第114話 よくもジーンを!だまんごー。
小学校が終わった後、高村桃矢は、いつものように不知火家の道場にきていた。稽古のためだ。しかし今日は、父親の甜瓜が仕事で忙しくて来れなかったため、一人だった。
「よぉ、桃矢! あれ? 今日は一人なのか?」
道場に訪れた桃矢を、不知火柘榴が迎えた。彼女はこの家に住んでいるので、一足先に家に帰り、着替えを済ませて自主練習を始めたところであった。
「よぉ! そうなんだよ。パパは仕事で忙しいからって……。」
桃矢は道場の入り口で靴を脱ぎながら、中にいた柘榴と声を交わす。
「そうかぁ……。あっ……。じゃあさ、ちょっと話があるんだけど……。いいか?」
「うん? いいけど。何かあったのか?」
「ううん。別に?」
柘榴は、少し顔を赤めて首を横に振った。
二人は、更衣室の中にいた。まだ他には誰も来ておらず、二人っきりである。
「あのさ……。」
柘榴は更衣室の中をキョロキョロと見回し、二人っきりであることを何度も確認する。そして、両手を自身の前でモジモジとさせながらも、真っ赤になった顔を上げた。
「あのさ……。桃矢……くん。私さ……。こうやって一緒によく稽古してるじゃん。そんで、いつも頑張ってる姿を見ててさ。その……。なんというかぁ……。あんたのこと好き……。になったわけで……その。いやっ! あの。もうクラスに付き合ってる子とかいるじゃん。そういうのが羨ましいってわけじゃないけど。その……私もその。あれだ。……私と、付き合ってください!」
柘榴は、本物の果物の柘榴と見間違うほどに顔を真っ赤にさせた。それでも、彼女は勇気を振り絞り、桃矢に告白したのだった。
「あっ……。ありがとう。その気持ちは嬉しいんだけど……。俺、そういうのじゃなくて……。」
柘榴の言葉に対して、桃矢は申し訳なさそうに頭を下げる。もちろん、彼にとっては嬉しい告白であった。いつも仲良く稽古をしている大事な友達である。できれば断りたくはなかった。でも、それに応じるわけにもいかない事情があったのだ。
「じゃあ、私のこと嫌いなの? やっぱり、妹のまんごちゃんのことを根にもって……。」
柘榴は、視線を下げる。顔の赤みは少し引き、その代わりに、目にはうっすらと涙が滲み始めている。
「いや、そういうことじゃない!」と、桃矢は顔を上げて、声を大にして言った。
「あのことは謝っただろ? それに、こうやって俺がここに稽古しに来られているのも、そのおかげだし。あのことは、逆に、感謝してるよ! そういうことじゃないんだ……。」
「それじゃあ、何で?」
柘榴は桃矢の返事に納得できないため、さらに聞き返した。
「う〜ん。でも……。話すと長くなるからな……。見せた方が早いかな?」
桃矢は頭をポリポリと掻いて少し悩んだ末に、ズボンのチャックに手をかけた。
「おい! ちょっと、なにやってんだよっ! 桃矢っ! 私たちってまだそんな関係じゃないでしょ? きゃぁあ〜!」
柘榴は、両手で顔を隠しつつも、指の隙間から桃矢の股間の辺りをがっつり見ている。
桃矢も、彼女に見られていることを確認しながら、ズボンをスルリと下ろした。そして、男性用の真っ白なブリーフに手をかけ。それも、エエイ、アァアと一気にずり下ろした。
更衣室にはまだ他に誰もいない。桃矢と柘榴しかいない更衣室の中である。そこで小学6年生の桃矢が下半身丸出しになったところで、それほど問題はないはずだ。おそらく。いや、大丈夫であってほしい。
「うわぎゃ〜〜っ! タタタタ……タマがねぇ……! チ……チンも……!」
柘榴が、顕になった桃矢の股間に目を向けると、そこには彼女があると思っていたブツがなかった。
「とっ……桃矢。おっ、お前……女の子だったの?」
柘榴は衝撃の事実に驚きを隠せないでいた。それもそのはず。今までずっと男子だと思って接していたクラスメイトが、実は女の子だったのだ。
「……まぁ、そんな感じだ。あと……。ついでにあれだ。俺もまんごと同じで、あっ、あれか、お前もだな……。」
そう言いながら、桃矢はカバンの中から、自身の果物型変身装置である『ピーチ・エース』を取り出した。
その『ピーチ・エース』を見て、流石に納得したのか。いや、納得したというより、呆れたのか。柘榴は、はぁ〜〜。とため息に似た相槌を打った。
「そっ、そうか……。でも、魔法少女になれるなら、魔法の稽古も一緒にできる……よね。私も、練習相手が欲しかったんだ」
柘榴は、頑張って笑顔を作った。しかし、どこかぎこちない笑顔だった。
「それでさ、さっきの、返事だけどさ。付き合うとかそういうのは俺には無理だけど、親友ってのなら……。お願いします!」
桃矢は、柘榴に手を差し出した。
柘榴は、「うん!」と大きく頷いた。笑顔だったが、目に浮かべた涙はすでに頬を伝わっていた。
そして、柘榴は、桃矢が差し出した手をギュウと握り返した。
――――――――――――――
カッポーン!
