第34話「新年」
第34話「新年」です。
新年といえば、初詣。
おみくじ。
そして、新年の抱負。
ただし、この四人が揃うと、
やっぱり普通の新年にはなりません。
「凶って、何パーセント?」
そんなところを気にする宇宙人。
そして、
「凶でもレアやからラッキーや」
と考える玲奈。
考え方ひとつで、
悪いことさえ笑い話になる。
今回は、そんな玲奈らしさが
たくさん詰まった新年になりました。
そしてレオスが願ったのは、
とてもシンプルな願い。
「このまま、続きますように」
新しい一年。
四人は何を感じ、
何を見つけていくのか。
今年も、
『宇宙人、乗っ取られました。』
の物語が始まります。
元旦。
四人は、近くの、神社へ、初詣に、行った。
「初詣」
玲奈が、言った。
「二十年ぶりやな」
「そうだね」
「神社、懐かしい」
「来てたの? 毎年」
「来てたよ。家族と。家族で来てた」
「……家族」
「うん。あいまいやけど、来てた記憶がある。あと、お父さんが、お守り、買ってくれてた。縁起物好きなひとやったから」
「そっか」
「健太は、初詣、毎年、来てるの?」
「来てますよ。実家では。でも、こっちで来るの、初めてです」
「そっか。じゃあ、一緒や」
「ですね」
参拝した。
玲奈が、手を合わせた。
「何、お願いしたの?」
「秘密や」
「そっか」
「レオスは、した?」
「した。でも、何を、お願いするのか、わからなくて」
「わからんかったら、何でも、ええんやで」
「何でも?」
「うん。ええことが、ありますように、でも、ええし。みんなが、元気でいられますように、でも、ええし」
「……僕は、何を、お願いしたかな」
「何にしたの?」
「……このまま、続きますように、って」
「このまま?」
「うん。今が、続きますように。それだけ」
「……ええお願いやな」
「そう?」
「そうやで。シンプルで、ええお願いや」
「……うん」
「おみくじ、引く?」
「引く」
「何が、出るかな」
「大吉がいいです」
健太が、言った。
「そうやな。引いてみよ」
四人で、おみくじを、引いた。
「大吉やった」
玲奈が、言った。
「よかったですね」
「うん。なんか、嬉しいな。大吉」
「健太は?」
「中吉でした」
「ええやん」
「美咲は?」
「吉」
「吉か。ええやん」
「レオスは?」
「……凶」
「え」
「凶、って書いてある」
「……大丈夫ですよ、凶でも。一年に一回しか、使えないおみくじやから、気にしなくて」
「気にしてないよ。ただ、凶の確率が、何パーセントか、気になって」
「気にするところ、そこなんや」
「確率として、気になるだけだよ」
「……一割以下、らしいですよ、凶は」
「じゃあ、珍しい方を、引いたんだね」
「そうですね」
「レアやん」
玲奈が、言った。
「レア、ね」
「そう。めったに引けないやつを、引けたんやから、ラッキーやで」
「凶が、ラッキーなの?」
「考え方次第や」
「……そっか。考え方次第、か」
帰り道。
「なあ、レオス」
「ん?」
「もう一回、生まれてきたいな、あたし」
「え?」
「いや、今も、十分、楽しいんやけど。もし、もう一回、生まれてきたら、今度は、もっと、色々、できるな、と思って」
「もし、生まれてきたら、何したい?」
「うーん。コンビニで、また、働きたい。でも、今度は、もっと、長く。それと、旅行、したい。あたし、行ったことない場所、いっぱいあるから」
「どこへ?」
「沖縄とか、北海道とか。行ったことなかったから」
「行ったことないんだ」
「うん。なんか、いつか行こう、って思ってたら、死んでしまったから」
「……いつか、行けたらいいね」
「ほんまに?」
「ほんまに。今の状態でも、行けるかもしれないから。春になったら、考えてみよう」
「春になったら」
「うん」
「……楽しみやな」
「楽しみにしといて」
玲奈が、少し、笑った。
「あんた、最近、楽しみにしておいて、って言うようになったな」
「言うようになった?」
「うん。最初の頃、そういうこと、言わんかったから」
「……言えるように、なったのかも」
「成長やで」
「成長じゃない——」
「成長やって。言い」
「……成長したかもしれない」
「言えた。そっちやで、正直に言うのは」
「……そっか。まあ、成長したかも」
「よかったやん」
「……よかった」
「素直やん、今日は」
「元旦やから」
「元旦やったら、素直になるんや」
「……なるかもしれない」
「クリスマスに、大晦日に、元旦に、素直になるな、あんたは」
「……イベントが、後押しをしてくれるんだよ」
「ふふ。ええやん、それで」
新しい年が、始まっていた。
玲奈が、空を、見上げた。
青い空。正月の、澄んだ空。
「ええ年に、なるな」
「ええ年にしよう」
「うん。一緒に、ええ年にしよな」
「一緒に」
「約束な」
「……約束」
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(第35話へ続く)
初詣の帰り。
「お腹、空いたな」
「空きましたね」
「どっか、食べに行く?」
「元旦って、開いてる店、少ないですよ」
