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剣と魔法だと聞いたのに、転生先は未来ロボ戦争ゲーム世界でした。チート無双の予定が、科学文明で初期スキル死亡  作者: はちねろ


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第5話 見えているのは俺だけ

見えていないものは、最初から存在しないものとして扱われる。

 いきなりで、どうしていいかわからない。


 俺は一度、端末を見下ろしてから、受付のカウンターへ向かった。受付の女は端末から視線を離し、今度はちゃんと俺のほうを見る。


「えっと……問題行動記録が残っているのは、事実です」


 責める口調じゃない。ただ、完全な事務処理でもなかった。


「その……まず、先に言っておきます。誰かがあなたを嫌って、意図的に締め出しているわけではありません」


 受付の女はそこで一度視線を外した。端末の表示を確認するふりをして、言葉を選び直しているのが分かる。


「ただ……部隊を組む、というのは。簡単に言えば、お互いに命を預け合う、ということです」


 声が少しだけ落ちた。大きな言葉ではないのに、胸の奥に残る重さがあった。


「ですから、記録がある以上、慎重になる人が多いのは事実です。それは、その……私がここで違うと言って、消せる種類のものではなくて」


 言いにくいことを、無理にごまかさずに言おうとしている。そんな詰まり方だった。


「あなたが悪い、という話ではありません。実際、事情があったのかもしれませんし、その場を見ていない以上、私が断定することもできません」


 そこで初めて、彼女はまっすぐ俺を見た。


「ただ……今のあなたに必要なのは、弁解することより先に、もう一度、信頼を積み直せる場所だと思います」


 端末の上で指先が止まる。


「よければ、初心者講習を受けてください。戦うため、というより……この世界で、どうすれば無駄に死なずに済むのかを知るためのものです」


 受付の女は少しだけ迷ってから、言葉を足した。


「生き残るつもりなら、たぶん、それが一番安全です」


 初心者講習を受ける手続きをすると、最低限の情報が端末に入力されていった。その間も、俺の視界の端には、あの表示が残っていた。


 スキル。


 確認されていない。項目にも、触れられていない。


「……この場合」


 思わず、口を挟んでいた。


「スキルって、どこに記載されるんですか?」


 受付は、一瞬だけ手を止めた。


「……スキル、ですか?」


 首を傾げる。その反応で、予感が確信へ変わった。


「技能のことでしたら、適性検査で登録は終わっていますが……」


 誰も、それを項目として扱っていない。受付の手は端末の上を滑り、話は何事もなかったかのように進んでいく。


 なるほど。


 この世界では、それは“存在しないもの”なのだ。


 なら、見えているのは俺だけ。


 俺は、講習室の表示へと視線を向けた。まずは、生き残る。話はそれからだった。


 初心者講習は、思ったより静かだった。


 前方の教官が、淡々と説明を続けている。戦線、補給、連携。どれも、聞き覚えのある単語ばかりだ。


 俺は教官の声を聞きながら、端末の隅に単語を並べていた。


 戦線。補給線。撤退信号。損耗率。再配置。


 ゲームで見た言葉と、この世界で使われる言葉が、少しずつ噛み合っていく。


 そのとき、隣の席から声が落ちた。


「……今の話、理解できました?」


 視線は前を向いたままだった。ただ、彼女の目だけが、俺の端末に一瞬だけ触れていた。


 俺が短く噛み砕いて説明すると、隣の黒髪の彼女は、一度だけ端末を叩く指を止めた。横顔は前を向いたまま、まつげだけがわずかに下りる。


「……なるほど」


 それだけだった。


 俺は要点だけを返した。


「賢いね」


 そう言われても、俺は端末から目を離さなかった。賢さで生き残れるほど、この世界は甘くない。


 座席の配置。装備の差。端末を操作する手の動き。見れば見るほど、最初から役割が分かれているのが分かった。


 前列に座る連中は、身体つきが違った。ナノマシンの反応が、皮膚の下でうっすらと光っている。純戦闘要員。前に出て、撃って、削られる役だ。


 後方には、端末から目を離さない人間がいる。視線は常に戦況図。指の動きが、明らかに慣れている。


 指示役。盤面を見る側。


 その瞬間、ようやく腑に落ちた。


 教官の声が、はっきり耳に入る。


「──損耗率が一定を超えた部隊は、再配置されます」


 再配置。


 つまり、守られない。


 使えるか。使えないか。この世界は、そこから先を切り落とす。


 俺は、自分の手を見た。


 この手で、何ができる。撃つのか。運ぶのか。直すのか。


 使えるか。使えないか。この世界では、まずそこから値段がつく。


 その直後、教官が端末を閉じた。


「座学はここまでだ。次は、実機訓練に移る」


 前列の連中が、待っていたように腰を上げる。その中に、さっきの軽装甲の二人組がいた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


リゼルのスキルは、この世界ではまだ誰にも見えていません。

それでも、戦線、補給、損耗率。少しずつ、この世界で生き残るための形が見え始めました。


少しでも「このスキルがどう使われるのか気になる」「実機訓練でどう動くのか見たい」と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。


大変励みになります。

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