その日の夜。柘榴は弟の玄武と一緒にお風呂に入っていた。この兄弟も、高村家の兄弟と同じように仲が良く、一緒にお風呂に入るのだ。まだ小学6年生のお姉ちゃんと小学4年生の弟である。ギリ大丈夫だろう。
「あれ……。お姉ちゃん、今日なんかあった? なんか悲しそうなんだけど……?」
玄武は姉のちょっとした異変にもすぐに気がついた。彼はお姉ちゃん大好きっ子なので、お姉ちゃんのことをいつも見ているのだ。そのため、いつもより元気がないことに気がついた。
「あっ……。うん、まぁ……。色々あってな」
弟に気がつかれる程に落ち込んでいたのかと自分でも驚いたが、それも悟られないように、彼女は玄武にニコリと笑顔を返す。
ドリュ!
どぴゅっっ!! ピュッ!
大好きなお姉ちゃんを悲しませた奴がいると知って、少し怒った玄武は、シャンプーを力強く出した。
「ええい! よくもお姉ちゃんを!」
そう言いながら、玄武は自身の頭をガシガシと洗う。力強く擦られた頭には勢いよく白い泡が出た。
そんな玄武の姿を見て可笑しくなった柘榴は、「ふふっ」と声を出して笑った。
ピュッ!
ニュピッ! ツゥ……。
ボディソープを出し。玄武の横で、柘榴も体を洗い始めた。
「ちなみにさ……。玄武はさぁ、好きな子とかいないの?」
小学6年生の女児。まだ幼さが残る体を白い泡で優しく包み、柘榴は体を洗う。横で頭を洗っている玄武に、ボソッとした声で問いかけた。
「いっ……いないよっ! いるわけないじゃん!」
すぐに、玄武は顔を真っ赤にさせて首を振った。白く泡だった頭に真っ赤な顔という可笑しな姿である。それを見て、柘榴は、またクスッと笑う。
「そうかぁ〜。そうだよな。まだ早いもんな……。」
すぐに俯いて頭の泡をお湯で流し始めた玄武を、チラリと横目に見て、柘榴は続けた。
「それでさぁ……。玄武に好きな子がいないってのはわかったんだけどさ。もしも玄武が、好きになる子がいるとしたら……、どんな子だと思う?」
その問いに、玄武は沈黙し、少し考えた。
「う〜ん。そうだな……。笑顔が可愛くて……。強い子かな。あと、自分の考えをちゃんと持ってる子」
「そっかぁ〜。」
柘榴は、体を洗いながらも、玄武の言葉を真剣に聞いた。
「ちなみにさぁ。その女の子って、魔法少女だったりする?」
この柘榴の問いに、玄武は「う、うん」と首を傾げ、肯定とも否定とも取れる曖昧な返事をした。
「でも、そういえばさぁ〜。私が知ってて、あんたも知ってる魔法少女って……。高村まんごちゃんしかいないと思うんだけど……? 他に誰かいたっけ?」
この二人は、玄武のクラスメイトの高村まんごが魔法少女であることは、知っているし、柘榴は彼女と戦ったこともある。しかし、玄武は、最近の記憶を無くしてしまったため、フルプリマンゴスチンに変身した後のまんごの姿を見た記憶はない。
「いるかもね……。僕が記憶を無くしてるってことはお医者さんから聞いたんだけどね。僕、夢で色々と見るんだ。その夢に、魔法少女が出てくる。それは覚えてる。でも、それが無くした時の記憶の欠片なのか、ただの夢なのかがわからなくて……。」
玄武は、『マンゴスチン・ハート』を食べた力の反動で、長い間眠りについていた。彼は、その間に長い夢も見ていたし、その夢の続きも、まだ、度々見ていた。
「ふ〜ん。そうなんだ。ちなみに、夢で見る魔法少女は、可愛いの?」
柘榴は、体を洗い終え、玄武と並んで湯船に入る。
