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執着

 あの人と初めて会ったのは、偶然だった。


「聖花......!」


そう言われて、手を掴まれた。

女性の割には高い身長、中性的な顔立ち、どこか垢抜けた印象を受ける彼女は、私を永花では無く、聖花と呼んだ。



 私には、双子の姉がいる。

名前は清代 聖花。私と違って優しくておっとりとした可憐な人。


幼い頃、私たちの両親は離婚して別々の両親に育てられたため、姓は違っていたけれど、顔は瓜二つで、ほとんど見分けがつかなかった。


けれど、決定的に違ったのは家庭環境だろう。


母親に引き取られた私は、母子家庭で育った。

しかし、人を疑うことを知らず、騙されやすい母は悪質なホストにドハマリし、金を注ぎ込んだ。


そのせいで、うちは貧乏だった。

小学校も中学校も、そのせいでいじめのターゲットにされた。


転機が来たのは、高校に入った頃。

母が急死し、私は一人暮らしを始めた。


お金がたりなかった。

いくらバイトしても、学費を稼ぐので精一杯。

もううんざりだった。


そんなある日、クラスの金持ちの息子が私に告白してきた。

最初は断ろうと思ったけれど、生活の困窮具合を見透かされていたようで、お金の援助を引き合いに出された。


悩んだ末にそれを告白を承諾すると、その少年は本当に生活費を援助してくれた。


本当に嬉しかった。

見返りとして、することはさせられたが、それでもこの窮地から脱せられたことが嬉しかった。



一年後、その少年は私に飽きて捨てた。


また、お金が無くなってしまった。


もう一度、楽な生活をしたい。



お金持ちの男性に声をかけて、付き合って、お金を貰った。


それをずっと繰り返しているうちに、大学まで来た。学費も出してもらえた。


同時に三人と付き合っていたが、今考えるとかなりリスクの高いことをしていたな。




八ヶ月前、私は運命の出会いをした。


手を捕まれ、黒崎 響香は私のことを聖花と呼んだ。


双子の存在なんて知らなかったから、その時の私は困惑した。

なんとなく、私に似ている人と勘違いしているということはわかったけれど、それ以上のことはわからなかった。


でもそんなことはどうでも良かった。


彼女の瞳を見た瞬間、私は一目惚れしていたからだ。


彼女と少しでも長くいたい。

そう思って、私は聖花のフリをすることにした。


けれど、響香はすぐに私を見破った。

その直後に、聖花がやって来て、彼女と一緒に手を繋いで去っていった。


心の奥底が煮えたぎるマグマのように熱くなり、それと同時に、今までの交際とは全く違う、彼女への強い感情に気づいた。



それ以降、私は響香の周囲を尾行するようになった。

そして、双子の姉の存在を知った。


知れば知るほど、響香のことが恋しくなり、聖花の存在が疎ましくなっていった。


だから、私が響香の隣りにいるための計画を立てることにした。



大学内で写真部に所属していた、奥手そうな金持ちの息子。

しかも、かなり執着が激しい男を選び、優しくおっとりとした性格の”聖花”として付き合った。


そして、かなり親密度を上げて、執着するような頃合いになったら、整形外科へ行き、顔を整形した。

整形後の腫れが引くまでの三ヶ月程度は電話だけで男と付き合い、そして腫れが引いて来た時に別人として男と接触した。


「聖花が二股している」と言って近づき、昔私が付き合っていた男との写真を見せた。


「私は、智樹くんのことが好きです。だから、智樹くんを苦しめるこんな女許せません......!」とも言うと、男はそれを信じ込み、聖花への憎悪を積もらせた。


そして、私はアリバイ役として犯行に協力することにした。


聖花の方は、人助けのためならばとすぐに騙されるような人間だったので、適当な口実で犯行現場まで連れてきて、あとは智樹が殺害した。



今度は聖花がいなくなって悲しむ彩蛾の元へ行き、犯人を知っていると言って協力し、智樹を殺した。


これで、聖花を失った響香の隣を、共犯者の私が独占出来た。


まさしく、ハッピーエンドだ。


そのはず、だった──










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