表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第6章 海洋生物研究所
100/159

第6章 3人目の巫女

アズラエルの全身が震えている。


「万が一の時は、母上を手に掛けろと?父上、何を言ってるのか、わかっておられるのですか?」


「わかっている。その約束で、オランを妻に迎えたからな。」


「理解できません。」


「理解しようが、すまいが、オランが害される前に命を断つしかないのだ。巫女は自害できない。」


アズラエルが、ユリシーズに殴りかかりそうだ。


「殴りたいなら殴れ。だがアズラエル、私は、お前より強い事を忘れるな。」


王宮から海洋離宮に戻ってきてから、離宮のサロンで、ユリシーズとオラン、私の3人で、アズラエルを、説得中だった。


「ヴァシリス、まさか、お前は、アリエッタ姫が危険な時には、命を奪うつもりなのか?」


「それが、巫女と国を守ることた。」


「見損なったぞ、ヴァシリス。」


「なら、アズラエル、お前は、自分の妻が、他の国の男に拐われ、害されるとしても、幸せに生きていけ、と言えるのか?」


「うぐっ。」


「大切な愛する妻を、侵略してくる国に奪われて生き延びてほしいと、思うのか?それだけではない、ガブリエル家の血筋の女性は、シーシェルのシェル姫の血を引く末裔なのだ。だから、守り続けてきているのだ。お前の母上、オランがそうなのだから。」


アズラエルが黙っている。


「ミカエラード家のマース殿がセレステ様を、妻にする時も、同じ約束をしている。だから、マース殿の剣は、ガブリエルの剣なのだ。」


「ガブリエルの剣、では、アーサーの剣も?」


「そうだ、海神の騎士達の剣は、クロノス殿とポセイドン殿の加護がある。だが、アーサーの剣だけは、ガブリエル家の紋章が浮き出て、更にアリエッタのパワーも込められているのは、万が一の時、アーサーがアリエッタの命を奪えるようになっているからだ。」


「アーサーは知っているのか?」


「もちろん知っている。アーサーは、ガブリエルの剣を使う役割を持ち、生まれてきた、ガブリエル家の男だからな。」


「ヴァシリスは、アーサーがアリエッタを手に掛けても構わないのか。」


「万が一、万が一の時、基本的には、私のこの手で、共に命を絶つつもりだ。だが、万が一、私が力尽きた場合は、アーサーとダニエルに託すしかない。」


「ダニエルもなのか?」


「そうだ。ダニエルは巫女の母と、巫女の妹を持つ、だから、海神の騎士の剣には、その力が宿っている。」


私の説明に、アズラエルが、崩れ落ちた。


「ヴァシリスは、いつから、その覚悟を?」


「3歳から。」


「だから、強くなろうと?父上も知っていたから?」


ユリシーズが頷く。

「アズラエル、やっと気がついたか。ヴァシリスは、巫女を得て、絶対に強くなくてはならなかった。巫女に限って、守る、と言うのは、生かす事だけではないからだ。お前が思うよりも、ヴァシリスの精神力は、この国で、一番かもしれぬ。

陛下は自分の巫女、セレステ義姉上を手にはかけない。セレステ義姉上もオランも夫がいるからだ。だが、ヴァシリスは、全ての責任が自らにかかってくる。」


オランが口を開いた。

「アズラエル、基本的には、万が一の有事の際には、ユリシーズは私と共に自決します。もしユリシーズが仕損じたら、母の命を終わらせなさい。」


「母上、私は、、」


「ガブリエル家に生まれた以上、逃れられない運命です。いいですね。母が辱めを受けずに済むように、必ず、約束してほしいのです。」


「父上、母上、承知しました。」


「もう夜中になってしまった。アズラエル、明日は、騎士団で、お前が副団長として、指揮を取らねばならない。早く帰って寝ろ。それから、この件は、自分の妻子には絶対に知られてはならん。巫女の存在を知っている者だけの機密だ。それを守れなければ、ガブリエル卿かアーサーに、お前の妻子の命を奪われるぞ。」


