第41話 手のない火力
撃てることと、撃ち続けられることは違う。
ブレイダーの記録は、まだ試乗区画の壁に残っていた。
大型一、中型二。初回搭乗。被弾なし。弾薬消費なし。損傷軽微。現時点で最有力。数字だけを見れば、もう答えは出ているように見える。アリアもジンも、そこを否定していない。俺の足裏には、まだブレイダーが床を噛んだ感覚が残っていた。大型の肩の下へ潜った時の暗さも、最後に刃が胸部装甲を袈裟に抜けた重さも、腕の奥に残っている。
強かった。かなり強かった。
だからこそ、以前ショップで見た古い機体を思い出した自分でも少し馬鹿なことを言っていると思った。
「前に見た、両腕が銃身の束になってる機体を試したい」
アリアの端末を叩く音が止まった。
表示が切り替わり、ブレイダーのデータの横に古い機体図が並ぶ。旧式双腕多銃身火器搭載型フレーム。胴体は薄く、脚も軽い。装甲で受ける機体ではない。だが、両腕だけが異様に太かった。肘から先が人の手ではなく、束ねられた銃身そのものになっている。肩から前腕まで、火器のために作られた骨格だった。
手を捨てて、その分を火力へ寄せた機体。画面越しでも、その異様さは分かった。
「……あの機体ですね。以前、確認されていましたね」
アリアは旧式機の戦闘記録を開いた。声には、危ない数字を一つずつ確認する硬さがあった。
「正直に申し上げますと、候補に残るとは思っていませんでした。火力はあります。ですが、手がないため回収作業ができません。倒れた味方を引くことも、現地で簡易作業を行うことも難しい。素材を壊しやすく、弾薬の消費も大きい。弾切れ後の継戦能力も低い機体です」
「先ほどのブレイダーは、弾薬を使わずに大型一、中型二を処理しました。損傷も軽微です。リゼルさんの現行候補としては、あちらを優先する方が合理的です」
正しい。何も間違っていない。
ジンの通信が入ったのは、その直後だった。
「お前がそいつをもう一度見たい理由は、分からなくもない。あれだけの火力があれば、目の前の敵を止める力は今でもある。大型の足を潰すこともできるし、中型が回り込む前に押し返すこともできる。盤面を止めるという意味では、確かに強い」
「ただ、そのために捨ててるものが多すぎる。手がないから拾えない。素材は壊しやすい。弾を食う。弾が切れたら、火力特化のはずの腕がただの重りになる。部隊で使うにしても癖が強いし、単独で使うならなおさら使い手を選ぶ。だから倉庫の奥で眠ってるんだ。弱いからじゃない。強いが、普通の運用が難しいんだ」
ジンの声に、いつもの軽さは少なかった。図面と運用記録を見てきた開発者の声だった。
過去の運用記録を提示される。弾薬消費。素材破壊率。回収不能。補給負荷。赤い数字が、機体図の周りに重なっていく。
「だからこそ、強みを出すほど運用が難しくなる。これまで試した機体は、同じ仕事をもっと効率よくやれる。少なくとも、さっきのブレイダーの動きを見た後なら、俺はそっちを推す。初回であれだけ動けた機体を捨てて、わざわざこいつを選ぶ理由はない」
アリアは端末から目を上げず、ブレイダーの記録をもう一度表示した。同じ結論なのだろう。
「あれは前へ出る機体だ。強いし、俺にも合ってる。乗れば、たぶん前へ出る。前へ出れば勝てる場面は増える」
俺も、その判断が間違っているとは思わない。ブレイダーは強かった。大型の肩の下へ入った時、機体は俺の入力に遅れなかった。踏み込み、刃を入れ、抜け、戻る。あの動きは、今でも手の中に残っている。
だが、だからこそ怖い。
「ただし条件はブレイダーと同じだ。大型一、中型二。そこで近づけない機体として使えなきゃ、ブレイダーのが優秀だ」
ジンがそう言うと、アリアが準備を始めた。
「旧式双腕多銃身火器搭載型フレーム、試験許可を通しました」
試乗区画へ移動すると、床下の搬送機が低く鳴っていた。
