第6章 最悪のご神託
「アリエッタ、まだ起きてくれないのか?」
私は巫女部屋で、眠り続けるアリエッタの髪に触れていた。東海岸のヒーリングをして、眠ってから10日になる。体が冷えて、なかなか体温が上がらない。
毎日、オランに手伝ってもらって、温泉で体を温めているが、半日と持たない。
王宮の医師にも見せたが、回復を待つしかないと言われた。
この半年くらいは、3日も眠れば、ケロッと目覚めていたのに、今回は長すぎる。
巫女部屋で、オランにも付き添ってもらって、アリエッタの毛布を温めていた時だった。
オランが急にうずくまり、アリエッタがうなされだした。
部屋の外にいる、護衛に、ユリシーズを呼ぶように言う。
「オラン、大丈夫か。何が見える。」
「坊っちゃま、、く、黒いふ、船が、、何隻も、、、潜水艦です、うっ、、」
黒い?細い船?まさか?オランの背中をさすりながら、ソファに座らせる。
「いやあぁぁぁ〜〜、いやっ、いや、やめっ。」
アリエッタの叫び声だ。眠ったままだが、多分、ご神託だろう。
「坊っちゃま、先に姫さまを、姫さまを起こしてください。私は大丈夫です。」
「オラン、わかった。ユリシーズを呼んでいるから。」
「アリエッタ、アリエッタ、、、アリエッタ、起きるんだ。目を覚まして。」
アリエッタの目がパチリとあいた。
「ヴァ、あっ、ヴァシリスさま、お願い、やめてくださいっ、嫌ですっ、お願い。」
今は、私が誰かわかっているようだ。
アリエッタが、しがみついてきた。最近はご神託を見ても、ほとんど取り乱さなかったが、今は、かなり取り乱している。
「アリエッタ、ご神託だ、大丈夫だ。何を見た。」
「ヴァシリスさまっ、ヴァシリス、いやです。やめて、、、行かないで、、、 」
すごい勢いで、私にしがみついてくる。こんな事は久しぶりだ。しっかり抱き止めて、背中をさすりながら、もう一度聞く。
「アリエッタ、私だ、ここにいる、大丈夫だ。ずっと側にいる。何を見た。」
アリエッタがポロポロと泣き出した。
「ヴァシリスさまが、ヴァシリスさまが、結婚を、、 」
「私とアリエッタの婚姻のご神託か?」
アリエッタは、首を横に振る。
「ち、ちがう、ちがうの、、ヴァシリスさまが、、皇女と口づけを、嫌です。嫌っ、、私をす、す、捨てないで、、」
もうそこからは、アリエッタが号泣し続けて、何も話さなくなった。
振り向くと、ユリシーズが、オランの背中を、さすっている。
「殿下、チャンシアが、皇女を殿下の妃にしろと、受け入れないなら、ヒーラーをよこせと、、オランが見たのは、その先、開戦になると。」
「ユリシーズ、父上に早馬を、、」
その時だった。
巫女部屋の扉が、どんどんと叩かれ、ダニエルの声が聞こえた。
「ヴァシリス、ユリシーズ殿、王宮から早馬が、、 」
「わかった、すぐに向かう。ダニエル、アーサーとアズラエルで、警護を頼めるか?部屋に入ってくれ。」
「アズラエルとアーサーは離宮前にいるから、呼んでくる。」
部屋の外で、ダニエルが、護衛騎士に指示を出してから、入室してきた。
「アリエッタ、アリエッタ、しっかりしろ、ご神託の事で王宮に行ってくる。」
「嫌です、ヴァシリスさま、置いて行かないでください、離れるのは嫌です。」
「すぐに戻るから、、」
「いや、嫌です。お願いです。」
「アリエッタ、ダニエルが一緒に残ってくれるから、、。」
「ヴァシリスさま、いやです、いやっ、離れるのは嫌っ、」
アリエッタは、何が何でも、私から離れるつもりはないらしい。確かに、私が、他の女と結婚するご神託を見たのだから、落ち着けと言っても無理だろう。
ユリシーズが、馬車の用意をするようにと、アズラエルに指示をしている。
「殿下、オランと姫様も一緒に王宮に。」
「ヴァシリスさま、馬車は嫌です、側に、お側に、、」
海洋離宮から王宮まで、そんなに遠いわけではないが、騎乗で行くか、、しかし、ユリシーズと私が早馬で急ぐと、緊急事態に見えてしまう。
「わかった、トライデントで移動する。」
以前、陽の宮と月の宮の間のエントランスの広間側に、アリエッタが出した魚と海で水族館を作っている。そこに移動するのが早いだろう。
ユリシーズとオラン、私とアリエッタ、海神の騎士全員が、巫女部屋の中に集まった。
トライデントで海を出し、月の宮のエントランスの水族館に移動した。
かなりのヒーリングパワーが必要かと思ったが、意外にエネルギーは使わなかった。次からもこれでいいか、と、便利な事を思いつけた。
陽の宮の父上の書斎に着くと、父上、母上、既に、セレステ、アラン、父君のマース殿も集まっていた。
「つまり、セレステ、オラン、アリエッタの三人三様だが、最終的に、チャンシアと戦争になると?」
国王が、また頭を抱えている。
今回のご神託は、世界情勢の中で、海洋汚染源として、各国から責められ、チャンシアが浮いている事がきっかけだった。
チャンシアは、海洋汚染の対策のために、海の護りが強い数カ国に、婚姻関係を結ぶことで、自国の努力なしに、他国の魔法やヒーリングの力を得て、簡単に汚染垂れ流しを解決しようとしているらしい事がわかった。
そのターゲットの一つに、シーシェルの第3王子の私に、皇女を押し付けようとしているわけだ。
他の国にも、王女を寄越せとか、魔術師やヒーラーをは派遣しろだの、汚染源としての自覚がない態度で、外交を押し付けてくるようだ。
「父上、クロノス殿のブラインドがあり、私は独身で婚約者かいない事になっていますが、私の妃は、アリエッタ以外は、あり得ません。」
「ヴァシリス、アリエッタ、それはわかっている。お前たちを引き裂くことなどできない。」
アリエッタが、私の横で、私の騎士服を掴んで、泣き腫らした顔で座っている。
国王が話す。
「セレステが見たご神託は、各国の王室は、チャンシアの皇族と縁を結ぶのを拒絶したらしい。もちろん、シーシェルもヴァシリスの婚姻は断っている。」
「で、オランが見たご神託は、チャンシアが攻めてくる光景だったが、チャンシアと戦争になったのは、ヒーリング力の高い我が国と魔法王国であるブリテンだ。我が国もブリテンも、海軍力は高い。チャンシアは同時に2カ国に対して、攻め入るつもりのようだ。だが、過去に起きたチャンシアの領土への侵略ではなく、海での戦いになる。」
ユリシーズが説明する。
「チャンシアの戦艦だけなら、領海侵犯したら、すぐに、ヒーリングパワーで消してしまえるが、ブリテンはどうなりますか?」
「ブリテンも、魔法師団で、撃退するはずだ。」
アリエッタが説明をはじめた
「その戦争のあと、和平として、皇女をヴァシリス様に、押しつけてくるのです。でも、戦争をしてもしなくても、押し付けてくるのです。」
アリエッタの体が震えている。
投稿遅れてしまいましたが、読んでいただき、ありがとうございます。