「承知しましました。」


アズラエルが、消耗した顔をしている。

「父上、こんな顔で、妻に会えない。」


「アズラエル、騎士寮があるだろう。私も、あまり家に帰ってなかったのは、そう言う事だ。」

ユリシーズが諭している。


「そうだったのですね。僕は甘かったんだ。何も抱えていなかった。強くなります。父上、母上とアリエッタ姫を守ります。」


アズラエルは、海洋騎士団の騎士寮に戻って行った。辛いだろうが、皆、同じ思いだ。


翌日、海洋騎士団で、アズラエルが副団長になった。団長は王子である私だが、研究所の指揮が忙しく、実質的にはアズラエルが団長の役目をしてくれるだろう。


海洋騎士団で、海神の騎士5人が久しぶりに揃い、その日の訓練は厳しさを極めた。

アズラエルが、ユリシーズを彷彿とさせる鬼副団長になるとは思わなかったが、前日の事もあり、荒れていたのだろう。鬼気迫る訓練だった。


訓練後、5人が情報交換するために、団長の執務室に集まって、飲みながら話をしていた時だった。


「アーサー、ガブリエルの剣の事だが。。」


「アズラエル、オラン殿の事、聞いたのか?」


「えっ?先に知っていたのか?」


「ガブリエル家は、巫女の血筋を守る家系だから、巫女が覚醒する度に、わかるんだ。その役目を果たすために、必ず男子が1人だけ生まれて、引き継いでいく。」


「覚悟ができてなかったのは、僕とパーシーだけか?」アズラエルがパーシーの顔をみる。


「いや、ハニエルと婚約した時に、義父殿、つまり、ガブリエル卿に殺されかけた。」


「えっ?」


「ハニエルが、巫女として覚醒するかどうかわからないけど、ガブリエル家の直系の女性は、巫女と同じ扱いだと聞いて、昨日アズラエルが聞いただろう内容を、義父殿から説明を受けた。婚約解消の場合は、僕の命はないらしい。」


「では、僕だけだったのか?だって、ヴァシリスとダニエルはアリエッタ、アーサーは、全巫女だろう?パーシーはハニエル。みんなは、前から覚悟ができてたんだ。やっぱり僕だけが甘かったんだな。 」


「だが、平気ではなかった。だから父上の鍛練は厳しかった理由がわかるだけろ?」ダニエルが呟く。


「そうだ、平気なはずないだろう。だから、騎士団の入団式の日、ヴァシリスの覚悟を見た時に、巫女を守る覚悟ができたんだ。」アーサーもぽそりと言う。


「俺は、ヴァシリスとアリエッタを見てきたから、ハニエルの事、受け入れやすかったけど、ガブリエルの義父殿は、優しい方だと思い込んでいたけど、ウリエルの父上より怖かった。」パーシーが真顔で言ってる。


「だから、この5人だったのか。」


「そうだろうな。巫女を守る事が、国を守る事に直結しているからな。」


みんながみんな、騎士団入団式から10年以上経て、この5人が集まった絆を、新たに理解した気がしていた。


「アズラエル、海洋騎士団は頼んだ。騎士達の体力と精神力を高める事が、ヒーリング能力を高める事に繋がる。」


「承知した。今更ながらに、父上がなかなか家に戻って来なかった理由が、やっと分かってきた。」アズラエルが、やっと、少しばかり笑顔になってきている。みんな、抱えている事が重い。


パーシーがついでにと、ハニエルがあと少しで18歳になり成人するので、アカデミー在学中に婚姻することになったと、みんなに報告してくれた。警護の事も含めて、やはり早く同じ屋敷に住む方が良いと言う事になったらしい。

それはそれで、良い事だった。


「では、ついでに、僕も、まだ先だが、アリエッタの20歳の誕生日に婚姻の日が決まった。父上から念押しされたから、変更はないと思う。」


みんなで、祝福し合って、その夜は遅くまで団長室で飲み明かしていた。


海神の騎士達の絆が、更に深まります。

読んでいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