ブレイダーの時より、区画内の空気が重く感じる。機体そのものが重いわけではない。奥の格納口からせり上がってきた旧式バルカンは、むしろ細い。胸部も腰も薄く、脚も必要最低限だ。
ただ、両腕だけが異様だった。
肩から肘、肘から先まで、銃身の束が腕の形を保っている。指はない。掌もない。銃口がいくつも前を向き、金属の筒が互いに噛み合うように並んでいた。
操縦席に入ると、背中から低い振動が来た。
ブレイダーのように足裏から前へ出たがる感覚はない。重装型のように身体ごと沈む感覚でもない。腕の入力フレームへ手を通すと、右腕と左腕の先に重い筒が増えたような圧が乗った。指を動かす感覚は薄い。代わりに、銃身の向きと重さだけが神経へ返ってくる。
視界の端には、残弾表示と銃身温度が並んでいた。今見えているのは、撃てる弾と、上がっていく熱だけだ。
「旧式双腕多銃身火器搭載型フレーム、試験開始。標的は大型一、中型二。ブレイダー試験と同条件です」
アリアの声と同時に、床の中央が割れた。
大型標的が上がる。前回と同じ肩幅。同じ低い頭部。同じ太い前脚。右肩の影には中型が沈み、左奥には退路を塞ぐもう一体が回っている。
盤面は同じだった。違うのは、こちらの手段だけだ。
開始音が鳴った。
大型が床を蹴った瞬間、胸部装甲が視界の上半分を塞いだ。白線を踏み潰しに来る太い前脚を見て、俺は胸ではなく、その付け根へ右腕の銃身を落とす。正面から胴を撃てば弾が散るだけだ。止めるなら、重さが床へ乗る前に脚を崩すしかない。
右腕が唸った。束ねられた銃身から吐き出された弾が装甲の継ぎ目へまとまり、操縦席のフレームが肩ごと震える。照準枠が上へ逃げかけたところで発射を切り、反動を腕で押さえ込む代わりに機体を斜めへ滑らせる。浮いた銃口が戻るより先に、脚の付け根へもう一度、短く叩き込んだ。
大型の前脚が白線の外へ流れた。床を叩くはずだった足がずれ、巨体の胸が斜めに落ちる。突進の圧が半分だけ横へ逃げ、その影から中型が飛び出した。
俺は追わない。ブレイダーなら内側へ入る場面でも、この機体で前へ出れば詰む。倒れかけた大型の胸を遮蔽物にして左へ下がりながら、右腕の銃口を中型そのものではなく、爪先が通る白線へ置いた。床で弾が跳ね、中型の足がそこで止まる。
中型の頭が上がった瞬間、左腕の銃身を肩口へ滑り込ませた。狙いは胴ではない。走り出した重心を支える前脚と、こちらへ向く首の支点だ。肩口を短く叩き、前脚の付け根へ戻し、首元へ抜く。発射を引きっぱなしにはしない。照準枠が上へ逃げる前に火を切り、機体の横滑りでずれた角度を戻す。中型は勢いを残したまま前へ崩れ、床を削る前脚の上で首の付け根を晒した。そこへ右腕の弾がまとまって入り、赤黒い液が白い床へ散った。
左奥の中型は、その隙に退路へ回り込んでいた。アリアの警告が視界の端に出るより早く、俺は入力フレームを押す。銃口だけを振れば遅い。機体の腰ごと角度を変え、倒れた中型の横をかすめるように射線を通す。照準は胴体へ行かない。胴を撃てば止められるかもしれないが、押し切られれば距離が潰れる。だから、次に床を蹴る前脚の付け根へ落とした。
右腕が短く鳴る。反動が乗る前に切り、機体を流して、もう一度同じ継ぎ目へ入れる。脚部装甲が割れ、中型の身体が低く沈んだ。頭がこちらへ向く前に左腕へ切り替え、肩口へ短く叩き込む。中型の進路が折れ、退路を塞ぐはずだった身体が床の上で横へ流れた。
大型が戻ってきた。
右前脚を削られたまま、巨体が無理やり前へ出る。胸部装甲が床を擦り、白い粉が舞った。厚い胸へ撃てば弾が消える。俺は正面を見たまま、右腕だけをもう一度下げた。狙うのは最初に割った前脚だ。胸を抜くために撃つのではない。巨体を支えている一点を、もう一度崩すために撃つ。
左腕で胸を短く叩き、巨体の向きをわずかに揺らす。その隙に右腕の銃身を低く戻し、割れた継ぎ目へ弾をまとまって入れた。大型の膝が落ちる。胸部装甲の下側が開き、赤黒い隙間が見えた。
