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小次郎転生伝  作者: 杉山薫
第四部 越前攻め
23/37

 オレはそのまま小田原に向かって歩いていく。時は元亀元年四月、オレは風魔の里に到着する。里に着くなりゆきなに抱きつかれた。


だから、くノ一は勘弁してよ……。


「どこ行ってたのよ? こんなか弱い女子おいて」


火炎を吹くか弱い女子がどこにいるのか?


「油坂峠だよ。前と一緒だよ。道舟っていう……。まあいい。厄介なのに絡まれてな……」


「あんたは厄介なのに絡まれるね」


今もね⋯⋯。


「ちょっと親方(こたろう)に挨拶に行ってくるよ」


「お兄様なら小田原城に行ったよ」


ゆきなの言葉にオレは周囲をうかがってから告げる。


「オレも行ってくる」


「じゃあ、あたしもね」


「お前、北条家に用なんてねえだろ」


「はあ? 嫁が邪魔っていうことは、あんた浮気だろ。浮気しにいくんだろ!」


オレは呆れ顔でゆきなの手を引き小田原城に向かった。


 小田原城に入ろうとすると門番はゆきなを止める。オレはそれを無視して城内に入っていった。


「小次郎、浮気はダメだぞ。浮気は!」


ゆきなの叫び声が城門で響いていた。


 評定の間に着くとオレはすんなりと中へ通された。北条氏政はオレを見るなり苛立ちを隠せない。


「小次郎、この大事な時に三年もどこへ行っておった」


「越前にございます」


北条氏政の問いに素直にオレは答えるが、どうもそれが北条氏政としても気に食わないらしい。


「越前だと! 武田の駿河侵攻の報は越前に届かなかったか?」


「さあ⋯⋯」


北条氏政の問いをオレは笑い飛ばす。


「まあよい。して、報告は?」


「織田・徳川連合軍三万は越前攻めに出る模様」


オレは北条氏政に報告する。


「朝倉とやるのか? 浅井の動きは?」


オレの言葉に親方(こたろう)が訊いてきた。


「この後、織田・徳川連合軍と朝倉・浅井連合軍の大戦(おおいくさ)になります」


「まことか……」


オレの言葉に北条氏政は言葉を失う。


「して、某は武田信玄の首級でも取ってくればよいのですか?」


オレの言葉に評定の間はざわつく。


「武田が富士口へと出陣して駿東郡への攻勢を強めてきておる。お主は韮山城に入り、武田軍を向かい討て!」


「それは風魔小次郎に対する命でしょうか。橘左衛門佐に対する命でしょうか」


オレの言葉に北条氏政はさらに苛立つ。親方(こたろう)は静かに首を横に振る。


「己で考えろ!」


「承知」


オレの言葉にさらに苛立つ北条氏政はものを投げつけてくるが、オレは無視して評定の間を出ていった。


 城門ではゆきながまだ門番とやりあっている。くノ一なんだから一度引いて忍び込めばいいものを……。突撃系くノ一だからそんな搦手などできんのだろう。ゆきなの首根っこを掴んで、子猫を連れ去るかのようにしてオレは韮山城に走っていった。韮山城に到着すると城主の北条氏規に着陣の挨拶にいった。


「小次郎聞いたぞ」


「何をでございますか?」


「何をって、お主また兄上とやったらしいじゃないか」


なんだよ。

こういうことだけ伝わるのが早いんだよ。


オレが黙り込んでいると北条氏規は笑いながら言ってきた。


「まあ、風魔の疾風が着陣したとあったら武田軍も怖気づくわ」


オレは少し首を振りながら部屋を出ていった。


「こんなところで遊んでいる場合じゃないのにね」


 武田軍の韮山城への攻撃は八月で、現在は六月ということもありしばらくは暇を持て余していたが、やがて武田軍が攻撃を開始し始めると忙しい日々を過ごした。もっともオレは在城で後方支援を行うといういわば窓際族扱いである。どうやら北条氏政の嫌がらせのようだ。どうやらではなく、絶対と言い切ってもいい。ゆきなはというと水を得た魚のように戦場を駆け巡っている。やはり、突撃系くノ一は戦場でこそ輝くのであろう。


 ある日、突如として武田軍が兵を撤退させていく。まあ、オレの知っている歴史でも韮山城攻略は失敗しているので当然の結末なのであるが……。


「小次郎くん、歴史変えてしまったら困るんだよねって何回言わせるんだよ」


突然、ヴィルがそう言ってきた。


「おいおい、オレの知ってる歴史でも韮山城攻略戦は武田の敗北だぞ。どこも問題ねえじゃねえか」


ヴィルが首を横に振り、こっちに駆け寄ってくるゆきなを指差す。


ん?


「小次郎やったよ。穴山梅雪の首級取ったよ!」


なるほど⋯⋯。


オレの目の前がグニャリと歪んだ。


 永禄十三年四月、どうやら信長と謁見する前の京らしい。今回は信長と会わずに直接金ヶ崎に行くことにした。


何か考えでもあるのかって?

もちろん、そんなものはない。

ただの気まぐれだ。

リセットされれば、元の木阿弥。

もう、このゲームをエンディングの本能寺の変までスキップしたい気分だ。


エンディング?

このゲームの勝利条件って何だ?


オレがそんなことを思っていると金ヶ崎城に到着した。


 元亀元年四月、越前の朝倉領に侵攻した織田・徳川連合軍は天筒山城を皮切りに敦賀郡の朝倉の城に攻撃を仕掛けてきた。この後は金ヶ崎城攻め。オレは動かない。今回のオレの仕事は北近江からの知らせをシャットアウトすること。どこまで関与したらアウトでどこまでならセーフなのかがわからない状態では勝利条件を模索できない。とりあえず転生者のゆきなが穴山梅雪を討ち取ってもアウトだった。ゆきなが転生者だからアウトなのか、穴山梅雪が武田滅亡のキーマンだからアウトなのかハッキリしない。


オレはそんなことを思い、北近江からの知らせをシャットアウトし続ける。


やがて、北近江から浅井の大軍が金ヶ崎城に向かい進軍していった。オレはそれを静観するだけ。

おそらく織田・徳川連合軍は朝倉軍と浅井軍に挟み撃ちをされ、壊滅状態になる。もっとも金ヶ崎の退き口自体が壊滅状態なんだから影響ないような気がする。誰か今後の歴史のキーマンでも死なない限り⋯⋯。


オレは近江朽木に場所を移して信長を待つ。しばらくすると騎馬の一団がやってくる。オレは倒木により騎馬の足を止めて騎馬の一団の前に立つ。


「織田殿の一団とお見受けする。信長殿は何処か?」


オレがそう訊くと騎馬から一人のリーダーらしい武者がおりてきた。


「某の名は前田利家。お主は?」


「某は風魔小次郎。織田殿が某を捜していると聞きつけて織田殿に会いに京に上ったのであるが、入れ違いで出陣されたと聞きここまで追ってきた」


「そなたが風魔小次郎殿か。これは失礼した。残念だが上様は金ヶ崎で討ち死にされた。間もなくここにも追手がくる。そなたも逃げるといい」


信長が討ち死でもリセットなし?


なんだ。

この状況?

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