「うん……。まぁ……可愛い……。」
照れながら言う玄武に、「その子が好きなの?」と柘榴は問う。
「いやっ! だから、好きじゃないって!!」
玄武は、大きな声で否定した。そして、大きく腕を動かしお湯をビシャリと撒き散らした。それを、柘榴は大きな笑顔で受け止める。
「そうかぁ〜。ごめんごめん……。そして、ごめんね……。」
柘榴は、しっかりと落ち着いた声で玄武に謝った。
「ん? お姉ちゃん? なんでそんなに謝るの?」
「いや。お姉ちゃん、すごく悪いことしちゃったなって思って……。色々とね、あんたにも謝らないといけないと思っただけだから」
柘榴は玄武に笑顔を投げかけた。
「そう……。あぁ、なんか、ちょっとのぼせちゃったよ、僕。お姉ちゃんが変な話ばかりするから……。」
そして2人は、仲良くお風呂を上がり、同じ部屋に向かった。高村兄弟と同じで、彼らの寝室も同じなのだ。仲のいい兄弟なのだ。
お風呂で温まった彼らは、すぐに眠りについた。小学生なので早く寝る。良い子なのである。
その夜、玄武は、夢を見ていた。先ほど彼が言っていた魔法少女が出てくる夢を……。そして、その夢の続きを……。
ドンっ!!
次回に続く!
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よっほ〜〜〜!! 私、高村まんご。小学4年生。魔法少女やってます!
なぜか〜。今回はまんごちゃんの出番はなし! まぁ、よくあることだからね。いいんだよ。いいんだよ。気にしてないんだから……。
え? タイトル?
ちゃんと、やられてたでしょ? ザクロちゃんが……。はははっ!
それにしても、いきなりだったよね〜? この伏線ってあったっけ?
いきなりの告白で、いきなりの撃沈。う〜ん。さすがの私も、同情しちゃうかな。
まぁ、この作品は『現実恋愛』じゃなくて、『純文学』作品だからね。この辺は省略するんだよっ! そういうこと。
で、みなさまお待ちかねの〜〜! お風呂シーン!
ひっさしぶりに肌色率が高かったね〜。テンション上がっちゃうねっ!
え? 玄武と言えば、黒い亀だよね……。
え? 黒い蛇……。う〜ん。どっちでもいいかな、この場合。
いやっ! 待って! 玄武くんは小学4年生だから! 流石に、いや。何のことだか、まんごちゃんにもわからないよぉ〜〜!
えぇ? 柘榴と言えば、赤い実だよね。ぱっくり割れて、赤いブツブツから真っ赤な汁が滲んでくる、あれだよ?
うん?
玄武の玄武が柘榴の柘榴にザク〜ってね!
って! おいっ!! だめっ! 下ネタはだめよっ! 健全なお風呂シーンを下ネタで汚さないでっ!
兄弟の愛を感じるいい話だったでしょ?
ねぇ〜。玄武くんの好きな子かぁ〜。ここから色々と発展していくんだろうな〜。たのしみーーー。
ということで、次回は、玄武くんの夢の中の話になるんだよねぇ〜。う〜ん。伏線というか、ストーリーが色々と複雑になってきたかなぁ〜?
ちゃんとついてきてね〜。でも、もしも、ついて来れなくなってきたら『今北産業』って言ってもらえれば、掻い摘んで3行で教えてあげるからね〜。ネット民と同じで、まんごちゃんも優しいんだよっ!
ということで、次回もサァビス! サァビスゥ!
次回!
魔法少女マンゴ☆スチン Reincarnation
『第百拾伍話 瞬間、心、果実』
だよっ!
絶対に読んでねっ!
マンゴスチン! カジュー! ヒャクパーセントー!




