09 王女からの勧誘
声をかけてきたのは精霊術士のリュシアンだった。
精霊の愛し子と言われているだけあってお美しい、と失礼にならない程度にリュシアンの顔を見上げると、リュシアンがティレーリアの瞳を見返して、そして僅かに目を瞠る。
リュシアンのその様子にティレーリアは首を傾げて……そして掃除の時に煤や埃でもついたのだろうかと、慌てて顔をこすったり髪や服を叩いた。
そんなティレーリアの様子に、今度はリュシアンが慌てたように手を振る。
「すみません、違います。汚れているとかではなくて……君の魔力が素晴らしいな、と」
「魔力、が?」
手を止めてティレーリアがこてんと首を傾げたところに、後ろから大きな身体の男性が二人、出てくる。
「何だリュシアン、こんなところで女の子口説いてんのか?」
「お前と一緒にするなって」
わははと豪快に笑っているのが傭兵のバルドルフ、
その隣でバルドルフに突っ込んでいるのが勇者のベルトール。
「違いますよ。 確かに彼女は村に置いておくには惜しい魔力ではありますが……」
呆れたようにそう返すリュシアンの言葉に、あら、と涼やかな声が続く。
ティレーリアは村長の家の玄関が埋まらないようにそっと横に移動して、家の前を空けた。
「リュシアンが自分から女の子に声をかけるなんて珍しいわね。明日は槍が降るかしら」
「でも確かに、勧誘したくなる魔力ではあるわ」
優し気な、けれどどこか茶目っ気も感じる可愛らしい少女が楽しそうに笑いながら出てきて、その後ろから凛とした、少し勝気そうな瞳の――こちらもまだ少女の域を出ていない、恐らくはティレーリアと同じ年頃だろう女性が二人現れる。
魔法士のエレナと、そして王女・コーデリアだ。
「あなた、魔法はどの程度使えて?」
「は……はい。人並みではありますが……癒しと、水と風を」
「と彼女は謙遜しますがね。癒しについては村一番。人並み以上でございますよ」
ほっほと笑いながら最後に出てきた村長がティレーリアの隣に並ぶ。
身内びいきも甚だしいわ、とティレーリアは頬を染めて、抗議の意味を含めて村長の背中を軽くつつく。
「村で一番でも、外に出ればきっと普通です」
「あら。普通、ではないのは確かよ」
ティレーリアの正面にやってきたコーデリアにじぃっと見つめられて、ティレーリアはどうして良いか分からず、恥ずかしそうに俯く。
「……この為だったのかしら?」
ぽつりと呟いたコーデリアの言葉を聞き取ることが出来ず、ティレーリアは首を傾げる。
コーデリアはそんなティレーリアの両手を取った。
「ねぇ、貴女。わたくし達の魔王討伐が終わったら、一緒に王都へ来ない?」
「――は、い?」




