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神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


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第85話 白岩の異変と暇つぶしの人助け ~石を食う見えない脅威~

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


 マキアヴェス――前世の歴史に名を残した、冷徹で苛烈な政治思想家を彷彿とさせる名を持つ老隠者。彼がこの『白岩のオアシス』に庵を構えていたのには、明確な理由があった。


 このオアシスこそが、大砂漠の最奥に眠る要塞ダンジョンに最も近い「最終中継基地」だったのだ。


「分析。現在、ダンジョンの座標周辺の熱量および空間歪みは臨界点に達していません。マキアヴェス殿の言う『三つの赤い星が砂丘に沈む夜』……つまり天体の完全同期が起きるまで、あと丸三日はこのオアシスで待機する必要があります」


 書庫を出てビークルに戻った後、サフィが天体観測データをもとにスケジュールを弾き出した。


「なるほどな。急いて砂山を掘り返しても入り口は見つからないわけだ。……よし、三日間の足止めか。新しい外套の着心地を確かめるにはちょうどいいな」


 俺は幻影蜘蛛の純白の外套のフードを深く被り、ビークルのシートに深く背を預けた。


 砂漠の真ん中とは思えないほど涼しく快適な車内。だが、ただ三日間じっと星を眺めて待つだけというのも、いささか退屈がすぎる。


「お兄ちゃん、お外がなんだか騒がしいよ?」


 窓の外を眺めていたルビィが、小さな手を上げて広場の方を指差した。


 見れば、オアシスの象徴である巨大な白い石灰岩の根元、そこから湧き出る美しい泉の周りに、大勢の住人や衛兵たちが集まって何やら深刻な顔で議論を交わしている。

 市場ほどではないにせよ、旅人やキャラバンで賑わっていたはずのオアシスに、どこかピリピリとした不穏な空気が漂い始めていた。


「あら、本当に。皆様、酷く困惑した表情を浮かべていらっしゃいますわね」

「水が出なくなっちまったとかか? 砂漠じゃ死活問題だが……」


 俺はビークルのドアを開け、白衣の襟を正しながら外に出た。


「よし、ちょっと様子を見に行ってみよう。三日間の暇つぶしだ。お世話になるオアシスに何か困り事があるなら、錬金術師の手を貸してやるのも悪くない」

「賛成ですわ、ご主人様。退屈しのぎにはちょうど良い運動になるかもしれませんわね」


 アミィが鉄扇を軽く叩き、ダイヤやルビィ、そして双子も後に続く。

 泉のほとりへ近づくと、衛兵たちの怒鳴り声と、オアシスの管理責任者らしき男の悲鳴のような声が聞こえてきた。


「バカな! なぜこんな短期間にこれほど崩落が進んでいるんだ!? このままでは、白岩の神殿の土台が自重でへし折れて泉を完全に埋め尽くしてしまうぞ!」

「し、しかし隊長! 地下の空洞を調査させようにも、内部から強烈な『酸性のガス』が吹き出してきており、防護服を着た作業員でさえ数分と保たずに退避せざるを得ない状況なのです!」


 男たちの会話を小耳に挟んだ瞬間、俺の隣でサフィの眼鏡がピカンと鋭く光った。


「マスター。空気中の成分をスキャンしました。……微量ですが、先日交戦した『砂竜サンド・ワーム』の体液に酷似した、高濃度の有機酸および未知の魔力毒素を検知。さらに、白岩の内部から不規則な咀嚼振動を感知しています」

「……ほう。トカゲの次は、石を食う虫ってわけか」


 俺はニヤリと笑った。

 どうやら、ダンジョンが近いこのオアシスには、遺跡の周辺から溢れ出した『厄介な副産物』が定期的に迷い込んでくるらしい。


「あの、そこのお役人さん。ちょっと話を聞かせてくれないか?」


 俺が声をかけると、頭を抱えていた責任者の男が、怪訝そうな顔でこちらを振り返った。


「なんだ君たちは? 見慣れない顔だが……今はそれどころじゃない。観光客なら泉から離れていてくれ!」

「観光客じゃなくて、しがない錬金術師さ。あんたたちの抱えてる問題、俺ならすぐに解決できるかもしれないぜ」

「錬金術師だと……?」


 男は半信半疑の目を向けたが、背に腹は代えられない状況なのは明らかだった。彼は深い溜息をつき、崩れかかった白岩の根元を指差した。


「……実は、この白岩の地下空洞に『溶解石百足メルト・センチピード』という魔物の群れが巣食ってしまったらしいのだ。奴らは強力な酸で岩を溶かして喰う魔物。このままではオアシスの地盤が沈下し、泉が完全に砂に飲まれてしまう。だが、空洞内は奴らの吐く酸性ガスが充満していて、討伐隊も中に入れない状況でね……」

