第38話「友人グループ」
皆さん、こんにちは!
第38話「友人グループ」です。
人間、過去を調べ始めると、次から次へと気になることが出てくるもんですね。
しかも、二十年前の話ですよ。
スマホもタイムマシンも、都合よく答えを出してくれるわけやありません。
さて、玲奈の過去に隠された真実とは?
今回も、ゆっくりお楽しみください!
田島さんから、また、連絡が、来た。
「一つ、言い忘れてたことが、あって」
「何ですか」
「あの夜の男の人やけど。出てきた時、少し、立ち止まって、後ろを、振り返ってた。一回だけ。それから、行ってしまった」
「後ろを、振り返って」
「うん。なんか、気になって」
「……ありがとうございます」
それだけだった。
玲奈が、その話を、四人に、伝えた。
「振り返ってた」
健太が、言った。
「うん。一回だけ」
「……なんか、引っかかるな」
「引っかかる?」
「置いてきたのが、意図的なら、振り返らないはずやないですか。でも、振り返った」
「どういうこと?」
「わからんけど。完全に、悪意があった人やったら、振り返らない気がして。でも、振り返った」
「複雑な、感情があった、ということかな」
「そうかもしれない。置いていきたくなかったけど、置いてきた、みたいな」
美咲が、言った。
「……それは、言い訳かもしれない」
「美咲?」
「振り返ったからって、悪意がなかった、とは、言えない。振り返ったのは、後悔かもしれないけど、それで、戻らなかったんやから」
「……そうやな」
「感情的に、判断しない方がいい。振り返ったという事実は、事実として、とっておいて」
「美咲、冷静やな」
「冷静じゃないよ。でも、今は、冷静に、やることが大事やから」
レオスが、言った。
「健太、田島さんに、もう少し聞ける?」
「何をですか」
「当時、玲奈の、友人グループの話が、出てきてない。玲奈が、あの山の近くに住んでた、ということは、近所に、知り合いが、いたはず。田島さんは、何か、知ってるかもしれない」
「聞いてみます」
翌日、健太が、田島さんに、連絡した。
「あの時代、玲奈さんの近くにいた人たちについて、何か、知ってますか」
「そうやな。あの頃、あの辺に、よく集まってた若い人たちが、いたよ。コンビニの近くで、よく、たまってた」
「玲奈さんも、その中に?」
「たぶん、そうやと思う。コンビニで働いてた、明るい女の子、って話やったから、玲奈ちゃんやと思う」
「その中に、男の人は?」
「何人か、いたよ。でも、名前まで、知らんから、詳しくは、言えへんけど」
「……わかりました。ありがとうございます」
健太が、四人に、報告した。
「コンビニの近くで、よく集まってた、グループがあったらしいです。玲奈さんも、その中にいた可能性が高い」
「そっか。その中の、誰かが、あたしを、山に連れていったかもしれん」
「かもしれない」
「……どうやって、調べる?」
「SNSで、探せるかもしれないです。当時、あの辺にいた人が、今も、地元に残ってたら」
「二十年前の人を、SNSで、探すの?」
「できるかもしれないです。地元の、コミュニティとか、同窓会グループとか、使えば」
「……やってみよ」
「はい」
健太が、スマホを、取り出した。
地元の、地名と、年代を、組み合わせて、検索した。
すぐには、出てこなかった。
「難しいですね」
「時間、かかるか」
「でも、続けます。こういうのは、時間かけたら、出てくることが、多いから」
「よろしくな、健太」
「任せてください」
玲奈が、窓の外を、見た。
「なあ、レオス」
「ん?」
「少しずつ、わかってきてる感じがするな」
「そうだね」
「怖いけど、でも、なんか、落ち着いてきた気がする」
「落ち着いてきた?」
「うん。最初は、知りたいけど、怖い、って感じやったけど。今は、知ることが、当たり前になってきた感じ。前に、進んでる感じがして」
「……それは、いいことだよ」
「そうやな。あんたは、怖いまま?」
「……うん。怖いまま」
「そっか。一緒に、怖がってくれてて、ありがとな」
「一緒に、怖がってるのか、わからないけど」
「一緒やで。あんたが、怖がってくれてるから、あたしも、一人で、怖がってる気がしない」
「……そっか。それなら、よかった」
「うん。ええよ、それで」
よろずやで、おでんが、出ていた。
店長が、鍋を、かき混ぜながら、言った。
