第59話 海都のフィナーレと錬金術の水中舞踊 ~飛び入り参加のシンクロナイズド・スイミング~
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
マーメイド・チームの劇的な総合優勝で幕を閉じた『海都杯・大水泳大会』。
だが、祭りの熱気はこれで終わりではなかった。
『さあ皆様! 大会の熱戦の後は、恒例のフィナーレ! 自由参加型の「海中舞踊」の始まりだぁーっ!』
実況の声と共に、湾内には穏やかな波が満ち、様々な種族の若者たちが笑顔で海へと飛び込んでいく。
水面で輪を作ったり、空中に跳ねたりと、種族の壁を越えた「シンクロナイズド・スイミング」の演舞がそこかしこで始まったのだ。
「わぁーっ! すっごく綺麗! お花みたい!」
「各種族が手を取り合って……まさに平和の象徴のような光景ですわね」
ルビィとアミィが目を輝かせていると、不意に俺の袖がクイクイと引っ張られた。
「……マスター。……わたしたちも、あれ、やりたいですぅ……」
「……お歌、歌いたいですぅ……」
なんと、いつもはクラゲのように脱力している双子のパールとコーラルが、自分から「参加したい」と目を瞬かせているではないか。
「お前たちが珍しいな。……よし、そういうことなら、俺たちも飛び入り参加といこう!」
「えっ!? ご主人様、わたくしたちも泳ぐんですの!?」
「当たり前だ。タコ焼きで胃袋は掴んだが、こういう文化交流こそが、真の親善(とバカンスの思い出)になるからな」
俺は立ち上がり、白衣を翻した。
「第5の賢者の遺した『海神の魔術』がある俺たちなら、水棲種族にも引けを取らない見事な演舞ができるはずだ。……サフィ、全員のフォーメーションと同期プログラムの計算を!」
「了解しました。コンマ一秒の狂いもない、完璧なシンクロ率をお約束します」
「ゴルドは海底で『土台』だ! ダイヤは湯気でスモーク演出、プリムローズは水生植物で飾り付けを頼む!」
俺の号令に、仲間たちが一斉に頷く。
「いくぞ! 錬金術師パーティーの水中舞踊だ!」
「「「おーっ!!」」」
ザッバァァァァンッ!!
俺たちは特等席のテラスから、一斉に海へと飛び込んだ。
◇
俺たちが海の中央へ進み出ると、周囲で踊っていた水棲種族たちが「なんだなんだ?」と道を開けた。
陸の英雄たちが水着姿で現れたことに、観客席からもどよめきが上がる。
「さあ、音楽スタートだ!」
俺の合図で、パールが海中で両手を広げ、目を閉じた。
『――アァァァァァ…………♪』
海中に響き渡る、透き通るような女神の歌声。
それに合わせてコーラルが身体をプルプルと震わせ、音波を心地よい『波動』へと変えて湾全体に響かせる。
それは破壊の振動ではなく、海の水分子を優しく揺らす「癒やしの波」だ。
「さあ、踊るぞ!」
サフィの指示が念話で全員に共有され、俺たちのシンクロナイズド・スイミングが始まった。
アミィが紫紺の鉄扇を優雅に振るうと、水流がリボンのように彼女に巻き付き、マーメイドたちも驚くような美しい旋回を見せる。
「ルビィ、跳べ!」
「はーいっ!」
海底で仁王立ちするゴルドの巨大な両手を踏み台にして、ルビィが海面からロケットのように飛び出した!
水しぶきを上げて空高く舞い上がり、空中で美しいきりもみ回転を決めてから、針の穴を通すようなノースプラッシュで着水する。
「おぉぉぉぉっ!!」
「陸の人間が、あんなイルカみたいなジャンプを!?」
観客たちから大歓声が上がる。
さらに、ダイヤが海面すれすれで日傘を開き、微弱な熱線を放った。
「ふふっ、少し『霧』をかけますわ」
ジュワッ……と海面が温められ、幻想的な真っ白な朝靄が水面を覆い隠す。
そこへ、プリムローズが魔力を込めた「発光する海藻」と「海百合の花」を散らした。
俺は錬金術で水中のミネラル成分に干渉し、双子の音波に合わせて海水をキラキラと七色に発光させる。
「素晴らしい……! まるで海の妖精たちの舞だ!」
「おい、俺たちも一緒に踊ろうぜ!」
俺たちの演舞の美しさに当てられたのか、マーメイドやエーメイド、そしてアキュノイドやシャチの姿のドーメイドたちまでが、次々と俺たちの輪の中へ加わってきた。
双子の歌声に合わせて、種族の壁を超えた数百人のスイマーたちが、巨大な一つの幾何学模様を海に描き出す。
中心には俺たち錬金術師の仲間たち。
その周りを、色とりどりのヒレや水流が美しく交差していく。
「……マスター。……みんなで踊るのぉ、楽しいですぅ……♪」
「……お歌、気持ちいいですぅ……」
双子のパールとコーラルが、これまでにないほど嬉しそうに微笑みながら歌い、震えている。
俺も、仲間たちと共に海流に乗り、ただ純粋に水と戯れる喜びを満喫していた。
◇
フィナーレは、全員で手をつないでの大浮上。
海面から一斉に顔を出し、空に向かって水しぶきのアーチを作り上げた。
ワアァァァァァァァァッ!!
港町を揺るがすほどの、割れんばかりの拍手と歓声。
それは勝者を讃えるものではなく、海を愛する全ての者たちへ向けられた、純粋な喜びの音だった。
「ははっ、大成功だな!」
俺が濡れた髪をかき上げながら笑うと、仲間たちも息を弾ませながら最高の笑顔を見せてくれた。
バルバロッサや、町の人々が岸辺からちぎれるほど手を振っている。
「いやぁ、最高のバカンスになったな!」
世界の危機を救うのも、古代の技術を継承するのも大事だが。
こうして見知らぬ街の人々と笑い合い、共に踊る。これこそが、旅の最高の醍醐味だ。
潮風に吹かれながら、俺たちは港町『ポート・セルリア』の温かな空気を、心のアルバムに深く刻み込むのだった。
さあ、海の恵みと新たな仲間(双子)を得た俺たち。
次なる目的地は、果たしてどんな冒険と美食が待っているのだろうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、
ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆の爆発的なエネルギーになります!
ブックマークへのご登録も、ぜひよろしくお願いいたします!
それでは、次回もどうぞお楽しみに!




