第百拾六話 ゲンブ、誕生
(作者注: 今回も不知火玄武くんの夢の中の話になります。)
「ゆうべはお楽しみでしたね!」
平田果実が、村に帰ってきた次の日。つまり、彼の嫁の『イウィ』と初めて一緒にお風呂に入った日の次の日のことだ。屋敷の外を歩いていると、村人Fにそう言われた。その言葉に果実は『ふっ』と笑って応えることしかできなかった。
それから間も無くして、果実の嫁の『イウィ』のお腹がぽっこりと膨らみ始めた。
そして、そのことが村に知れ渡り、村中がお祝いムードになっていた頃、
「うん! やればできる!」
満面の笑顔を浮かべた村人Gが、果実にサムズアップをする。彼はまた、それに『ふっ』と笑って応えた。
それからさらに数ヶ月が経ち、『イウィ』は無事にその赤ん坊を出産した。
「おぉ、なんと可愛らしい。これが我が子……。子は可愛いものだが、自分の子だと、殊更可愛くみえるなぁ〜。」
果実は赤ん坊を抱き上げる。その姿に、イウィも優しい笑顔を浮かべた。
「お主の名前は……、玄武だ。玄武! 元気で強い子に育つのだぞ!」
果実とイウィが子に付けた名は、『玄武』であった。平田玄武は、平田家の長男として、この世に産声をあげたのだ。
「ほら、青龍! この子が我々の子だ。お前の弟みたいな感じだな。この子にもそのうち修行をさせようと思っているからなぁ。俺の技を全部この子に伝授しないとなぁ……。」
果実のそばに居た深山青龍に語りかけながらも、果実は嬉しそうに玄武の顔をのぞいていた。
しかし一方で、その果実の手元の玄武に向けて、青龍は憎しみを込めた視線を投げていた。それを果実とイウィに気づかれないまま、ずっと……。
――――――――――――――
イウィが身籠っている間も、果実は青龍とともに修行を続けていた。青龍はいつも真剣に練習に取り組み、次々と平田鍬形流の技を習得していった。
それは、玄武が生まれた後も変わらなかった。果実と青龍はいつも修行に励み、数年が経って玄武が2人の修行の真似事をしだした後も、何も変わらなかった。
「よし! 今日はこれくらいにしよう!」
稽古の終わり、果実は青龍に声をかける。
青龍は、ただ「はい!」と頷くだけである。これもいつものことであった。
「はぁい〜!」と、玄武も声を上げる。言葉もわかり、少しは話せるようになってきた頃である。これもまた、最近では、いつものことであった。
その玄武の振る舞いを見て、青龍も「ふふふ……。」と、笑みを浮かべた。
『平田玄武』と『深山青龍』は、7つほど年が離れていた。体格は大人と子どものように完全に違う。青龍にとっては、まだ玄武は赤子のような存在であり、その赤子としての姿には、さすがの彼も微笑ましさを感じていたのだろう。
しかし、その微笑みを浮かべた後、青龍は何かを思ったのか、すぐにキリッとした顔に戻る。これもいつものことだった。
「あなた。青龍。今日もお疲れ様でございます。さて今日は、玄武が生まれて2年になります。これをこの子にと思って、作りました……。」
イウィは、そう言いながら道場に入ってきた。平田家の屋敷の敷地内に併設された道場である。ここで果実と青龍は稽古をしているのだ。
「おぉ……。ありがたい。さて、これは何か……?」
果実は、イウィが何かを作ってきたことに喜びはしたものの、それが何であるかはわからないかった。木で作られた、先が尖った筒のようなものであった。
「これは、『コテカ』と呼ばれるものです。私の民族に古くから伝わる衣装です。この子の男性器を守ってくれるものです。そして、家族がいつまでも平和で、お家が末長く続くという願いも込めているのです」
イウィはニコリと笑って答えた。彼女は果実と異世界で出会ったのだが、元々はこちらの世界のどこかの生まれであった。彼女が作ったのは、その民族の民族衣装的なものであろう。彼女はこうやって果実と共に果実の村に来て、もう故郷に戻ることは無いとは思っていた。しかし、故郷のことを忘れているわけではないのだ。
「そうか。ありがとう、イウィ! ほら、玄武! 母上がお前に素晴らしい贈り物を作ってくれたぞ……。大事にするんだぞ!」
果実の目の前で、イウィからその『コテカ』を受け取った玄武は、笑顔を浮かべる。しかし、彼はそれの使い方がわからなかった。
「はぁい〜!」
玄武の手のひらよりも随分と大きいコテカを、彼はただ不思議がり、それを頭の上に乗せたり、天狗のように鼻に当てたりして、皆を笑わせたのであった。
もちろん、これには青龍も声を上げて笑ったのであった。
――――――――――――――
そして、それから更に3年の月日が流れた。
「青龍。今日でお前も、元服だ」
青龍は12歳の誕生日を迎え、大人になった。彼の元服の儀は、平田家の屋敷で行われた。血の繋がりはないものの彼はこれまで平田果実とイウィに育てられ、村の皆も知る間柄である。彼は一応、村の長である平田家の子であり、その元服である。それは村人を集めて盛大に行われたのだ。
