私も客なんですけど
最近、飲食店のセルフ化がどんどん進んでいる。
注文も自分でする。会計も自分でする。店によっては、料理を運んでもらう以外、ほとんど店員さんの手を借りずに食事を終えることができる。
私は、こういうものはだいたい自分でやる。
でも、その一方で、
「使い方が分からない」
と言って店員さんを呼び、注文の仕方を教えてもらったり、操作をしてもらったりしている人もいる。
そこで私は疑問に思った。
なんで、店員さんのサービスをほとんど利用していない私と、何度も店員さんを呼んで人的サービスを受けている人が、同じ料金を払うの?
店員さんには当然、人件費がかかっている。
ということは、私は自分が利用していない人的サービスの費用まで、料理代を通して一緒に払っていることにならない?
ある意味、私が能力高いがために、知らない誰かにサービスをご馳走しているようなものである。
納得いかない。
最初は、セルフで全部できた人の料理を10円安くすればいいのではないかと思った。
でも、それではうまくいかない。
店によってセルフでできることは違うし、同じ人でも、その店のシステムによってできることとできないことがある。
そこで考えた。
呼び出しボタン、一押し10円制度。
これは通販の返品送料と同じような考え方である。
自分の都合で返品するなら、自分で送料を払う。
でも、商品が破損していた、違うサイズの商品が届いたなど、店側の都合なら店側が負担する。
それと同じ。
店の機械が壊れた、注文したものと違うものが来たなど、店側の都合で店員さんを呼ぶ場合は、もちろん無料。
でも、
「使い方が分からない」
「操作してほしい」
など、自分の都合で人的サービスを必要とする場合は、呼び出し一回につき10円。
これは罰金ではない。
人的サービスを利用したことに対するサービス料である。
日本的な、超少額のチップサービスみたいなものだと思えばいい。
「年寄りにはそんな機械、使えないよ」
という意見もあると思う。
でも、今は高齢者だって一人で病院へ行く。
マイナンバーカードを読み取らせ、画面のボタンを押し、同意事項を確認し、顔認証や暗証番号の入力をして、診察券を出し、プリントされた紙をファイルに入れる。
必要に迫られれば、一人でやっている人はたくさんいる。
もちろん、本当にできない人まで無理にやれという話ではない。
でも、「できない」の中には、「面倒だから店員さんにやってもらえばいい」というものもあると思う。
そこに一回10円という料金が発生したら、
「10円払うくらいなら、自分でやってみよう」
と思う人も出てくる。
そうやって、自分でできることは面倒くさがらずに自分でやる。
そのためにも、10円という料金には意味があると思う。
もちろん、障害者手帳などを持っていて、人的サポートが必要な人からまでお金を取ろうとは思わない。
そういう人は無料にすればいい。
また、店側が、
「この年齢以上の方には、人的サポートを無料で提供します」
と決めるのも自由だと思う。
ただし、ここで大切なのは、最初からサービスそのものを「無料」として消してしまわないことである。
例えば店員さんを3回呼んだなら、レシートには、
呼び出しサービス 3回 30円
高齢者サービス割引 -30円
と表示する。
障害者手帳などによる無料サポートなら、
呼び出しサービス 3回 30円
サポート対象者割引 -30円
とすればいい。
本人の支払いは0円である。
でも、30円分の人的サービスが提供され、それを店側が負担したことは可視化される。
私は、ここが大事だと思う。
最初から何もかも無料にしてしまえば、その人がどれだけ人的サービスを利用したのか、そのためにどれだけコストが発生したのかが見えなくなる。
見えなくなったコストは、結局、店全体の経費の中に入っていく。
そして、そのサービスをまったく利用していない他の客まで、その負担をすることになる。
それは違うと思う。
社会的に無料サポートが必要な人をどう支えるかは、店や行政などが考える問題であって、人的サービスを利用していない他の客に、分からない形で負担させる話とは別である。
だから、無料にするなら無料にすればいい。
ただし、サービスの価値そのものは可視化しておく。
誰がサービスを利用したのか。
そのサービスにはいくらかかったのか。
そして、その費用を誰が負担したのか。
そこを分ける。
店員さん側の操作も、そんなに難しいものではないと思う。
呼び出されて対応した店員さんが、自分の持っている端末で、
「客都合のサポート」
「店都合」
「無料サポート対象」
などを選んで押せばいい。
客都合なら10円加算。
店都合なら無料。
無料サポート対象なら10円を計上したうえで、同額を割り引く。
