08 勇者一行
剣に選ばれし勇者 ベルトール、
現王の一人娘、王女であり魔法士でもある コーデリア、
コーデリアが攻撃魔法が得意なのに対し、守りの魔法が得意な魔法士 エレナ、
伝説と謳われる傭兵 バルドルフ、
精霊の愛し子とまで言われている精霊術師 リュシアン
それが『勇者一行』の五人。
自分の住む村が魔王討伐前の最終経由地に選ばれたのは幸運な事なのかもしれないけれど……。
「事前通達って、ないのね」
ティレーリアは嘆息しながら、ほうきや布巾、そしてバケツを手に勇者一行が泊まる予定の家へと向かっていた。
勇者一行が突然村を訪れ、流石にそんな方々を野宿させるわけにもいくまいと、村長が村に数軒ある空き家の一つを使ってくださいと進言した。
けれど空き家だったのだから、当然家の中は塵やら埃やらがたっぷりと積もっている。
数人の若者が村長から空き家の掃除を頼まれて、ティレーリアもその一人に選ばれた。
手分けして各々が懸命に掃いたり拭いたり磨いたりして、夕方には何とか勇者ご一行様に寝泊まりして貰える状態になった家での掃除道具やゴミの片づけを他の人たちに任せて、ティレーリアは晩餐の準備を頼まれたいくつかの家に空き家の掃除が終わった旨を伝えて回って、そして急いで村長の家へと向かった。
「村長さん、お家の準備が整いました」
村長の家でくつろいで……とはとても言えない、そこまで広くはない部屋にぎゅっと人が集まっている光景に、ティレーリアは苦笑を零す。
「お待たせいたしました。ご案内しますね」
一行に声をかけて、彼らが荷物を手に村長の家から出てくるまでの僅かな間、先に外へと出たティレーリアはぼんやりと空を見つめる。
綺麗な夕焼けだった。
とても、間もなく魔王討伐が行われるなんて思えないくらいに。
あの人達は明日、森の向こうにある魔王の城とやらに辿り着くのだろうか。
そこで、一体どのような事が起こるのだろう。
恐ろしい思いをするのか、
それとも易々と魔王討伐を果たしてしまうのか。
ここ数日村人の間で話題だった事を、当人達を目の前にして改めて考える。
「何だか、色々と申し訳ありません」
ふいに背後からかかった声に、ぼんやりと空を眺めていて人が出てきた事に気付いていなかったティレーリアは、僅かに肩を跳ねさせる。
慌てて振り返ると、優し気な、ともすれば女性と見間違えそうな綺麗な男性が立っていた。




