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ヘスペリデスの黄金の林檎  作者: ful-fil


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閑話:神話の英雄についてちょっと解説

人名や神々の名前に複数の表記がある場合は、私の好みに合うものを選んでいます。ご了承ください。

 ギリシア神話には英雄がたくさん登場します。

 その中で本作に真っ先に出てきたのはアキレウスですね。

 彼も面白いですが、他の英雄もそれぞれ魅力的です。

 今回は相互の関係も交えて、ギリシア神話の英雄たちについて解説していきたいと思います。



1・元祖英雄ペルセウス


 まずはペルセウス流星群などでお馴染みの英雄ペルセウスについてご紹介します。


 彼はゼウスの息子です。

 ミケーネ王朝の創始者であり、代々彼の子孫がミケーネの王座に就くことになります。

 このミケーネ王に誰がなるかが意外とギリシア神話の鍵の一つだったりもするのですが……。

 それはともかく。

 ミケーネ王朝が繁栄した時代が紀元前1600年から紀元前1100年の間。

 創始者であるペルセウスはすなわち紀元前1600年頃に即位したことになります。

 これはギリシア神話でも最も古い時代の英雄で、彼より前には人間の英雄はほとんど見当たりません。


 ゼウスの血を引く半神である彼は神々から色々とサポートを受けています。

 領主から無理難題(メドゥーサの首を取ってこい)を押しつけられたら、アテナとヘルメスが世話を焼きまくって各方面から複数の強力なマジックアイテムをかき集め、万全の装備で挑みました。

 その帰り道ではヘスペリデスの園に寄り道してアトラスと揉めたりもしたようですが、メドゥーサの首を見せることで勝利。

 見せるだけで相手が石化するスーパーアイテム:メドゥーサの首を手に入れた彼は怖いものなしです。

 生贄にされかけていた王女アンドロメダもサクッと救って嫁にしました。

 王位に就いた後は酒の神デュオニュソスとも一戦交えています。

 このデュオニュソス、ご本人(本神?)はともかく、引き連れている信者がやべぇやつらでした。

 熱狂的信者というより発狂した信者、マイナス(またはマイナデス)と呼ばれる女性信者たちは狂乱しまくって狂暴そのもの。

 出会う相手を切り裂き、バラバラにするという恐るべき集団でした。

 その狂暴な女性信者集団をペルセウスは軍を率いて返り討ち。

 デュオニュソスをも一度は殺したそうですが、どういうわけかデュオニュソスは冥府から舞い戻り、両者は和解したそうです。

 殺しても生き返ってくる相手といつまでも戦争していられませんからね。

 ミケーネ王朝はデュオニュソスの神域を定め、神殿を建設しました。

 これが後にテセウス&アリアドネと絡んでくるのですが……。

 ペルセウスは天に召され、ペルセウス座になりました。


 ゼウスの血を引き、神々から多大な助力を受けて、数々の強敵に勝利した元祖英雄。

 「ペルセウスの子孫である」ということが後の英雄たちにとって名誉であり、正当なる血筋の証明になっていきます。

 日本人が源氏や平氏の子孫を名乗るようなものですかね。


2・怪力無双、ヘラクレス


 第4代ミケーネ王に仕えた英雄です。

 ヘラクレスはペルセウスのひ孫にあたりますが、父親はやっぱりゼウスです。

 ゼウス、ペルセウスの孫娘に手を出して孕ませました。

(何やってんだこのオヤジ、自分の息子の孫娘って自分のひ孫じゃないか、手出すなよまったく)

 ペルセウスの時代は紀元前1600年頃でしたが、ヘラクレスが活躍したのはそのおよそ300年後、紀元前1300年頃です。

 年数と世代数が合わない気もしますが、まあ神話なので皆さん長生きだったのでしょう。

 とにかくヘラクレスが生きた時代、紀元前1300年ごろはミケーネ王朝の全盛期でした。

 約3万人が城壁の中で暮らしていたそうですから、都市国家としてはかなりの規模です。

 その頂点である王座に誰が座るかは古代世界において大問題でした。

 ゼウスとしてはヘラクレスを王位につけてやりたかったようなのですが、神々の女王ヘラが妨害工作に出ました。

 ヘラはゼウスの浮気で出来た子であるヘラクレスの存在が許せなかったのです。

 ヘラクレスが生まれようとしているその時、

「今日生まれる最初のペルセウスの子孫がアルゴス(ミケーネ王朝の都市名)の支配者となる」

 なんてゼウスが宣言しちゃったものですから、もう大変。

 女性の出産は自分の領分と言わんばかりに、ヘラは他の子を先に生まれさせました。

 この時はヘラがゼウスを出し抜きましたが、その後、ゼウスは我が子を不死身にするため、ヘラの気持ちを無視してヘラの母乳をヘラクレスに吸わせるという暴挙に出ます。

 ヘラが怒り狂うのも無理ないですね。

 それから長い間、ヘラクレスはヘラに憎まれ、命を狙われたり、嫌がらせのようなことをされたりします。

 そのほとんどを力ずくで突破していくのがヘラクレスのヘラクレスたる所以なのですが……。

 赤ちゃんの時に毒蛇を叩き殺すわ、成長後は物理無効の怪物を絞め殺すわ、川の流れを変えるわ、各種モンスターを踏みつぶしたり生け捕りにしたり、水の神ネレウスも捕まえちゃうし、ケルベロスも捕まえちゃうし、邪魔な山脈は真っ二つにするし!

