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神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


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第80話 峡谷の隠れ井戸と星詠みの隠者 ~二つ目のパズルのピース~

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


 巨大なバザール・オアシスを出発してから、三日が経過した。


 俺たちの旅のスタイルは、以前の「快適さにかまけたピクニック」から、砂漠の理に寄り添う「本物の旅」へと劇的な変化を遂げていた。


「靴の中、よし! 毛布の裏、よし! 悪い虫さんはいないね!」


 ルビィが自分の靴を逆さにしてバンバンと叩き、安全確認を怠らない。


 日中の最も暑い時間は岩陰で体力を温存し、星が輝き始める涼しい夜から明け方にかけて移動する。市場で買い付けた『幻影蜘蛛の絹布』で作った新しい外套を羽織り、俺たちは星明かりを頼りにビークルを走らせた。


「サフィ、次のオアシスまでの距離は?」

「分析。現在地より北西へ約20キロ。風紋の乱れから推測するに、深い峡谷の底に位置する『隠れ井戸のオアシス』だと思われます」


 サフィの案内に従い進むと、平坦だった砂丘が突如として大きく割れ、巨大な赤い岩壁が両側にそそり立つ、深い渓谷の底へと辿り着いた。


 谷底には風が吹き込まず、静寂に包まれている。

 その最奥に、岩の裂け目から静かに水が湧き出す、小さな美しい泉があった。


「……着いた。静かでいい場所だな」


 市場の喧騒とは打って変わって、人の気配はほとんどない。

 だが、泉のほとりには一つだけ、風化して丸くなった岩をくり抜いたような小さないおりがあり、その前に一人の老婆が座っていた。


 深いシワの刻まれた顔に、夜空の星を映したような澄んだ瞳。彼女は手元の石板に、空の星の配置をカリカリと刻み続けていた。


「夜分にすまない。旅の者だが、泉の水を少し頂いてもいいだろうか」


 俺が慎重に声をかけると、老婆は手を止め、ゆっくりとこちらを見上げた。


「……ふむ。幻影蜘蛛の外套に、風紋を読んで夜を歩く知恵。……ただの迷子じゃあないね。ええよ、水は天からの恵み。好きなだけお飲みなさいな」


 俺たちが泉の水を汲み、渇いた喉を潤していると、老婆はふと眉をひそめ、俺の白衣のポケットの辺りをジッと見つめた。


「……お前さん、ずいぶんと『厄介なもの』を拾い込んできたねぇ。死に急ぐつもりかい?」

「厄介なもの?」


 俺は首を傾げ、アイテムボックスから市場の骨董屋で買った『黒い歯車』を取り出した。


「もしかして、あのホラ吹きの爺さんから銀貨1枚で買った、このガラクタのことか?」

「……やっぱりね。あの臆病者の爺さん、ダンジョンの入り口の手前で拾ったそれを、ただの文鎮か何かだと思って売りつけたんだろうさ」


 老婆は、まるで汚物でも見るかのように黒い歯車を睨みつけた。


「いいかい。あのダンジョンは、遺跡全体が一つの『生き物』なんだよ。お前さんが持っているそれは、深層部の防衛機構の心臓を成すパーツの一部さ。……そんなものを持ち歩いていれば、ダンジョンの防衛システムが『自分の臓腑を盗んだ外敵』だと認識して、お前さんを執拗に狙い撃ちしてくる。罠も、魔物も、普通の侵入者の何倍も苛烈になるんだよ」

「なっ……!」


 俺は手元の歯車を見て息を呑んだ。

 ダンジョン全体を敵に回す「呪いの発信機」。爺さんがホラを吹くまでもなく、本当に呪われた(厄介な)アイテムだったのだ。


「なら、こんなもの捨てちまった方がいいってことか?」


 俺が投げ捨てようとすると、老婆はカラカラと喉を鳴らして笑った。


「ヒッヒッヒ……。捨てるか、挑むかはお前さん次第さ。防衛機構のパーツってことは、裏を返せば『深層の物理扉を開ける鍵』にもなり得るんだからねぇ」

「……なるほどな。リスクと引き換えの鍵ってわけだ。錬金術師としては、手放すわけにはいかないぜ」


 俺がニヤリと笑って歯車を仕舞い直すと、老婆は「物好きなこった」と呆れながら、再び水面に映る星空を指差した。


「ま、中に入れればの話だけどね。入り口は『三つの赤い星が砂丘に沈む夜』に、蜃気楼の向こう側にだけ現れる。……だが、砂漠の蜃気楼ってのは『超高熱の魔力波が作り出す空間の歪み』だ。普通に歩いて向かっても、永遠にたどり着くことはできないよ」

「空間が歪んでいるのか……。じゃあ、どうやって中に入るんだ?」


 俺の問いに、老婆は石板をコツンと叩いた。


「『熱砂の雷結晶フルグライト』さ。砂漠の雷が砂を焼いて作るそのガラスには、熱と魔力を吸収する性質がある。雷結晶を削ったレンズ越しに景色を見れば、歪んだ幻影が中和され、ダンジョンへ続く『真っ直ぐな本物の道』だけが視えるようになるのさ。……ま、そんな貴重な石、簡単には見つからないだろうがね」


 その言葉を聞いた瞬間。俺とサフィは、顔を見合わせて不敵に笑った。


「……サフィ」

「はい、マスター。すでに所持しています」


 俺が腰のポーチを開け、市場の屋台で値切って買った『熱砂の雷結晶』を取り出して見せると、老婆は目を丸くして驚愕の声を上げた。


「なっ……!? お前さん、なんでそんなものを……」

「前の市場で、ビークルの断熱材にするために偶然買っておいたのさ。……どうやら俺たち、ダンジョンに呼ばれてるらしいな」


 光の屈折と熱波を、雷結晶の吸熱効果で相殺する。完全に理にかなった錬金術のロジックだ。

 市場での慎重な買い付けが、ここに来てダンジョン攻略のクリティカルな解法に直結したのである。


「……ヒッヒッヒ! こりゃあ恐れ入った。本当に、運命ほしに導かれた連中らしいね」


 老婆は愉快そうに笑い、再び石板に星の軌跡を刻み始めた。


 一つ目のヒントは『現れる時間』。そして二つ目のヒントは『蜃気楼の破り方(雷結晶)』。さらには、厄介な発信機であり深層の鍵である『黒い歯車』。


 静寂な峡谷のオアシスで、俺たちは散りばめられていたパズルのピースを完璧に繋ぎ合わせ、いよいよダンジョンの実体へと迫りつつあった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、

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それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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