「最近、みんな、真剣な顔してるな」
「真剣なことが、あって」
「そうか。まあ、真剣になる時は、なるもんやしな。でも、ご飯は、食べるんやで」
「食べてます」
「ならよかった。ご飯、食べてたら、なんとかなるから」
「店長の、人生訓ですか」
「まあ、そんなもんや」
玲奈が、大根を、食べた。
うまかった。
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(第39話へ続く)
夜、アパートで。
「なあ、レオス」
「ん?」
「振り返ってた、って話、どう思う?」
「……難しいな。複数の解釈が、できるから」
「どんな解釈が、ある?」
「一つは、健太が言ったように、置いていきたくなかった、という感情。もう一つは、ちゃんと、置いてきたかどうかを、確認した、という計算」
「計算か」
「意図的に、置いてきたなら、きちんと、できてるかを、確認するかもしれない」
「……どっちやと思う?」
「わからない。でも、どちらにしても、振り返ったという事実は、残る」
「そっかな。あたしは、後悔やと思いたい」
「後悔やと、思いたいの?」
「うん。完全に、悪意だけで、やった人やとは、思いたくない。どこかに、人間らしいところが、あってほしい」
「……それは、玲奈らしい」
「そうかな」
「そう思う。君は、人を、悪く、見ない」
「見れへんな。怖いけど、恨みたくない、と言ったやろ。それが、あたしやから」
「……うん。それが、玲奈だよ」
「あんたは、どう? その人のこと、どう思う?」
「……置いていかれた玲奈が、二十年、山にいた。それを、思うと、怒りに、近い感覚が、ある」
「怒りに、近い感覚」
「まだ、名前が、うまくつかないけど。でも、玲奈が、そういう目に、遭ったことが、いいことじゃない、ということは、わかる。だから、何か、感じる」
「……ありがとな、レオス」
「ありがとうって、何が?」
「あたしのために、怒ってくれてる感じがして」
「怒りかどうか、わからないけど」
「わからんでも、ええ。そう感じてくれてるなら」
「……感じてる。たぶん」
「たぶん、はいらんで」
「……感じてる」
「それでええ」
窓の外、冬の夜。
玲奈は、少し、眠そうだった。
「なあ、レオス。おやすみ」
「おやすみ」
「また、明日」
「また、明日」
その夜、レオスが、静かに、考えていた。
玲奈は、眠っていた。
調査が、進んでいる。
玲奈の記憶が、戻ってきている。
もうすぐ、自分が、知っていることを、言わなければならない日が、来るかもしれない。
それが、怖かった。
でも、玲奈が、「知りたい」と言っている。
みんなが、動いている。
自分だけが、知っていることを、隠したまま、でいることが、だんだん、難しくなってきていた。
玲奈の、眠った顔を、見た。
穏やかだった。
この顔が、傷ついたら、どうしよう、と思った。
でも、知らないままでいることも、玲奈を、傷つけているかもしれない、と思った。
どちらが、正しいか、まだ、わからなかった。
でも、時間が、なくなってきている、気がした。
翌朝、また、よろずやへの道を、歩いた。
「なあ、レオス」
「ん?」
「今日も、よろずや、行くな」
「行くね」
「なんか、それだけで、ええな」
「それだけで?」
「うん。難しいことが、あっても、よろずや行って、おでん食べて、みんなと話して。それで、ええ。それが、日常やから」
「……そっか」
「あんたも、日常を、続けよな」
「……続ける」
「約束やで」
「……約束」
よろずやの、灯りが、見えてきた。
温かかった。
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今日も、前に、進んでいた。
少しずつ、でも、確かに。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回のポイントは、あの男が一度だけ振り返ったこと。
いやぁ、振り返るという動作ひとつで、ここまで考えさせられるとは。
後悔していたのか、それとも確認しただけなのか。
人間、他人の心の中までは見えませんからね。
見えたら見えたで、知らんほうがよかったことまで見えそうですが(笑)。
そして、レオスにも何やら秘密がある様子。
さて、どうなることやら。
次回もよろしくお願いします!