そこへ左腕を入れる。
押しっぱなしにはしない。胸の割れ目へ短く撃ち、反動が跳ねる前に切る。右腕で前脚の継ぎ目を押さえ、機体を半歩滑らせて、もう一度左腕を胸の奥へ戻す。銃身温度の表示が黄色に寄り、残弾表示が落ちる。それでも弾は散らない。散る前に止め、止めた分だけ次の点へ置く。
大型の肩が沈んだ。胸部装甲が床へ落ち、重い音が試乗区画を揺らす。残った中型二体も動かない。白い床に広がる液の上で、外殻片がまだ細かく震えていた。
俺は敵の内側へ入っていない。
ホバーへ戻る線は、背後に残っていた。
「大型一、中型二、停止確認。被弾なし。接触なし。機体損傷なし。ただし、弾薬消費はブレイダー試験とは比較になりません」
アリアの声が、端末の更新にわずかに遅れた。
残弾は削れている。銃身温度も上がっている。だが、旧式バルカンはまだ立っていた。敵を足元へ入れず、正面から受けもせず、距離を残したまま三体を止めていた。
通信の向こうで、ジンが息を吐いた。
「……撃ちっぱなしにしないのか」
壁のログが流れる。命中率。行動阻害率。銃身温度。反動補正。どの数字も、古い機体の想定値から少しずつ外れていた。
「普通はこいつに乗ったら、面で押す。弾を撒いて、近づく前に潰す。だが、お前は散る前に切ってる。足を止める場所、姿勢が崩れる場所、次の射線が通る場所だけを撃ってる。旧式バルカンでそんな撃ち方をする奴は、俺が知る限りいない」
アリアがログを開き直した。指が一度止まり、同じ射撃記録をもう一度なぞる。
「命中率、行動阻害率、ともに想定より上です。大型一、中型二という条件では、短時間制圧能力を確認しました」
操縦席の中で、俺の手には反動の痺れが残っていた。撃てば止まる。近づかせずに済む。ブレイダーのように中へ入らなくてもいい。
壁に新しい記録が追加される。
旧式バルカン。大型一、中型二。接触なし。損傷なし。弾薬消費、高。
数字は綺麗ではない。
だが、目的は見えていた。
「なら、これはどうだ」
ジンの声が少し変わった。
床の奥で、別の格納口が開く。
「ジン様、追加条件ですか」
「大型と中型だけなら、今ので分かった。だが、崩れた時の保険にしたいなら、足元の小型を見ないと意味がない。バルカンが一番嫌がるのは、強い相手じゃない。撃てば止まるが、止めるたびに弾を持っていく相手だ」
白い床に、小さな影がいくつも落ちた。
小型標的。一体ずつは低い。外殻も薄い。大型や中型ほどの圧はない。だが、数が多い。床の端から、十、二十、さらに増える。まっすぐ来ない。左右へ散り、床を這うように走り、倒れた標的の影へ潜る。
「小型多数、接近。足元への侵入ルートが複数発生しています。旧式バルカンは、接近後の排除能力が低い機体です。距離を維持してください」
「ジンのやつ、やりやがったな……いいよ。クリアしてやる」
右腕を下げると、小型の列が弾けた。外殻が薄い分、止めるのは早い。だが、倒れた一体の後ろから次が滑り込み、さらにその後ろの影が左右へ散る。右から来る群れを右腕で切り、左へ抜ける個体を左腕で止めるたびに、残弾表示が一段ずつ落ちていった。
足を止めれば囲まれる。動けば照準が流れる。俺は機体を斜めに下げながら、追ってくる小型の進路へ短く弾を置いた。距離を保ち、近づく前に止める。ゲームなら何度もやった動きだ。だが、ここでは倒したものが消えない。小型の残骸が床に残り、外殻片が脚へ当たり、赤黒い液が足裏の食いつきを鈍らせる。
右腕の残弾が落ちる。左腕の銃身温度が上がる。反動制御の負荷が赤に寄り、警告表示が視界の端へ増えていった。
まだ止められる。
だが、次の列を削れば右腕が空になる。左腕も温度が高い。撃てる弾はあるのに、腕の中にはもう残っていない。残弾表示の赤が、視界の端で脈を打つ。
喉の奥が冷えた。
それでも、口の端が上がる。
