27 儀式の準備
「き……聞かないで……」
両手で顔を覆ってしまったティレーリアの背中に腕を回して、左胸に咲いたばかりの徴に舌を這わせると、ひゃっと悲鳴のような声が上がる。
「二つ目の儀式はね」
ちゅっと徴を吸い上げて、中途半端にはだけていたティレーリアのワンピースの残りのボタンを全部外すと、するりとティレーリアの身体からワンピースを落とす。
「ヴィー……っ」
露になってしまった上半身に、慌てて落ちたワンピースを手繰り寄せようとしたティレーリアをヴィリディスは寝台に押し倒す。
そうして左胸の徴から下腹部に向かって指を滑らせると、ティレーリアは息を飲み込んで、身体を震わせた。
「ティーアのここ――中に僕のを出す時に、魔術を発動させるんだ」
ここ、と下腹部を撫でられて、ティレーリアは咄嗟に意味が飲み込めずに瞬く。
「多分最後は余裕なくなっちゃうし、詠唱に時間がかかるから、先に準備だけしておくね」
「え……え??」
中? 出す? 最後?? とぐるぐるしているティレーリアの額に唇を落として、ヴィリディスはティレーリアの下腹部に手の平を当てると詠唱を始める。
徴の時のような急激な熱さではなく、じんわりと少しずつ温かくなって、ぬるま湯に浸かっている時のような心地良さを覚える。
ゆるゆると温められていくように続く詠唱は、恐らく結構時間がかかったのだと思う。
いつの間にかすっかりと身体の力が抜けて、意識もふわふわと溶けそうになっていたティレーリアは、ふいに途切れた詠唱に、ぼんやりとヴィリディスを見上げる。
「おわった、の……?」
「うん、準備はね」
ティレーリアの肩口に顔を埋める様にしてふぅっと息をついたヴィリディスの頭を撫でてみると、思ったよりもずっと柔らかい髪が指の間を滑り落ちていく。
さらさらの髪の感触に、ティレーリアは気持ちいい、とヴィリディスの髪を梳くように撫でる。
暫くされるがまま、髪を撫でられていたヴィリディスが、ゆっくり顔を上げた。
撫でていた手を止めたティレーリアとヴィリディスの視線が絡む。
その視線に、これまでとは違った色が含まれているのを見とめて――ティレーリアは僅かに息を飲んだ。
ティレーリアが身体を強張らせた事に気づいたヴィリディスは、唇を落とすと啄むような口付けを繰り返す。
「ヴィー……」
合間に小さく名を呼んだティレーリアの口内に舌を滑り込ませると、ティレーリアの肩がびくんと跳ねた。
ヴィリディスは逃げようとするティレーリアの舌を追いかけて、絡めとる。
そうして逃がすまいと絡めて水音を響かせれば、やがてティレーリアはおずおずとヴィリディスに応え始めた。
「んんっ……ふっ………」
必死に応えようとしてくるティレーリアの舌を味わっているうちにティレーリアの身体からは力が抜けて、くったりとシーツの海に沈みこんでしまっている。
ヴィリディスがゆっくりと唇を離すと、二人の間を銀色の糸が伝った。
「…………ぁ」
恥ずかしそうに顔を反らしたティレーリアの首筋に唇を落として、強く吸う。
ヴィリディスはその刺激に甘い吐息を漏らしたティレーリアの耳元に唇を寄せた。
「―――しよっか」
ヴィリディスに耳元でそう囁かれて、ティレーリアは、うん、と小さく頷いた。




