10 魔王降臨
コーデリアの真剣な瞳に、ティレーリアはその言葉を反芻して……首を傾げた。
「王都へ―― ですか?」
「えぇ。貴女の魔力は、とても高いわ。こちら側でもおかしくはないくらいに」
ベルトールがそこまでか、と呟いて、バルドルフがひゅうっと口笛を吹く。
「今すぐに答えを、なんて言わないわ。 わたくし達が戻ってくるまでに、考えておいてくれないかしら」
混乱しているティレーリアが、でも、と戸惑いを口にしようとした、その時。
「彼女は、ダメだよ」
そんな声と共に突如頭上に気配が現れて、そして上から押さえつけられるように、ぐんっと身体が重くなる。
踏ん張らねば簡単に膝をついてしまいそうな、それでも加減されていると分かる圧に、勇者一行は声のした方を振り仰いだ。
村長は踏ん張る事も出来ずに跪いてしまっている。
――けれど。
確かに空気の重さは感じるけれど、
皆が苦しそうにしているのが不思議に思える程、ティレーリアはほとんど圧力を受けていなかった。
どうして? と勇者一行が睨むように見据えている背後を振り返って――息を呑んだ。
「魔王……か!?」
ベルトールとバルドルフが、圧力の中にあっても剣を構える。
「そう呼ばれているね。でも悪いけど、今は君たちに用はないんだ」
二人の殺気をさらりと交わして、声の主はふわりと一行の前に降り立つ。
一行の、というよりは、自身の前に降りてきた〝魔王〟の姿を、ティレーリアは呆然と見つめた。
見たこともない、漆黒の髪。
見覚えのある、アメジストみたいな紫の瞳。
覚えている声よりも、低い。
背だって伸びて、身体もしっかりとした青年になっている。
知らない、人。
でも、知っている、 人。