ここで終わるなら、わざわざバルカンを選んだ意味がない。
俺は五枠を開いた。
最初は、ネジだった。試験室の端に転がっていた同じ規格の小さなネジを、一つ入れ、もう一つ入れた。別の枠を使うと思っていた表示は、一つにまとまった。ネジ、数量二。次に同じ端子。次に同じ規格の固定具。全部ではない。形が似ているだけでは駄目だった。けれど、俺が同じものだと認識できて、用途も規格も揃っているものは、一つの枠の中で数が増えた。
だから、準備してきた。
旧式多銃身火器用弾薬カセット。数量六。
「やってやる」
視界の右端に、黒い歪みが六つ浮いた。そこから同じ形の巨大な弾薬カセットが、床すれすれに次々と滑り出す。人間が抱えられる大きさではない。機体用の金属箱が、六個、試乗区画の床へ並んだ。
指で掴むことはできない。
だが、腕はある。銃身の束も、給弾口もある。
左腕を外へ開き、前腕の側面にある給弾口をカセットへ向ける。右腕で正面の小型を短く削りながら、機体の肩をひねり、出したカセットを左腕の受け口へ押し当てた。
金属が噛み合う音がした。
いける。
そう思った瞬間、カセットの角がずれた。固定爪が空を噛み、接続表示が赤く弾かれる。左腕の銃身束が邪魔になる。手首がない。指がない。掴んで角度を直せない。俺は機体の肘ごと押し込むように左腕を引き寄せた。
正面の小型が距離を詰める。
右腕で撃つ。残弾が一気に落ちる。左腕は給弾姿勢のまま動かせない。カセットは給弾口の手前で斜めに噛み、固定爪がもう一度空振りした。
あと少し。
ほんの少し角度を変えれば入る。
俺は機体を半歩下げ、右腕の銃身束でカセットの端を押した。鈍い音が腕から操縦席へ返る。カセットが揺れ、給弾口の位置へ一瞬だけ重なった。
接続表示が黄色に変わる。
「入れ……!」
次の瞬間、右腕の残弾がゼロになった。
正面の小型を止める火が消えた。床を這っていた影が一斉に距離を詰め、倒れた外殻を踏み越えて来る。左腕を向けたい。だが、左腕はカセットを受けようとして動かせない。右腕は空。機体を下げようにも、左腕の給弾口に半分噛みかけたカセットが引っかかり、肩の動きが遅れた。
その遅れに、一体目が入った。
右足の外側へ小型が突っ込む。硬い頭部が膝下の装甲を叩き、機体が横へ揺れた。姿勢制御が踏ん張るより先に、二体目が足首へ食いつく。さらに三体目が、膝関節の後ろへ滑り込んだ。
警告が一気に赤へ変わる。
右腕残弾ゼロ。
左腕給弾未接続。
右脚外側衝突。
足首拘束。
膝関節可動域、低下。
俺は左腕を切り離そうとした。だが、カセットは給弾口の手前で斜めに噛んでいる。無理に振れば、給弾口ごと壊す。右腕は撃てない。足元の小型を払う手もない。
右膝が落ちた。
機体が片側へ沈み、視界が床へ傾く。足元に張りついた小型の群れが、さらに脚部へ乗り上げる。白い床が近づき、操縦席のフレームが低く軋んだ。
機体停止。その瞬間、試験終了の警告が鳴った。
白い照明が戻る。小型標的の動きが止まり、足元へ張りついていた影が沈んでいく。給弾口の手前で噛んでいた一個と、床に並んでいた残りのカセットが、黒い歪みに呑まれて五枠へ戻った。
操縦席の中に、反動の重さだけが残った。
弾はあった。持ち込むこともできた。だが、それを撃ち続ける形にできなかった。
「試験終了。右脚部への接触、足首拘束、膝関節可動域低下を確認。機体停止判定です。……外部弾薬カセット、六基確認。出現経路、不明。五枠の上限数と一致しません。……六基、確認しています。給弾接続は成立していません。現行機体での単独継戦は困難です」
壁の表示に、成功と失敗が並ぶ。
大型一、中型二は停止。小型多数は処理途中。弾薬カセット展開は成功。給弾接続は失敗。足元接触で試験終了。
成功した部分がある。だから余計に、失敗が重い。
「……やっぱり、ブレイダーか」
声が漏れた。
アリアは、少しだけ端末を見てから答えた。
