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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
4 俺たちの戦いはこれからだ

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182/204

182 ケンタとアキラ

数日ハジメノ街に滞在することにした俺たち

アンナはセンと姉妹の時間を楽しんでいる

ベンケイさんとアオイくんはサリーと一緒に討伐を楽しんでいた


サクラさんは今日もまだ寝ている

昼食に起きてまた眠るという怠惰担当だ

まあ俺もダラダラ過ごしているから同類だけどな


アキラとエヴァルスさんは本日お出かけ中

二人とも宿屋でくつろいだりもしている

だが俺たちとは違って出かけたりもする


「ケンタさん」

「アキラ?」


お昼ちょっと前にアキラとエヴァルスさんが戻って来た

出かけたらいつも夕刻前まで戻って来なかったのにどうしたんだ?


「珍しいな、今日の昼メシは宿屋で食べるのか?」

「いえ、ケンタさんとサクラさんを誘いに来たんです」

「どこに?」


「覚えていませんか? ハジメノ街で10月限定のやつ」

「ゲーム時代のこと?」

「はい」


ハジメノ街、10月限定、たしか・・・ アレか!


「そうか、現実でもやってるのかアレ」

「やってましたよ♪ だから誘いに来たんです」

「よし行こう!」


「サクラさんは?」

「眠り姫はまだ夢の中だ」

「じゃしょうがないですね、起こすのもかわいそうですし」


サクラさんには悪いが置いていく

ぐーすか寝てるあなたが悪いのでござる


俺たちはアレをやっているお店へ向かった




「本当だ、ちゃんとのぼりもある」


俺たちが来た店はガミラス亭という名の小ぢんまりした食堂だ

店の前にA3サイズぐらいののぼりが飾ってある


そののぼりには 『冷やし中華はじめました』 と書かれていた


ハジメノ街のこの店でしか冷やし中華を出していなかった

しかも10月限定なので他の月では食べられない

現実だから他のところにもあるかも知れないがお目にかかっていない


「すっかり忘れていたよ、教えてくれてありがとうなアキラ」

「10月限定ですからね、プレイヤー同士で共有しないと♪」


こいつは気配りもできて本当に良い奴だ、そりゃハーレム築けるはずだわ




席に着き三人分冷やし中華を注文する

待つこと5分で運ばれてくる


具材は卵、ハム、キュウリ、トマト、もやし

タレはごまダレで定番のものだ


俺とアキラは久々の冷やし中華を堪能する

エヴァルスさんは初めて食べたそうだが気に入ってくれた


「このような食べ物があったのですね」

「気に入ったみたいだねエヴァ」

「はい♪」


くぅっ、独り身の前でいちゃつくな!


「アキラはモテるんだな、うらやましい」

「え、ケンタさんだってそうでしょ?」


おいおい、イヤミかよ


「俺はモテたことないぞ」


いや、少しだけモテてるかな?

リディアとベルさんから告白されてるし


「なるほど、気づいていないようですよアキラさま」

「そのようだねエヴァ」


アキラとエヴァルスさんがマジですかというような顔で俺を見てる

なんだそのリアクションは


「アンケートでハーレムしたいですかというのがありましたよね

 ケンタさんはどう答えましたか? 俺はしたいに決まっていると答えました」


「そりゃまあ、俺もしたいとは答えたさ」

「こっちに来て恋人にしたい相手とかは見つからなかったんですか?」


「いないことはないけど現実だからな、色々と考えるんだよ」


「そんな必要ないでしょ、自由に恋愛してハーレム築きましょうよ

 もちろん相手が好きになってくれないとダメだけど

 お互いが好き同士ならなんの問題ありませんよ」


こいつ、恋愛上級者かよ!