「そっか。ファミレスは、開いてるかな」
「開いてると思います」
「じゃあ、ガスト行こ」
「行きましょうか」
四人で、ガストへ、入った。
「あ、ドリンクバー」
「元旦でも、ドリンクバーは、ある」
「変わらんな」
「ドリンクバーは、変わらない」
「今年も、攻め方、一緒や」
「コーラ、オレンジ、コーヒー?」
「そう。でも、今日は、元旦やから、特別に、ホットチョコレートも、追加する」
「増やすんですか」
「元旦やから」
「元旦やと、増えるんですか」
「増える。特別な日は、一個多くていい」
「……なるほど」
「レオスは、何にする?」
「……コーヒー」
「またコーヒー?」
「コーヒーが、一番、好きかもしれない」
「スラムダンク、みそ汁、よろずや、コーヒーか。好きなもの、増えたな」
「増えてきた」
「今年、もっと、増えるな」
「増えたらいいね」
「増えるって。やってみたら、楽しかった、の繰り返しやから」
「……うん。やってみる」
席に、座った。
「今年の、抱負とか、あります?」
健太が、聞いた。
「抱負って、めずらしいな」
「元旦やから」
「元旦やからか。えーと、あたしは」
「うん」
「来年のことを、考えながら、今年を、生きたいな」
「どういう意味?」
「来年の、この日も、みんなで、ガスト来れるように、今年、大事に、過ごしたい」
「……ええですね、それ」
「健太は?」
「採用試験、受かりたいです」
「がんばり」
「がんばります。美咲は?」
「うち?」
「うん」
「……やりたいこと、見つけたい」
「見つかるよ、きっと」
「きっと、か」
「きっと」
「根拠は」
「美咲やから」
「それ、根拠じゃないやろ」
「玲奈さんっぽくなってきましたよね、それ」
「健太、うまいこと言うな」
「そうですか?」
「うん。玲奈さんぽい」
「ありがとうございます。レオスさんは?」
「抱負、ですか」
「うん」
レオスが、少し、考えた。
「……今年は、もっと、感じたい」
「感じたい?」
「うん。色々なことを、データじゃなくて、感じる、ことを、もっと、したい」
「ええ抱負やな」
「……そう?」
「そうやで。あんた、それが、一番、大事なことやから」
「そっか」
「うん。今年、もっと、感じよ。一緒に」
「……一緒に」
「約束」
「……約束」
ドリンクバーの飲み物が、冷めてきた。
玲奈が、ホットチョコレートを、一口、飲んだ。
「うまい」
「うまい?」
「うまい。元旦のホットチョコレートは、格別や」
「元旦やから、うまいの?」
「うん。特別な日は、全部、うまい」
「……なるほど」
「あんたも、感じてみて」
「……うん。感じてみる」
新しい年が、始まっていた。
その夜、こたつで。
「なあ」
玲奈が、言った。
「ん?」
「最近、毎日、ええな、って思いながら、寝てる」
「ええな、って?」
「今日も、ええ一日やった、って。そう思いながら、眠れるのが、ええなって」
「そっか」
「あんたは、そういうこと、思う?」
「……最近、少し、思う」
「何が、ええの?」
「……わからないけど。なんか、ある。ええな、っていう感覚が」
「それでええ。わからんでも、感じてたら、ええから」
「……うん」
「おやすみ、レオス」
「おやすみ」
翌朝、また、玲奈が、言った。
「なあ、レオス」
「ん?」
「今日も、ええ天気やな」
「そうだね」
「こういう日は、外、出たくなる」
「出よう」
「バイトあるけど」
「バイトの前に、少し」
「……行こう」
「あんた、最近、誘ったら、すぐ来るな」
「来てもいいでしょ」
「ええよ。嬉しいから」
「……そっか」
第34話「新年」、いかがでしたでしょうか。
年が変わっただけなのに、
なぜか少しだけ新しい気持ちになる。
元旦というのは、
不思議な日ですね。
玲奈は二十年ぶりに初詣へ行き、
家族と来ていた頃の記憶を思い出しました。
そして、レオスが願ったのは、
「このまま、続きますように」
という願い。
最初は地球を調査するために来た宇宙人が、
今では「今の生活が続いてほしい」と願っている。
それだけでも、
かなり大きな変化だと思います。
そして、おみくじはまさかの「凶」。
普通なら落ち込みそうなところを、
「レアやん」
で済ませる玲奈。
この辺りは、
本当に玲奈らしいですね。
悪いことが起きないことだけが
幸せではない。
起きたことを、
どう受け取るか。
玲奈は、二十年という時間の中で、
それを自然に身につけてきたのかもしれません。
そして今年のレオスの抱負は、
「もっと、感じたい」
でした。
データではなく、
自分自身で感じること。
楽しい。
美味しい。
嬉しい。
まだ名前のつかない感覚も含めて、
今年のレオスは、
さらにたくさんのものを知っていくことになります。
そして玲奈にも、
新しい願いができました。
旅行に行きたい。
沖縄。
北海道。
生きていた頃に、
「いつか行こう」と思っていた場所。
その「いつか」が、
今度は本当に来るかもしれません。
新しい年。
四人にとって、
どんな一年になるのでしょうか。
今年も、
一緒に見届けていただけたら嬉しいです。