それだけである。
ただし、一つ危険なことがある。
何も分からない小さな子どもが、面白がって呼び出しボタンを、
「ポンポンポンポンポンポン!」
と押す可能性である。
でも、それは親に払っていただきます(笑)
「子どもが勝手に押したんです!」
と言われても、店側の都合ではない。
6回押したなら60円。
それが嫌なら、親が子どもにボタンを押さないように教えればいい。
もちろん、そこで店が、
「今回は無料でいいですよ」
と判断するなら、それは店が勝手に無料にしてあげればいい。
でも、あくまでも店側のサービスとして無料にするのであって、そのコストを他のお客さんに負担させるものではない。
ここまで考えていて、うちのパパが以前言っていたことを思い出した。
パパは、ファミレスなどで食事をしたら、食べ終わるとすぐに店を出る。
一方、私のような専業主婦のママ友同士の集まりでは、食事が終わっても、幼稚園の子どもが帰ってくる時間まで、そのままおしゃべりをしていることがある。
パパは、そういう人たちを見ると、なんだか腹が立つらしい。
自分は食べ終わったらすぐに席を空けている。
でも、同じ料金を払って、何時間も席を使っている人もいる。
なんだか自分が損をしているような気がするという。
ああ、それ、私が今考えていることと似てるなと思った。
同じ料金なのに、店のサービスや資源を使っている量が違う。
だったら、パパみたいな人のために、
「早く席を空けてくれてありがとう」
という意味で、早割みたいなものを作って、10円引いてあげてもいいかもしれない。
店の回転に貢献してくれたお客さんへのサービスとして、店側が10円引いてあげる。
それは好きにすればいい。
でも、その10円を他のお客さんの料金に乗せて回収するというのなら、
私は払わねえよ(笑)
店が誰かを優遇したいなら、好きに優遇すればいい。
支援したい人がいるなら、支援すればいい。
サービスしたいなら、サービスすればいい。
ただ、その費用を関係のない客に、見えない形で負担させないでほしい。
そもそも、セルフ注文やセルフ会計は、店側の業務を効率化し、人件費などのコストを削減するために導入されている部分もある。
そして客も、自分で注文し、自分で会計するという作業を引き受けている。
それなのに、セルフ化によって削減したはずの人的サービスを一部の人が利用し、そのために発生したコストまで、セルフ化に協力している客に負担させるのはおかしいと思う。
私が言いたいのは、
「店員さんを呼んだ人から、とにかく金を取れ」
ということではない。
そして、
「10円、20円が惜しい」
という話でもない。
「またセコいこと言ってるよ」
と思う人もいるかもしれない。
でも、決して私がセコいから、こんなことを言っているわけではないのよ。
私が一番腹が立つのは、そこじゃない。
何気なく店員さんを呼んで、
「分からないからやって」
とお願いしている人たちは、そのサービスにも人件費というコストがかかっていること、そしてそのコストを、自分だけではなく、店員さんを呼ばずに自分ですべてやっている他のお客さんまで負担している可能性があることに、気づいていないんじゃないかと思うのよ。
自分はただ店員さんを呼んだだけ。
無料だから、誰にも迷惑をかけていない。
そう思っているかもしれない。
でも、そのサービスは本当に「タダ」なのか?
店員さんが動けば、そこには人件費がかかっている。
私が一番言いたいのは、そこなのである。
だから私は、そのコストを見えるようにしてほしい。
サービスを利用した人と、利用していない人。
その負担をきちんと分けて、誰が何のためにお金を払っているのかを分かるようにしてほしい。
そして何より、店員さんを気軽に呼んでいる人たちにも、自分が利用しているサービスにはコストがあり、その一部を、サービスを利用していない他のお客さんにも負担させているかもしれないということを、知ってほしいのである。
セルフ化によって削減したはずのコストを、セルフ化に協力している客へ再び負担させない。
人的サービスを利用した人は、そのサービス料を払う。
店側の都合なら、店が負担する。
社会的にサポートが必要な人や、店が無料サービスの対象と決めた人なら、サービス料そのものは可視化したうえで、店や制度側が負担する。
そして、人的サービスを利用していない客には、他人が利用したサービス料を負担させない。
そこを、きちんと分けてほしいのである。
これを読んでいる飲食店の偉い方々、いろんな企業の偉い方々、そして行政の方々。
呼び出しボタン一押し10円制度。
一度、ご検討いただきたい(笑)
どう考えてもジャンルはノンフィクションエッセイなのに、異世界ファンタジーというジャンルにいる不思議(笑)