さすが、すでにハーレムを築いているだけはあるぜ


「そんな簡単じゃないんだよ、おまえのようにはできねえよ

 相手との年齢差とか、倫理的にとか、色々あるんだよ

 年齢差がなくても本当に自分なんかが相手でいいのかとかさ」


リディアは14歳、あっちじゃ逮捕されちゃうよ

ベルさんは大人だけど俺が釣り合わなすぎる

だから答えが出ない


「そういう相手から告白でもされましたか?」

「ふおっ!?」


こいつ鋭いな


「迷っているなら話してみてくださいよ

 なにか力になれるかも知れませんから」


まあハーレムの大先輩だからな

アキラたちとはずっといるわけではない、だから話すことにした


14歳の男爵令嬢からアプローチされていること

ギルド職員の女性から告白されたこと

二人にはまだ答えを保留にしていることを簡単に話した


「なんだ、特に問題ないじゃないですか」

「そうですね、ケンタさまは考え過ぎるお方のようですね」


エヴァルスさんにまで言われてしまった


「いやいや問題あるだろ、相手は14歳だぞ?

 職員の女性は俺が釣り合わないし」


「センは13歳でサリーは16歳だけど俺は受け入れてますよ

 エヴァは50歳だけど見た目が幼女、でも俺は受け入れていますよ」


「おまえは24歳だからまだ歳の差がないだろ、俺は31だぞ」

「そこです!」

「どこだよ!」


「ケンタさん、元の世界とこの世界は違う世界なんですよ」

「そんなの知ってるよ」


「年齢とか倫理とか、それは元の世界の話でしょ?

 こっちで14歳と付き合ったからといって逮捕なんかされません

 そもそもこの世界の成人は15歳、一年後にはもう大人です」


それもわかってるよ


「それにその子は男爵令嬢、貴族なんですよね

 この世界は平民貴族問わず多夫多妻が認められています

 貴族ならそれこそ当たり前なことです」


多夫多妻が認められていても平民でそういう家庭はごく(まれ)

現実的に経済面で養えないからな、だから貴族しかそういうのはいない


「相手は貴族でも俺は平民だぞ、当たり前ではないと思うぞ」

「ケンタさんが平民でも養えるでしょ、ケンタさんの経済力なら」

「うぐ」


そりゃ俺の財力は普通の平民とは違うけどな


「次に職員の女性ですけど釣り合わないとか言いましたよね」

「そうだよ、彼女は仕事もできるし人柄も良いし」


「釣り合うとか釣り合わないとか無意味なこと考え過ぎですよ」

「無意味っておまえ」


「その人はケンタさんを選んでくれたんです

 ケンタさんが自身をどう評価していようが関係ないんです

 相手はケンタさんが自分に必要だから告白したんだ

 それだけでその人にとってケンタさんは釣り合う相手なんですよ」


「あ・・・」


ベルさんが告白してくれたときのことを思い出した


『あなたに自信がないのはわたしにはどうすることもできません

 でも、わたしの気持ちを否定しないで下さいませんか?

 わたしの気持ちはあなたの自信のあるなしなんて関係ありません!

 わたしはわたしの気持ちを素直に告げているだけです』


俺自身がどうとかじゃない、ベルさん自身が俺を選んでくれたんだ

なんだろうな、自分の考えばかりに固執しているな俺は


元の世界で30年生きてきた、だからあっちの常識とかに囚われすぎている

そういやベンケイさんにも言われたな


『もうこの世界の住人なんだから気にしなくていいんじゃね?』


本当はもう俺もわかっている、でもなかなか抜け出せない

アキラはすごいな、この世界にこんなにも順応しているなんて


「アキラは悩んだり迷ったりしなかったのか?