「なるほど。毒ガスが充満する閉鎖空間で、しかも岩盤が脆くなっているから派手な魔法も使えない、と」

「その通りだ。下手に衝撃を与えれば、それこそ一瞬で白岩は崩落する。……錬金術師殿、解決策はあるのか?」

「ああ、お安い御用だ。俺たちに任せてくれ」


 俺はアイテムボックスから、先日の野営で作った『特製・虫除けのお香』を取り出し、さらに海から持ってきた『アルカリ性の海魔の甲殻粉末』を混ぜ合わせて即席の錬成を行った。


「サフィ、ガスの成分を完全に中和する中和結界を展開するぞ。アミィとダイヤ、地下空洞の奥へ風を送り込んでくれ」

「承知いたしましたわ!」


 俺が錬成した『中和香』に火をつけ、アミィが鉄扇で柔らかな風を起こすと、白煙が地下空洞へと吸い込まれていく。


 数分後。むせ返るような酸の臭いは消え去り、澄んだ空気が地下から流れてきた。


「ガスが……消えた!? 信じられん、これほど早く……!」

「ガスを消しただけじゃない。この煙には百足どもを麻痺させる成分も混ぜてある。あとは中で伸びてる虫の掃除と、ボロボロになった岩盤の補修だけだ。お役人さんたちはここで待っててくれ」


 驚愕する責任者を残し、俺たちは白岩の地下へと足を踏み入れた。


 ◇


 薄暗い地下空洞は、酸で溶かされた岩が鍾乳洞のように垂れ下がり、酷い有様だった。

 奥に進むと、牛ほどの大きさがある不気味な巨大百足たちが、中和香の煙を吸い込んで完全にひっくり返り、足をピクピクと痙攣させていた。


「うげっ、気持ち悪いですわ……」

「お兄ちゃん、ハンマーで叩いたら洞窟が崩れちゃうよね?」

「ああ、ルビィは待機だ。アミィ、ダイヤ。振動を起こさずに急所を斬り落とせるか?」

「お任せくださいませ。動けない虫の掃除など、造作もありませんわ」


 アミィの極細の水刃と、ダイヤの音の出ない熱線が、静かに、そして正確に巨大百足たちの急所を穿っていく。

 振動を立ててはいけないという「慎重な狩り」の流儀は、砂竜狩りの一族に教わった教訓が見事に活きていた。


「よし、掃除完了だな。あとは……この溶けかけた土台を直すだけだ」


 俺は両手を崩れかけた岩盤に押し当てた。

 ただ塞ぐだけでは、自重に耐えきれずにいずれ崩れる。俺は地下水脈のミネラル成分を抽出・凝縮し、強固な大理石の柱を再構築する錬金術を発動させた。


「『錬金再構築アルケミー・リビルド・大理石の支柱マーブル・ピラー』!」


 青白い魔力の光と共に、泥のように溶けていた岩盤が凄まじい密度で圧縮され、神殿の柱のような純白で屈強な石柱へと生まれ変わった。これなら、何百年経ってもオアシスの重みを支えきれるだろう。


「……マスター。岩盤の耐久値、元の状態の約300%に向上しました。完璧な仕事です」

「へへっ、いい暇つぶしになったな」


 地上に戻ると、俺たちは責任者から泣いて感謝され、お礼としてオアシスで一番の宿の特等室を無料で提供されることになった。


 ふかふかのベッドと、最高級の砂漠のフルーツ。

 俺たちはその極上の客室でくつろぎながら、三日間の待機時間を優雅に過ごした。

 ダンジョンの知識を頭に叩き込み、装備の手入れをし、双子とルビィがベッドの上ではしゃぐのを眺める。


 そして――運命の三日目の夜が訪れた。


「……マスター。天体同期、完了します。三つの赤い星が、砂丘の彼方に沈みます」


 サフィの静かな報告に、俺は客室の窓から夜空を見上げた。


 西の空の低い位置に、血のように赤い三つの星が、ゆっくりと、完全に一直線に並んで地平線へと吸い込まれていく。


「いよいよだな」


 俺は幻影蜘蛛の外套を羽織り、仲間たちを振り返った。

 全員の顔に、緊張と、それを上回る冒険への期待が満ちている。


「準備はいいか、お前ら」

「いつでもいけますわ、ご主人様」

「悪いダンジョン、やっつけに出発進行ー!」


 俺たち錬金術師一行は、深夜の白岩のオアシスを静かに出発した。


 目指すは、蜃気楼の向こう側に現れる、大砂漠の最深部。すべての準備と知識を携え、俺たちはいよいよ『砂漠の要塞ダンジョン』へと、その足を踏み入れるのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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