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神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


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第70話 泉の漁と足るを知る心 ~錬金術師、獲りすぎない尊さを学ぶ~

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


 大砂駱駝の肥料という「錬金素材」の発見に興奮して夜を明かした翌日の夕刻。

 日差しが和らぎ始めた頃、俺たちはオアシスの中央にある巨大な泉のほとりに腰を下ろしていた。


 透き通った泉の中には、銀色に光る『砂漠マス』という魚が優雅に泳いでいる。

 村の若者たち数人が、腰まで水に浸かりながら、木を削って作った素朴なもりを構えてジッと水面を見つめていた。本日の夕食のための「漁」の時間だ。


「……長いな」


 俺はヤシの木陰からその様子を眺め、思わず呟いた。


 すでに一時間が経過しているが、彼らが仕留めた魚はたったの三匹。魚の動きは素早く、水面の光の屈折も相まって、素手と銛だけの漁はひどく効率が悪く見えたのだ。


「俺の錬金術で投網を作れば、一網打尽にできる。アミィの水流操作で魚を一ヶ所に集めてもいいし、双子の超音波で一瞬だけ気絶させれば、5分でこの泉の魚を全部獲れるぞ」


 俺が指を鳴らして提案すると、隣で村長が穏やかに笑って首を横に振った。


「お気持ちはありがたいが、クロウ殿。それはしてはならない『禁忌』なのだよ」

「禁忌? 大精霊の怒りに触れるとか、そういう宗教的な理由か?」


 俺が尋ねると、村長は静かに泉の水面を指差した。


「いや、もっと現実的な『命の道理』だ。このオアシスの泉は、決して無限ではない。魚たちは泉に生える苔を食べ、そのフンがヤシの木を育て、木陰が泉の水の蒸発を防ぐ。……もし便利な魔法で魚を根こそぎ獲ってしまえば、どうなると思う?」

「……苔が異常繁殖して水質が腐敗し、ヤシの木が枯れ、最終的にこのオアシス全体が砂漠の熱に負けて崩壊する……」

「その通りだ」


 村長は深く頷いた。


「我々が素朴な銛で、時間をかけて少しずつ魚を獲るのには理由がある。苦労して獲るからこそ『今日生きるために必要な分(数匹)』だけで満足できる。簡単に大量に獲れる力を持ってしまえば、人は必ず欲をかき、保存食や交易品にするために『不必要な命』まで奪ってしまうのだよ」

「…………ッ」


 その言葉は、まるで鋭い矢のように俺の胸に突き刺さった。

 サフィが手元の石板を見つめながら、静かに補足する。


「……マスター。村長の仰る通りです。この閉鎖された生態系における砂漠マスの繁殖速度と、村人たちの消費カロリーを計算しました。……彼らの『非効率な手作業』こそが、このオアシスを維持するための『完璧な上限値リミッター』になっています」


 俺は息を呑み、泉で立ち尽くす若者たちを見つめ直した。

 彼らは非効率だから手作業をしているのではない。「獲りすぎないため」に、あえて力を制限し、自然の回復力と歩調を合わせているのだ。


「……俺は、浅はかだったな」


 俺は自嘲気味に笑い、自分自身のこれまでの行動を省みた。


 クラーケンを丸ごと引き上げ、フカヒレを数分で精製し、深海アイスボックスに大量の食材をため込んで「備えあれば憂いなし」と誇っていた。


 もちろん、それ自体は錬金術師としての力だ。だが、その力に溺れ、どんな状況でも「効率よく限界まで搾取すること」が正解だと思い込んでいたのだ。


「どんなに強大な錬金術も、自然の絶妙なバランスを壊してしまえば、ただの破壊兵器にすぎない……。力を誇示するだけじゃなく、『足るを知る』こと。その制限の線引きができる者こそが、本当の錬金術師なんだな」


 俺の呟きを聞いて、アミィやルビィも真剣な表情でコクリと頷いた。

 双子のパールとコーラルも、泉で跳ねる魚を静かに見つめている。


「……マスター。……お魚さん、きらきらしてますぅ……」

「……生きてるって、すごいですぅ……」


 やがて、若者たちが「今日はこれで十分だ!」と笑い合い、数匹の砂漠マスを掲げて泉から上がってきた。


 彼らの顔には、何時間も冷たい水に浸かっていた疲労よりも、今日の糧を得られたことへの純粋な感謝と誇りが満ちていた。


 その夜。

 焚き火でシンプルに塩焼きにされた砂漠マスが、一人につき半身ずつ振る舞われた。

 豪快な海鮮丼や、濃厚なフカヒレスープに比べれば、あまりにも質素な量だ。


「……いただきます」


 俺は、魚の身を丁寧にほぐし、骨の髄まで味わうようにゆっくりと口に運んだ。

 素朴な白身の味。だが、そこには何時間もかけて命と向き合った若者たちの努力と、オアシスという奇跡の生態系が育んだ「重み」があった。


「……美味しいな。今まで食ったどんなごちそうより、体に染み渡る気がするよ」

「ええ。一口一口が、とても愛おしく感じますわ」


 ルビィもダイヤも、いつものように騒ぐことなく、静かに、そして大切に魚を味わっていた。


 力を振るうだけが技術ではない。

 時には立ち止まり、自然の歩調に合わせ、必要な分だけを頂くこと。


 この移動オアシスでの素朴な漁の風景は、俺に「錬金術師としての正しい在り方」と、命に対する深い敬意を教えてくれたのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、

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それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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