 お前だって元の世界で24年間生きてきただろ

 三人も恋人作るなんて相手に罪悪感とか持たなかったのか」


「あっちはあっち、こっちはこっちですよ

 まったく罪悪感なんてありません」


迷いなく即答された、ほんとすげぇなお前


「元の世界ならたしかに三股なんてクズ野郎だと思いますけどね

 そもそもあっちじゃ彼女なんて夢のまた夢でしたし」


「そうなのか? なんかお前モテそうなんだけど」

「モテませんでしたよ、だって陰キャですし」


「お前のどこが陰キャなんだよ!」


「ああ、今の自分はもう陰キャじゃないかもですね

 でも元の世界ではコミュ障でボッチでしたから」


想像がつかん


「こっちに来たからってそうそう性格とかは変化しないだろ

 なんで真逆になってるんだよ」


「俺、ラノベとか漫画とか大好きなんですよ」

「いやお前の趣味とか聞いてないし」


「本当は彼女とか欲しいけど話しかけるのもできないんですよ

 だから作品の主人公を自分に置き換えて妄想してました」


それはそれで悲しいものがあるな


「いつか異世界行けたらいいなあとか思ってました

 異世界行ったときのためにとイメトレしてたんですよ

 もちろんそんなことありえないともわかっていましたよ

 それでも夢見るぐらいはいいじゃないですか」


その夢が現実となったわけだが


「この世界に飛ばされて俺は大喜びしましたよ♪

 これで俺もハーレム系主人公と同じになれるってね」


「だから陰キャから急に変われんだろって」


「変われますよ、あっちの俺はあっちの俺

 ここは異世界、元の俺を誰も知らないんです

 異世界転移だけど生まれ変わったようなものです

 新しい人生に元の人生を重ねる必要はないでしょ

 長年のイメトレの成果がついに役立つときが来たのです!

 そう考えると心が解放されて今の俺になれたんです」


元は陰キャだったのかも知れない、でもこいつ、元々心が強いな

そうでなければガラリと変われるわけがない


「やっぱすごいなアキラは」

「そんなことはないですよ、でもありがとうございます♪」


「だけどエヴァルスさんは自分以外にも恋人がいるとか嫌じゃなかったのか?

 センとサリーだって嫌がらなかったのか」


「わたしはアキラさまに救われました

 お側にいさせていただけるだけで幸せなのです」


「センは俺がハーレム願望あるのはアンケートで知っていますし

 サリーはエヴァと同じで受け入れてくれています」


「お前らやっぱすごいな」

「ケンタさんだってその二人を受け入れたらいいじゃないですか」


「ベルさんはまだしもリディアはやっぱり年齢のことがあるからな」

「まだそここだわってるんですか」

「そりゃ31男と14少女だぞ、事案だろ」


「ケンタさん、一つ考えを改めましょう」

「なんだ?」


「さっきも言ったようにこの世界でそれは事案になりません

 こっちで14歳と付き合ったからといって問題ありません

 もちろんお互いが好き合っている場合に限りですが」


「それはたしかに聞いたけどさ」


「ケンタさんは相手が成人していないと恋人にできないと言っていましたよね」

「ああ」


「別に成人していなくても恋人になるぐらいはいいじゃないですか

 結婚とかならそのこだわりは仕方がないとは思いますけどね」


そう言われたらたしかにそうかもだな


「そもそも付き合っても成人するまで手を出さなければいいんですよ!

 健全なお付き合いなら年齢なんて関係ないでしょ」


その考えに俺は至らなかった

俺は大人だからどうしても恋人というとそういう関係のことを考えてしまう

たしかに成人するまで健全な付き合いをすればいいだけだ

アキラの言うとおり年齢にこだわる必要はどこにもない

俺の脳みそは柔軟性に欠けていた


「頭固いなあ俺・・・」

「石頭なんですか?」


「いやお前、話の流れでわかるだろ

 物理的に俺の頭が固いってことじゃないよ」


「あ、そういうことですか、すみません」


まったくこいつは、大した奴だぜ


「ありがとうなアキラ、心がすっきりしたよ」

「気持ちの整理が付きましたか?」


「まだ完全ではないけど一応な」

「それなら口出しした甲斐がありました♪」


ベルさんとリディアのこと、改めて考えよう

まあまだすぐに答えは出ないだろう

だけど心の(もや)が晴れたからきっと前に進める

本当にありがとうアキラ、感謝する

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