28 分けられた力
ヴィリディスが施した術が、あまり時間が空くとかけ直さなくてはならなくなる為に些か性急に進められはしたけれど、それでも充分にティレーリアは愛され、溶かされた。
そうして一緒に迎えた最後の時、ヴィリディスの熱がたっぷりとティレーリアの中に注がれたのと同時にヴィリディスが〝準備〟をした下腹部が熱を持ち始める。
ヴィリディスがティレーリアの中に全てを放ち終えたその時、
ティレーリアは左胸の徴の時とは比べ物にならないくらいの熱に襲われた。
「―――――っ!!!」
あまりの熱さに、悲鳴すら上げられずにティレーリアの身体が大きくしなる。
施された術に吸収されるように、ヴィリディスの放ったそれがティレーリアの体内に染み込んでいってどんどん熱を生み出す。
お腹の中で何かが沸騰しているような激しい熱さに、ティレーリアは悲鳴を上げて体を捩った。
「ティーア……っ!」
ヴィリディスがティレーリアの身体を抱き締める。
お腹の中で熱がどこまでも膨れ上がって、全身の血管という血管を駆け巡っていくような感覚に襲われて、ティレーリアはもがいた。
自分を抱き締めてくれているヴィリディスの腕すらも苦痛で、ティレーリアはいや、離して、ともがいて、暴れるティレーリアの手がヴィリディスの頬を掠めて、ピッと赤い筋が走る。
それでもヴィリディスは、ティレーリアから腕を解く事なく、強く強く、抱き締めた。
魔王の力を分け与えるなんて事は、通常の人間であればすぐに壊れてしまってもおかしくない行為だ。
過去の魔王達と花嫁達との失敗を経て、魔力の高い人間であれば馴染みやすく、そして肉体も耐えられるという事は分かったが、それでもすんなりと力が馴染むわけではない。
左胸の、心臓の近くに加護を付与した徴を刻むのも、
行為の前に仕込んだ術が長い長い詠唱を必要とするのも、
ほとんどは花嫁を守るためのもの。
けれどそこまでしても、どんなに魔力が高い娘でも、
魔王の力が馴染むまでの間、花嫁達は激しい苦痛に襲われる。
最短でも丸一日。三日三晩苦しんだ例もあるようだ。
ティレーリアの魔力であれば二日はかからないだろう、とエリアディールから聞いてはいる。
「ティーアっ……」
それでも、こんな状態が何時間も続くのかと、知識としてしか知らなかった『花嫁の苦痛』を目の当たりにしたヴィリディスは、ごめんと謝りながら、苦しんで暴れるティレーリアを、強く抱きしめ続けた――




