07 魔王覚醒
翌月からもしばらくは、ティレーリアは毎月十の日に湖畔に行って、来るはずのないヴィリディスを待って、
少しずつ間隔が空くようになって――
結局一度も会える事はなく、三年目には諦めてすっかり湖畔へは行かなくなっていた。
それでも「迎えに行く」という言葉を大事に大事に胸の奥にしまって、あの口付けた日から五年。
ティレーリアは十七歳になっていた。
村の中の幼馴染達の中には、幼馴染同士で夫婦になったり、近隣の村や少し大きな町に嫁いでいく子もちらほら居て、ティレーリアはそんな夫婦になった友人たちを少し羨ましく思いつつも自分にはまだ縁のない話だとポツポツ舞い込む縁談を断っていた。
そんなある日、国中に魔王が覚醒したという触れが回った。
そしてそれに伴い、魔王討伐の為に勇者を始め五人の人物が選ばれて魔王の城へ向け出立した、と。
けれどティレーリア達ちっぽけな村の住民には、さほど影響のある話ではなかった。
そもそも森のすぐ傍の村に住んでいるけれど、魔族がこちら側に何かしてきた事などなく、姿さえ見た事がない。
森の中で迷った子供も迷っていた間の記憶が混濁している事はあるものの、必ず帰って来る。
過去には帰ってこなかった子供もいたようだが、それもごく稀な事だったそうだ。
だから森の傍に住む者たちは、口にはしないが森の向こうに住む魔族と言う名の隣人に悪い印象など抱いてはいなかった。
魔王が復活すると瘴気が高まると言われているけれど、国中どこを探しても魔族が暴れまわっているなんて事も、疫病が流行ったりという悪い事も起きていなかったので、瘴気が高まっている実感など全くなくて、魔王が復活した、勇者一行が出立したと聞いたところで、勇者一行とはどんな人たちなのか、魔王討伐とはどれほど大変な事だろうか、もしかしたら森に入る前に勇者一行がこの村にも立ち寄るかもしれないね、と井戸端会議で盛り上がる話のネタを提供された程度のものだった。
勇者一行出立の触れが回ってから四日後の昼過ぎ。
村に五人の人物が訪れた。
明日森に入るから、一晩過ごさせて欲しい、と。
三人の男性と二人の女性の、五人組。
ちっぽけな村は騒然となった。




