181 ベンケイの想い
アンナさんとセンさんのために数日ハジメノ街に滞在することになりました
二人は毎日楽しそうにお出かけしています
ケンタ殿とサクラ殿はあいかわらずの引きこもり
アキラさんとエヴァルスさんは出かけたり宿屋でくつろいだりしています
わたしとベンケイ殿はのんびり討伐です
稼ぐのが目的ではないのでのんびりなのです
それに今回はサリーさんも加わっています
サリーさんはなんだかわたしに近い性格のようです
最初は遠慮しがちに一緒に行っていいですかと聞いてきました
もちろん歓迎します
討伐ではベンケイ殿とわたしが前に出て戦います
後方から魔法でサリーさんが援護してくれます
炎の矢で敵を射抜いて隙を作ってくれるので倒しやすくなりました
制御が上手く相手の動きを封じるように当ててくれます
毎日一緒に討伐したおかげでわたしたちは仲良くなりました
「サリーのおかげで今日もヌルゲーだったぜ♪」
「ぬるげー、ってなんですか?」
「簡単で楽だったということですよサリーさん」
「なるほど、そういえばアキラさんも言っていたことがあったような」
討伐はいつも昼までやって現場で昼食を食べています
今日も討伐を終えて三人でお昼ごはんです
話題はその日の討伐のこととか仲間のこととかが多いです
そしてサリーさんが聞いてきました
「みなさんのところはわたしたちのパーティーとは違うのでしょうか?」
「違うとは?」
「わたしたちと同じようにリーダーと恋人関係じゃないのですか?」
「ちちち、違いますでござるですよ!」
「違うな」
わたしは慌ててしまいましたがベンケイ殿は落ち着いています
「でもリーダーのケンタさん以外は女性だけですし
みなさんケンタさんへ好意を持っているように見えますよ
それでただの仲間とは思えなかったので聞いちゃいました
不躾なこと言ってごめんなさい」
わたしたちが否定したため申し訳なさそうに謝るサリーさん
「謝んなくていいよ、好意を持っているのは事実だしな
アオイなんかガキの頃からの片想いだし」
「んぎゃあっ!? べ、ベンケイどのーーーっ!」
バラさないで! というかなぜ知っているの!?
「なぜ知っているって顔をすんな、見てりゃバレバレだぞアオイ」
「そ、そんなにわかりやすかったでござるか?」
「そりゃもう誰が見てもわかる、ケンタ以外はな」
「ケンタ殿にまでわかられたら切腹するしかないでござるよ・・・」
「そうですね、アオイさんがケンタさんのこと好きなのは見ててわかりました」
「サリーさんまで・・・」
「アンナさんとサクラさんもおそらくケンタさんのこと好きだと思いますよ」
「アンナさんはガイド精霊でパートナーだから嫌ってはいないでござるよ
サクラ殿はからかって遊んでいるだけかと思うでござる」
サリーさんがポカンとして、ベンケイ殿がやれやれと苦笑している
なぜそんんな反応をするでござるか?
「アンナさんはケンタさんのことを愛していますよ
ただ表に出さないようにしてはいますけど」
え、そうなの? 全然気づかなかったでござる
「サクラさんは照れ隠しでからかっているだけのようです」
なんでそんなことわかるの?
サリーさん、もしかして恋愛上級者?
「観察眼がすごいなサリー、おそらくそれで合ってるぜ」
ベンケイ殿が感心している
ということは本当にアンナさんとサクラ殿もケンタ殿のことを・・・
「ライバルが多くて大変だなアオイ、頑張れよ♪」
「くぅっ、ベンケイどのぉ~」
一人だけ枠外だからって楽しんでいるでござるな!
「あれ? ベンケイさんもケンタさんのこと愛していますよね?」
サリーさん、さすがにそれはないと思うでござる
「どうしてそう思った?」
ベンケイ殿が探るように聞く
「ケンタさんとの絆が一番強いのがベンケイさんのようだったし
ケンタさん自身もベンケイさんとは心の距離が近いようだったから」
そりゃ二人は最高で最強の相棒だから絆はわたしたちより強いでござる
「面白れぇなサリーは、たしかに私とケンタは最高で最強の相棒だ
だが愛だとなぜ思った、絆が強いだけとは思わなかったのか?」
うんうん、そうでござるよ
「むしろ愛情がたっぷり注がれた絆だと見えたのですが
違っていたのならごめんなさい、わたしの勝手な憶測でしたね」
ほんと、そうでござるよサリーさん
「謝んなくていいよ、正解だから」
んんん~~~? 正解? 何が?
ベンケイ殿の絆は愛情? んん~???
「サリーの読みどおり、私はケンタを恋愛対象として好きだぜ」
「あ、やっぱりですか♪」
シコウテイシデゴザル、シバラクオマチクダサイデゴザル・・・
「おいアオイ、しっかりしろ」
「アオイさん大丈夫?」
「はぅわっ!?」
あまりに予想外なベンケイ殿の言葉に魂が抜けていたでござる
「べ、ベンケイ殿、今のは本当でござるか?」
「本当だ、だが安心しろ」
安心できる要素がないでござる
美人のサクラ殿、可愛くて積極的なリディアちゃん
さらに絆で結ばれているベンケイ殿まで
もう拙者の割り込む隙が見当たらないでござるよ?
「私はケンタとはそういう関係にはなれないから安心しろ」
「うえっ?」
「なれないってどういうことですかベンケイさん
あれだけ絆が強いお二人ですから、両想いと変わらないじゃないですか」
サリーさんの言うとおりでござる
「私はあいつの好みを知っているからな
ふわっとした感じの可愛らしいのがタイプなんだよケンタは
あとは妹系とか大人しめな子があいつの好みだ
全部私とは真逆だ、だから私は対象外なんだよ」
ゲーム時代、ベンケイ殿を男だとケンタ殿は思っていた
ベンケイ殿も男として振る舞っていた
男同士の話として女性の好みをベンケイ殿に語っていたらしい
「私はケンタを愛している、だけどあいつにはそれを伝える気はない
対象外の私に告られても困らせるだけだし、悩ませたくない
なによりこの関係性が壊れるのも嫌だからな
私はケンタの最高で最強の相棒のままでそばにいるつもりだ」
「ベンケイ殿・・・」
「ベンケイさん・・・」
やっぱりベンケイさんは強い
わたしなんかあれこれ悩んで告白もできない
それに守られてばかりで役にも立てていない
「だからアオイ、おまえはケンタの守備範囲内だから頑張れ
私はケンタを幸せにしてくれる奴ならくっついてほしい
サクラ、リディア、きっと他にも今後現れるだろう
そこにお前も加われアオイ、私は応援するぜ♪」
ベンケイ殿だってケンタ殿と結ばれたいはず
それでも強い絆で結ばれた相棒でいることを選んだ
そんな人に応援されてこのままうじうじしていちゃダメだ
「ありがとうベンケイ殿、頑張るでござる」
わたしは一歩ずつでも前進しようと誓った
「おう、頑張れ♪」
晴れ晴れとした笑顔で応援してくれたベンケイ殿
ベンケイ殿の想いも一緒に抱えてわたしは前に進もう
なにより自分自身のために