 しかもこれらをほとんど素手で成し遂げています。

 格闘無双!

 死後は神の一員として迎え入れられ、ヘラとも和解しました。

 ちゃんと星座にもなっていますが、名前は一文字変わって「ヘルクレス座」だそうです。


3・トロイア戦争の英雄アキレウス

 

 第8代ミケーネ王アガメムノンの時代の英雄です。

 ヘラクレスの活躍から百年後くらいに始まったトロイア戦争で活躍しました。

 ほぼ同時代にテセウスがミノタウロスを討伐しています。

 この頃が英雄時代のピークですね。

 トロイア戦争終結後はミケーネ文明は百年ほどで終焉を迎えました。

 ギリシア本土も暗黒時代に突入し、神々も英雄たちも遠い過去の存在になっていきます。


 アキレウスが大暴れしたトロイア戦争の時代、世界一の美女ヘレネも実はペルセウスの子孫だったりします。

 一方、アキレウスはペルセウスの子孫ではありません。

 父方を遡ると7代前が大洋の神オケアノスですね。

 母親は海の女神テティスで、彼女は海の神ネレウス(ヘラクレスの項で出た神様)の娘とも、ケンタウロスの賢者ケイローンの娘とも言われています。

 ネレウスはガイアの子、ケイローンはクロノスの子ですから、どっちにしてもゼウス系ではないティターンの子孫ですね。


 ペルセウスの子孫ではないアキレウスが何故、トロイア戦争最強の英雄なのかというと、ずばり、母親がテティスだったからです。

 テティスは彼女自身が力のある女神ですが、彼女が生む子は父親を超えると予言されていました。

 なので自分を超えられたくないゼウスやポセイドンは求婚を断念。

 超えられてもいいかな、って感じの人間の英雄ペレウスと結婚しました。

 ペレウスは英雄としては小粒ですが、一応アイギーナ島の王の息子で、若い頃に悪さもしましたが、一応罪も償って、色々冒険もした人です。

 ケンタウロスの賢者ケイローンと仲良くなった縁で、テティスと結ばれました。

 このペレウスとテティスの結婚式に黄金の林檎を投げ込んだのが、不和の女神エリスです。

 エリスとアキレウスにこんな関わり合いがあったなんて、世間は狭いですね。


 さて、このテティスがアキレウスを不死身にしようと虐待まがいのことをしたため、それを止めようとしたペレウスとの間に亀裂が入り、二人は別れてしまいます。

 妻に出て行かれてしまっては、ペレウスは赤子を育てることができません。

 仕方なく、育ててくれそうな相手に預けたのですが……なぜそこでケンタウロスの賢者ケイローンに預けたのやら。

 やっぱり母方の祖父だったんですかね?

 結果的に、物理無効の特性にケイローンの適切な指導が加わって、アキレウスはめきめきと強くなっていきました。


 そのまますくすく育っていればよかったのですが、ある日、実母テティスがアキレウスの養育に口をはさんできました。

 予言で、このままだと戦争に連れていかれて死んじゃうと出たから、という理由で、アキレウスに女装させてスキュロス島の王の娘たちと一緒に女の子として生活させることにしたのです。

 思春期真っただ中の男子が、女装で女子の群れに放り込まれるとか、漫画やラノベじゃないんだから!

 テティスも無茶をしたもんですね。

 アキレウスには気の毒ですが、女神には逆らえません。

 女の子として暮らす間にうっかり子供が出来てしまったようですが、まあ仕方がありませんね、テティスが悪いんです。

 結局、苦肉の策も敏腕スカウトマン:オデュッセウスに見破られ、アキレウスはトロイア戦争に参加することになります。


 トロイアに攻め込みたいギリシア軍でしたが、風向きが悪く、船が出せません。

 そこで総大将アガメムノンは神託により、娘イピゲネイアを生贄に捧げることにしました。

 この時、イピゲネイアを呼び寄せるのに「アキレウスと縁談があるから」と嘘をついています。

 これを後から知らされたアキレウスは大反対、「そんなのダメだ、中止しろ」と助命運動を行いましたが、叶わず。

 このことでアキレウスはアガメムノンを嫌いになりました。


 いざ戦場に着いたら、アキレウスはそれまでの鬱憤を晴らすように縦横無尽の大暴れ。

 アキレウスの鎧を見ただけで雑兵は逃げ出す有様です。

 戦いは長引き、アキレウスの周りでも色々ありました。

 アガメムノンには愛妾を取り上げられ、ますます嫌いになりました。

 親友パトロクロスが敵方の英雄ヘクトルに殺されたら、ヘクトルを殺し返しました。

 勇猛な女戦士・アマゾンの女王ペンテシレイアと戦った時には、うっかり殺してしまった後でその美貌に後悔しました。

 それを笑った野郎はサクッと殺してやりました。

 なんだかんだで暴れ放題に暴れた末に、トロイアの王子パリス(戦争の原因になったやつ)に踵を射られて、瀕死の重傷を負ってなお暴れまくってから、ぱったり倒れて死にました。

 死後はべつに星座にも神にもならず、普通に冥府に行ったようです。

 楽園で親友と再会し、楽しく暮らしていたのでしょう……。


 ……本作で転生させられるまでは。



 以上、ギリシア神話の英雄三人について、多少私見の混じった解説でした。

 (参照:Wikipedia)

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