランにアリエッタを託し、
シーシェル海洋軍が誇る最新鋭の潜水艦3隻で、王太子であるラングドン兄上、第3王子の私、海神の騎士達は、ブリテン国にむけて出発した。
チャンシアからの無理難題を回避するために、友好を結ぶためにも、ブリテンに向かいます。
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