「さて、皆のもの。青龍の元服を祝って……。」
元服の儀式が厳かに行われた後は、宴会だった。集落内で作られたお酒で、乾杯なのだ。村のほとんどの大人たちが平田家の屋敷の庭に集合している。
「はい……。父上。母上。これまで私を育ててくれてありがとうございました」
果実の横に座っている青龍は、果実とイウィに丁寧な挨拶をする。3人ともきちんと正装をしているため、村の人々の中でも一際目立っていた。その3人の後ろに座っている玄武もまた、いつもより綺麗な格好をしていた。
「こちらこそ、今日までよく一緒に修行に励んでくれた。私一人では修行にならぬからな、お前がいてくれて本当によかった。本当にお前は、見違えるほど強くなった……。」
「それは嬉しいお言葉でございます。これも父上の教え方が上手いのです」
果実の言葉に、青龍は、彼のことを持ち上げつつも答える。
「ははは。そうか、でも、お前に比べると、玄武の方は、からっきしだ……。あいつはどうも緊張感が足りん」
その言葉に、後ろにいた玄武は、ただ「はは」と笑うだけであった。まだ5歳足らずの玄武である。父親の果実と青龍と一緒に修行に参加していたものの、彼の上達はイマイチであった。真面目にやっていないのであろうか、果実が指摘したように、緊張感が足りず、真剣さを欠いていたのであった。
「そうですね。彼にはまだ武道を学ぶ覚悟がないのでしょう……。」
青龍は侮蔑の目を玄武に向けたが、その視線にも玄武は、ただ「はは」と笑っただけであった。
「覚悟か……。そうだな……。玄武にはまだ早いのかもしれぬ……。」
果実も、玄武の方に視線を向け、「ふぅ〜。」と小さくため息をついた。
「あらあら。あなた、まだ玄武は若いのです。まだ父親の果実さまと兄の青龍に守られている存在です。まだ自分の手で守りたいものを守ろうなどと言う覚悟を持てるはずがありませぬ……。」
イウィは、果実と青龍を嗜め、玄武を庇う。
その言葉に、果実と青龍は目を合わせて、「またか」とでも言わんばかりに、口にニヤリと笑みを浮かべあった。
「ははは。それでは、私と青龍がいなくなれば、玄武も自覚を持って修行に励むのであろうかのぉ〜? ははは」
と、声を上げて笑う果実に、「ほほほ……。それは、この子次第ですね……。」と、イウィは果実に笑い返したのであった。
「まぁよい……。皆のもの! 楽しんでおるかぁ〜?」
声を上げる果実に、村人たちはやんややんやと騒ぎ返す。もちろん、村の人々は、皆楽しく酒を飲んでいた。
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まだ5歳の玄武を寝かせるためにイウィは屋敷に戻ったが、果実は、村人たちに混じり、ひたすら酒を飲んでいた。
そして、宴は、日が暮れるまで続いた。仕事や家庭の事情で帰宅するものもちらほらとはいたが、多くはその場で酔い潰れるまで飲んでいた。
村人は次々と酔い潰れ、あたりは静かになってゆき。日が暮れて間も無くしてくると、起きているものもいなくなり、宴は自然と幕を閉じつつあった。
平田家の屋敷の大きな庭には、酔い潰れて眠っている村人が大勢いる。そこで、青龍は、腰に携えた刀に手をかけ、それをキンと音を立てて抜いた。
元服の儀の最中に、父親である果実から譲り受けた刀である。
村人たちの装いよりも幾分か豪華な正装をした平田家の人間は、目立っていた。酔い潰れた人々でごった返すその庭でも、月の明かりで果実の姿は十分にわかる。
そう、青龍は、酔い潰れた村人の中から、父親である果実を簡単に探し当てた。
「父上……。今まで、本当に……。ありがとうございました……。」
酔い潰れて寝息を立てる果実の前で、青龍は刀を大きく振り上げた。
ドンッ!!!!
次回に続く!
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おほほっっっほ!! 私、高村まんご。小学4年生。
いやぁ〜。いいところで次回に! ってところだよね〜。まぁ、ここまで来たら……。いや。ねぇ〜。う〜〜ん、次回が楽しみっ!
うん?
あの? あれ? 民族衣装だから……。でも、おパンツみたいなものでしょ?
な〜〜んにも問題ないよ! たぶん!
そうなんだよね。『イウィ』さんが作ったんだよ。木からね〜。え? その木何の木って?
私、気になります! って?
大丈夫! そのうち出てくるから……。まぁ、察し……ってところだけど。そのうち出てくるから、お楽しみにねぇ〜。
てか、次回もねぇ……。ここ最近、このタイトル流行ってるよね……。うん、まぁ、あまり気にしないでねぇ〜。遥さんのやりたいようにやってるだけだから。うん。
まぁ、そいうことだからねぇ〜。
じゃあ、次回は、
魔法少女マンゴ☆スチン Reincarnation
『第百拾七話 せめて、鍬形らしく』
だよっ!
絶対に読んでねっ!
マンゴスチン! カジュー! ヒャクパーセントー!




