執着
あの人と初めて会ったのは、偶然だった。
「聖花......!」
そう言われて、手を掴まれた。
女性の割には高い身長、中性的な顔立ち、どこか垢抜けた印象を受ける彼女は、私を永花では無く、聖花と呼んだ。
◆
私には、双子の姉がいる。
名前は清代 聖花。私と違って優しくておっとりとした可憐な人。
幼い頃、私たちの両親は離婚して別々の両親に育てられたため、姓は違っていたけれど、顔は瓜二つで、ほとんど見分けがつかなかった。
けれど、決定的に違ったのは家庭環境だろう。
母親に引き取られた私は、母子家庭で育った。
しかし、人を疑うことを知らず、騙されやすい母は悪質なホストにドハマリし、金を注ぎ込んだ。
そのせいで、うちは貧乏だった。
小学校も中学校も、そのせいでいじめのターゲットにされた。
転機が来たのは、高校に入った頃。
母が急死し、私は一人暮らしを始めた。
お金がたりなかった。
いくらバイトしても、学費を稼ぐので精一杯。
もううんざりだった。
そんなある日、クラスの金持ちの息子が私に告白してきた。
最初は断ろうと思ったけれど、生活の困窮具合を見透かされていたようで、お金の援助を引き合いに出された。
悩んだ末にそれを告白を承諾すると、その少年は本当に生活費を援助してくれた。
本当に嬉しかった。
見返りとして、することはさせられたが、それでもこの窮地から脱せられたことが嬉しかった。
一年後、その少年は私に飽きて捨てた。
また、お金が無くなってしまった。
もう一度、楽な生活をしたい。
お金持ちの男性に声をかけて、付き合って、お金を貰った。
それをずっと繰り返しているうちに、大学まで来た。学費も出してもらえた。
同時に三人と付き合っていたが、今考えるとかなりリスクの高いことをしていたな。
◆
八ヶ月前、私は運命の出会いをした。
手を捕まれ、黒崎 響香は私のことを聖花と呼んだ。
双子の存在なんて知らなかったから、その時の私は困惑した。
なんとなく、私に似ている人と勘違いしているということはわかったけれど、それ以上のことはわからなかった。
でもそんなことはどうでも良かった。
彼女の瞳を見た瞬間、私は一目惚れしていたからだ。
彼女と少しでも長くいたい。
そう思って、私は聖花のフリをすることにした。
けれど、響香はすぐに私を見破った。
その直後に、聖花がやって来て、彼女と一緒に手を繋いで去っていった。
心の奥底が煮えたぎるマグマのように熱くなり、それと同時に、今までの交際とは全く違う、彼女への強い感情に気づいた。
それ以降、私は響香の周囲を尾行するようになった。
そして、双子の姉の存在を知った。
知れば知るほど、響香のことが恋しくなり、聖花の存在が疎ましくなっていった。
だから、私が響香の隣りにいるための計画を立てることにした。
大学内で写真部に所属していた、奥手そうな金持ちの息子。
しかも、かなり執着が激しい男を選び、優しくおっとりとした性格の”聖花”として付き合った。
そして、かなり親密度を上げて、執着するような頃合いになったら、整形外科へ行き、顔を整形した。
整形後の腫れが引くまでの三ヶ月程度は電話だけで男と付き合い、そして腫れが引いて来た時に別人として男と接触した。
「聖花が二股している」と言って近づき、昔私が付き合っていた男との写真を見せた。
「私は、智樹くんのことが好きです。だから、智樹くんを苦しめるこんな女許せません......!」とも言うと、男はそれを信じ込み、聖花への憎悪を積もらせた。
そして、私はアリバイ役として犯行に協力することにした。
聖花の方は、人助けのためならばとすぐに騙されるような人間だったので、適当な口実で犯行現場まで連れてきて、あとは智樹が殺害した。
今度は聖花がいなくなって悲しむ彩蛾の元へ行き、犯人を知っていると言って協力し、智樹を殺した。
これで、聖花を失った響香の隣を、共犯者の私が独占出来た。
まさしく、ハッピーエンドだ。
そのはず、だった──