「現行候補としては、ブレイダーが最も安定しています。旧式バルカンは短時間制圧能力こそ確認できましたが、小型多数と戦闘中給弾への対応に問題があります。現状のまま実戦へ出すことは、推奨できません」
その通りだった。
ブレイダーなら、弾切れはない。刃がある。足もある。小型に入られても、まだ切り返す余地がある。
バルカンは撃っている間だけ強い。
火力が切れた瞬間、手のない機体になる。
俺は入力フレームから手を外した。指先が痺れている。反動の名残が、腕の奥でまだ揺れていた。
ジンの声が入った。
試験終了後も、端末を叩く音が止まっていない。
「今ので分かった」
「失敗しただろ」
「失敗した。今回はな」
ジンはそこで言葉を切った。
壁に旧式バルカンの機体図が拡大される。背部。腕部。給弾経路。銃身の束。赤い線が走り、さっき詰まった装填位置で止まった。
「お前が欲しいのは、この機体そのものじゃない。敵を近づけずに、ホバーへ戻る時間を作る仕組みだ。大型と中型は止めた。小型も、火力が続いている間は止められた。弾も持ち込めた。五枠から弾薬が多数出せることも分かった」
「問題は一つだ。弾はあるのに、撃てる形で繋がっていない」
俺は壁を見た。
ジンの引いた赤い線が、背部の給弾口で途切れている。
「手がないから駄目なんじゃねぇ。手で替えようとしてるから駄目なんだよ」
アリアの端末音が止まった。
「ジン様、それは改修の範囲を超えます」
「だろうな。だから普通の改修にはしない。こいつは普通に乗る機体じゃない。リゼルが崩れた時だけ出す、帰るための保険だ。なら、最初からその使い方に合わせればいい」
壁の旧式バルカンの上に、新しい線が増える。背部の古い給弾経路。腕部の銃身束。外部カセット受け。補助ユニット。射線制御。
「五枠から弾を出す。機体側が受ける。給弾を繋ぐ。火力を切らさない。お前が全部撃つ必要もない。撃ってはいけない場所を決めて、必要な範囲を機体側で埋める。反動と射線はサポートで噛ませればいい……」
ジンの声に、熱が入っていた。
ただの思いつきではない。さっきの失敗箇所を、そのまま設計の入口として見ている。
「ブレイダーはいい機体だ。お前にも合ってる。だが、あれは前へ出る。勝ち筋を作りに行く機体だ。こいつは逆だ。勝つための主力じゃない。近づけさせないための火力を、短い時間だけ無理やり維持する機体を求めてる」
アリアが画面を見たまま言う。
「弾薬費、整備費、改修費、すべて重くなります。素材回収にも向きません。通常運用には不適です」
「このままでは運用しない」
ジンは迷わなかった。
「リゼルの五枠、弾薬カセット、操作技術とナノマシンの補正。全部込みで初めて成立する。普通の奴が乗る機体じゃない。だから、廃れた旧式をそのまま使うんじゃない」
俺は、壁に浮かんだ古い機体を見た。
手がないから掴めない。だが、掴まなくていい形にすればいい。弾を食うから普通は選ばない。だが、五枠に弾薬を重ねられるなら話は変わる。火力が切れたら終わる。だから失敗した。だが、その切れ目を潰せるなら、失敗した場所がそのまま改造する場所になる。
操縦席の中で、まだ足元に小型が張りついた感覚が残っていた。火力が切れた瞬間、何もできなくなったあの感覚。その失敗を、ジンは終わりではなく、改造する場所として見ていた。
「これほど楽しいやつはいない。俺をここまで熱くした責任取って、専用機を作ってやる」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
旧式バルカンは、弱い機体ではありませんでした。
ただ、今のままでは火力を繋げられない機体でもありました。
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次を書く力になり、とても励みになります。




