3-3-4 撤回、イケメンやっぱり怖い ②
本日2話目の投稿です。
な、なんでバレ……ギルドからって感じじゃない、な。ちらっとピルピルさんを見たら、白々しく口笛を吹いてる!
そういや、ギルドから依頼を受けて俺についてるって言ってた。教会で脅されたときは時の天秤のことを出してなかったけど、そりゃ知ってるか。
くそ……俺も絶対固定の魔法を使いこなせるようになってやる!
「そうだよ。俺しか使えないおまじないつきなんだからっ」
「うん、それは良い。大事にしろ」
「も、もちろんそのつもりだよ」
最初にお披露目したアイテムがパンツなのはどうかと思うけど、こうやって普通に感心してもらえるのはうれしい。
もしこの人たちにまで「よこせ」って言われたら、正直どうしようと途方に暮れてた。
「あのさ…。今さらだけど、この鞄って、作るのそんなに難しいの?」
この鞄というかアイテムボックスを持ってるってだけで、あんな目に遭ったんだ。
そうなんだろうとは思うんだけど、いまいちなにがどう難しいのかを俺は理解できていない。
特にこれを欲しがる様子のない二人になら聞いても大丈夫な気がして尋ねると、ピルピルさんは真面目な顔でちらっとルーファスネイトを見て、ルーファスネイトが答えてくれた。
「うん、難しいな」
「ルー、足りてないぞー」
突っ込み、ありがとうございます!
この人はいちいち言葉が足りないんだよなあ。
「ううん…まず、重量無効付与の鞄と、収納付与の鞄は、俺たちも持っている」
「え、そうなんだ」
「そうだぞー。月光と同じSランクパーティのリベリオンと、あとは個人でやってる連中にはそれなりに所持者がいるな。少年、一応言っておくが、こういう付与が一つでもついてるアイテムは、それなりに高級品だからな?」
「は、はい」
ピルピルさんが補足してくれたところで、ルーファスネイトが大真面目に続けてくれた。
「しかしな、こういった鞄には実は、あんまりものが入らんのだ」
「あ、わかった。重量無効の方は体積は変わらないし、収納だけの方は重量がそのまま増えていくから、持てる重さには限りがあるってことだよね」
「うん。収納だけでも持てる量は増えるから便利ではあるのだが、鞄の紐なり底なりがもたんからなあ。大体ヴィントが受け持つのだが、いつもすぐ壊れるとぼやいているな」
…待って。こっちの鞄って、かなり丈夫そうだよね? 特に冒険者が持つものはしっかりした革製のものだろうし。あれがちぎれるってよっぽどでは!?
「どうした?」
「あー、えっと…。鞄が弱いのか、ヴィントが力持ちなのかどっちかなって」
ことりと首をかしげたルーファスネイトに答えると、ピルピルさんが「どっちもだな」と頷いた。
「それでも、貴重なものだ。この加護を付与できる者も限られている。魔族ならそうとは限らんだろうが、人族ではセリカの魔女、魔道士、ほかの種族になると特別に魔力が高い者ぐらいだろうな。収納魔法を付与するだけでも熟練の魔術師の魔力を半分、重量無効も同じだが、重ねがけになるとその負荷は倍にもなろう」
「しかもだ。魔法付与はかけたあとにすぐさま定着させなきゃならん。しかし、定着しちまったあとはもうほかの付与は重ねて掛けられないときた。じゃあどうするか?」
「ど、どうするの?」
思わずパンツをはいたまま止まってたら、またヴィントがそわそわとこっちに来ようとして、マリーベルが止めてくれてる。
とりあえず襟なしの綿っぽいシャツを羽織って続きを待つと、ルーファスネイトがシャツのトングをもたもたと手伝いながら説明してくれた。
「収納魔法と重量無効を二人で同時に掛けられたら一番早いが、どちらも糸の一本一本に至るまで同じ強さと同じ早さで行う必要がある。これは人の子には無理だ。あとは一つを掛けた直後に続けてもう一つを掛ける。理論上は、特に優れた魔女、ないし魔道士…賢者であれば、可能だろうな」
「そう、ここまでは! 問題は、おまえの鞄にはさらに時の天秤までかかってるってことさ。これは収納と重量無効よりはるかに多い魔力が必要だ。これ一つだけならまあなんとかなるだろうが、現実問題として、人の子にその三重付与は不可能だ。できるとすれば、魔王か、女神かってところか」
ど、どうしよう……。
「収納と重量無効の二重付与のマジックアイテムってだけでも、おまえはこんな目に遭ったのにだぞ」
ピルピルさんの深いブルーアイに、ルーファスネイトのすべてをのぞき込まれそうな夜空色の目に見られて、自分の顔から血の気が引くのを感じる。
ソロモン・コアのことを話すか? 俺が人生二周目だってことも?
「……ぁ……」
実は、って言おうとしたんだ。
でも声が出ない。
なんとか声を出そうとしてもダメだ。
このことに関しては、絶対の禁忌として、俺の魂まで縛り付ける強烈な呪いがかかっていた。
疑われても仕方ないよな……。話すことは諦めて、俺はぎこちなく口を押さえて俯く。
「サトル、俺はおまえのそれを作った者は、おまえの祖母ではないと思っている」
ルーファスネイトのおっとりした声に、死刑宣告された気がしてびくっと肩が揺れる。




