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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
4 俺たちの戦いはこれからだ

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185 ベッキーの憂鬱

約束の10日目だった昨日、おじさんたちは帰って来ませんでした


「きっと遊び呆けて遅刻してるんだよ」

「おじさんたちならありえるよ」

「うん、そうかもね」


トムとハックが気をつかってくれます

たしかにおじさんたちならありえそう


「でも料理どうしよう」


ケーキとパンは問題ないしスープは温め直せるからいいとして

お肉は焼き直してもいいけどきっと硬いままだろうし味も落ちちゃう

でももったいないから調味料を足して焼き直そう


「もったいないから今朝の朝食はこれを食べましょ」


「「うん」」


ケーキは美味しいけどおじさんたちと食べたかったな

温め直したスープも美味しい


でもお肉が硬くて切りにくいし食べにくい

トムとハックも苦戦していました


「ごめん、もったいないけど捨てよう」


食べ物を捨てるなんて今までしたことなかった

でも気持ちがどんどん沈んでいくので捨てることにします

まあその捨てるという行為自体でさらに落ち込みそうなんだけど

辛くて泣きそうになってきました


「ならばその肉、我らがいただこう」

「このぐらいの硬さなら僕らの牙なら柔らかい方だよ♪」

「ちょうど肉が食いたかったからよこせ!」


ブルーたちがお肉をかっさらっていきました

たしかに三人の牙なら余裕で噛み千切れるよね

よかった、無駄にならなくて


(まったくケンタはなにをしておるのだ!)

(主様も忘れちゃっているのかな)

(ガイド精霊のレッドやアンナがいながら体たらく過ぎるだろ)

(念話を試したが通じぬ、かなり離れた場所にいるようだ)

(念話の範囲は半径10キロ以内だからな)

(とにかく戻って来るまでベッキーたちを悲しませないようにしないとね)


(((早く帰って来い!)))




朝食の後片付けをして仕事へ行きます

今日も仕事なのです


「おはようベッキーちゃん」

「おはようございますベルさん」


「元気ないわね、もしかして寝不足?

 ケンタさんたちのことだから夜遅くに帰って来たんでしょ」


「いえ、じつは・・・」


おじさんたちが帰っていないことをベルさんに伝えます


「きっと遊び呆けて遅刻してるのね」


トムとハックと同じことを言っています

これがおじさんたちの正しい評価なのでしょう


そしてこの日も帰って来ませんでした




翌日も仕事に行きます


たんに遅刻しているだけなんだよね?

それともなにかあったのかな・・・


イヤだな、お父さんのようになったら・・・

どんどん不安になってきます


ベルさんや冒険者さんたちが優しく声をかけてくれます

ダメだな、落ち込んでいたらまわりに心配をかけちゃう

しっかりしないと・・・


(なにやっているのよケンタさんたち!)


結局この日も帰って来ませんでした




翌日、今日はお休みです


なにもしたくないけど動かないとどんどん気持ちが沈みます

だから掃除や買い出しなどいつものようにやります


「はい、1300円だよ」

「あ・・・」

「どうしたんだいベッキーちゃん?」

「ごめんなさい、サイフ忘れてきちゃいました」

「珍しいね、いいよ次来たときに払っておくれ」

「いえ、取ってきます」

「いいのに」


わたしは急いで屋敷へ戻りサイフを取ってきます

支払いを済ませてトボトボと屋敷へ帰ります


(まったくあの男はどこほっつき歩いているんだか)


今日も帰って来ませんでした・・・




翌日、身体が重いけど頑張って動かします


ガシャン! 「あ・・・」


朝食後の片付け中にお皿を落としてしまいました


「姉ちゃん、僕たちがやるから座ってなよ」

「仕事も休んだら?」


トムとハックが心配そうにしています

二人だって不安なのに、ごめんね、ダメなお姉ちゃんで・・・


「ううん、仕事は行くよ」


準備をして屋敷を出ます


「ベッキーちゃん、いってらっしゃい」

「行ってきます」


領主様が派遣してくれている私兵さんたちがいつものように声をかけてくれます

おじさんたちが帰って来たらすぐに伝えてくれると言ってくれています


((早く帰って来いよ、かわいそうだろ!))




冒険者ギルドの飲食スペースでお仕事です

注文を取ったり料理を運んだりします


「ベッキーちゃん、それ頼んでないよ」

「おーい、それは俺のだよベッキーちゃん」

「あ、ごめんなさい・・・」


運ぶテーブルを間違えました

今日は注文も聞き間違えちゃうしダメダメです


(かなり落ち込んでいるなあ)

(ケンタの野郎、なにやってるんだ!)

(戻って来たらとっちめてやる)

(でも帰って来れない状況になっているんじゃないだろうな)

(それだと尚更ヤバいよな)


「ベッキーちゃん、少し休憩しなさい」

「ベルさん・・・」


ベルさんがわたしを無理矢理イスに座らせます

みんなに心配かけてダメダメです


(ケンタさん、無事なのかな・・・)


ベルさんも不安そうでした

そうだよね、心配しているのはわたしだけじゃないものね


仕事は15時までで今は14時を過ぎたところです

もうすぐ仕事も終わって帰ります


きっと今日も帰っていないんだろうな・・・


そんなことを思っていたらギルドに私兵さんの一人がやって来ました


「ベッキーちゃん、ベルさん、ケンタたちが帰って来ました!」


その言葉に一瞬理解が追いつきませんでした


「・・・帰って、来たの?」

「ベッキーちゃん、ああ、帰って来たよあいつら」


「ベッキーちゃん、行くわよ!」

「ベルさん、でもまだ仕事が」


「あと30分ちょっとでしょ、それぐらい早上がりでいいわ」

「でも・・・」


「おや、時計が遅れていますね、すでに15時を過ぎていますよ」

「キットさん?」


ギルマスのキットさんが自分の時計を見て15時を過ぎていると言います

本当なのでしょうか?


「さあ、早くお帰りなさい」

「わたしも一緒に行きますね」

「ええ、ベルさんも15時までですから構いませんよ」


ニッコリ笑うキットさん

でもなんだかちょっと恐かったです


(やっと帰って来ましたか、まったくなにをしていたのやら)


「ベッキーちゃん、行きましょう」

「は、はい!」


やっと帰って来た、無事だったんだよね

もしかして大ケガとかしていないよね?

まだ心配はあるけど帰って来てくれたことが嬉しかった


いろんな気持ちがグルグルしています

ベルさんと一緒に屋敷へ急ぎます


早く会いたい・・・

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