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魔王様はなりゆきまかせ  作者:
魔王様の長い長いはじまりの日
11/37

その11

 いきなり何を言い出すのか、と思われるかもしれないけど、私は、美少女には耐性がある。

 理由は単純明快で、最近まで一緒に旅をしてたからだ。

 魔王討伐のメンバーは私を含め六人。そのなかで、男は「ヤツ」一人だった。

 もう一度言う。男一人、女五人だった。

 …うん、あのね。冗談じゃないんだ、これ。私もいまだに信じたくない。絶対、何かの手違いがあったはずだ。

 偶然なのか故意なのかはわからないけど、とにかく、女の集団に男一人が混ざると、結果は二通りに分かれる。共有の下僕兼オモチャにされるか、取り合いになるか、だ。

 たいていはオモチャにされるんだけど、なぜか、本当になぜなのか、「ヤツ」の場合は取り合いになった。

 となると、おわかりだろう。女同士ややこしくなるのである。


 「ヤツ」の幼馴染ということが広く知られてたせいで、私は散々な目に合った。美少女ににらまれたり、美少女ににこにこ顔で寄ってこられたり、美少女達のにらみ合いの間に入ったりした。

 完全にとばっちりだ。

 なんでだ。ほんとになんでだ。「ヤツ」は私と同じ、平々凡々な馬鹿なのに。みんなタイプは違っても美人揃いだったのに。その気になれば、相手が神官様だろうが王様だろうが、すぐにでも嫁に行けそうなのに。一体アレのどこを気に入ったんだ…。

 

 話がずれた。

 とにかく、そんな訳で、美少女に嫌われようがにらまれようが微笑まれようが、あまり動じなくなった。

 それは、ソファーから見上げてくる女の子にも当てはまる。


「人間のお嬢さん、どうしてこんな所にいるのかわからないけれど、ひとまず名前を教えていただける? このままじゃ、お互い不便ですもの。」


 銀髪の美少女、とってもにこやかだけど、声はひんやりしている。

 声、出していいのかな。これくらいはいいよね。


「リーです」


 へらっと笑顔を作ってみる。しばらく、この顔で通そう。笑顔にまさる武器はないとも言うし。


「それは本名?」


 うぐ、鋭い。


「本名が好きじゃないので。皆そう呼んでます。」


 別に偽名じゃない。ちゃんと本名からとった呼び名だ。日常生活を呼び名で通すのはよくあることだし、わざわざ言うことでもないと思って、省略しただけで。

 ああ、隣のユージンの視線が痛い。自分の知らなかったことを他人に聞き出されるのって腹立つよね。わかる。でもこれ流れに乗せられたというか、不可抗力。


「そう。私も本名が嫌いで、ジジと呼んでもらっているの。あなたと同じね。それで、リー、あなたは、『何』?」

「おばあ様、そこから先の詳しい説明は私が。」


 すばやくユージンが割り込んだ。


 …待って。「おばあ様」? 

 ぎょっとして、二人を見比べる。(見た目)二十歳そこそこのユージンと、(見た目)十二歳のジジ。

 銀髪は確かに同じだ。髪質も。ユージンは男くささが薄いし、雰囲気とか、眉の形とか、顔立ちも似ていると言えなくもない。

 でも、この美少女がおばあ様? 逆じゃなくて? それこそ冗談でしょ?


「ユージン? 私は今、あなたとではなく、彼女と話しているの。おわかり?」

「承知しております。が、おばあ様も仰ったとおり、彼女は人間で、魔界のことには詳しくありません。そのかわり、彼女の第一発見者である私が、今後のことも含めて説明をさせていただきます。」


 気のせいかな。バチバチと火花が発生してる。身内じゃないのか、あなた方。

 ジジがゆーっくりと目を細めた。


「よろしくてよ。それでは、その説明とやらを聞かせていただこうではないの。」


 わああああ、怖い! この子、…子?、このヒト怖い!

 ユージンがこほ、と一度咳払いをした。


「まずは、今朝方の城の異変に関してですが、これは城の意思によるものです。率直に申し上げます。城は、ここにいるリーを、新たな魔王としました。」


 息を飲む音がいくつか聞こえた。動じないのは、もう知っている長老とシバ。ジジは微笑みを崩さない。


「待て、その子は人間だろう。」


 太い声をあげたのは、ソファーの近くに陣取ってた獣人。上半身は人で、下半身は馬の、ケンタウロス型だ。めずらしいことに、背中に鳥の翼までくっついているから、ケンタウロス型の中でも「天馬」と特別に呼ばれるタイプだ。

 獣人らしく、上半身も下半身もがっちり筋肉がついている。一応、上半身は布を巻きつけているけど、頭部が無精ひげに髪もボサボサの中年男性とくれば、見た目の暑苦しさというかむさ苦しさは否定できない。


「そうです。人間界と魔界との間に穴があき、彼女が魔界へ落ちてきたのが今朝。落ちてきたのは、私の客室でした。城にプロテクトがかかっているのは、皆様もよくご存じのはず。他でもないこの城が彼女を選んだ。今はそれだけが確かなことと言えるでしょう。」


 天馬がぽりぽりと頭をかいた。


「だからってなあ…」

「元はと言えば、いつまでも私たちがもめて、王をたてなかったのが原因です。仮に彼女を殺したところで、次の王を誰にするのか、また同じことで揉めるだけです。それなら、いっそ受け入れる方がよいでしょう。魔界の未来のためにも、私たちが無能と指さされるのを避けるためにも。」


 なんか、今、さらっと怖い言葉が聞こえたぞ。

 頬がひきつりそうになって、ぐっと力をこめた。これが終わったら、逃げる準備だけはしとこう。


「人間だぞ。魔界についてどれだけ知っているかも怪しいのに、魔王が務まると思うのか」

「確かに、新たな魔王陛下は、魔界についてほとんど何もご存じない。浮浪児、以下です。」


 きっぱりと言われた。返す言葉もないけど、その例えはどうにかなんないかな。


「先代魔王陛下は、ちょっと色々アレな方でしたが、一つだけよいお言葉を残されました。」


 曰く。


 我、君臨すれども統治せず。


 …いや、ちゃんと統治してくれないとこっちが困るから。




「これを、我々は踏襲しようと思います。」


 ユージンが宣言した。

ハーレムタグは嘘じゃないけど、リーの周りではないのです。

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