第58話 海都の大水泳大会と、四種族の総合戦 ~これぞ真の『大』大会~
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特大タコ焼きの宴から一夜明けた、港町『ポート・セルリア』。
今日は街中が朝から異様な熱気に包まれていた。
「いよいよ本日は、年に一度の『海都杯・大水泳大会』だぁーっ!!」
特設された海上実況席から、魔法の拡声器を使った実況の声が響き渡る。
この大会は、港町を代表する四つの水棲種族――マーメイド、エーメイド、ドーメイド、アキュノイドがそれぞれ数十名規模の「チーム」を組み、多様な競技で総合得点を競い合う、まさに海都最大のスポーツの祭典だ。
俺たちは、昨日のクラーケン討伐の功績でギルドマスター(兼ドーメイド族長)のバルバロッサから贈られた「特等席(海にせり出したVIPテラス)」で、優雅に観戦の準備を整えていた。
「わーい! お祭りだー! お兄ちゃん、あそこにお魚の格好した人たちがいっぱいいるよ!」
「選手の皆様、種族ごとに陣地を分けて気合を入れていますわね」
ルビィがテラスの手すりから身を乗り出してはしゃぎ、アミィが日傘を差しながら微笑む。
俺たちのテーブルには、さっき市場で買い占めてきた『深海エビの唐揚げ』や『ホタテの串焼き』が山のように積まれている。観戦にジャンクフードは欠かせない。
「……マスター。日差しがぁ、ぽかぽかしてぇ……お昼寝に最適ですぅ……」
「……応援はぁ、心のなかでしますぅ……」
特等席の長椅子では、双子のパールとコーラルが既に溶けたクラゲのようにお昼寝モードに入っていた。
「お前ら、せっかくの特等席なんだから少しは起きてろよ。……おっ、第一種目が始まるぞ」
俺が唐揚げを放り込むと同時、スタート地点である巨大な桟橋に、屈強な選手たちが並び立った。
【第一種目:50メートル自由形(完全変身アリアリ)】
「位置について……バンッ!!」
魔法の破裂音と共に、各陣営のスプリンターたちが一斉に海へダイブする。
ここで圧倒的な強さを見せたのは、バルバロッサ率いるドーメイド(水棲ドワーフ)の選手たちだった。
「おおっ!? 着水と同時にデカくなったぞ!」
彼らは海に入った瞬間、魔力を爆発させ、ずんぐりむっくりな肉体を「巨大なシャチ」や「カジキマグロ」へと完全変化させたのだ。
圧倒的な質量とパワーによる水流推進。細かいターンなど不要な一直線のコースでは、他の種族を全く寄せ付けない爆発的なスピードを見せつけ、ドーメイド陣営が上位を独占した。
「力こそパワー! ドーメイドの圧勝ですわね!」
「ですがご主人様、次の種目はそうもいかないようですわ」
【第二種目:10キロメートル遠泳(顔出し義務ルール)】
続く種目は、湾を大きく一周する長距離レース。
しかし、ただの遠泳ではない。「顔(鼻と口)を常に海面から出しておかなければならない」という特殊ルールが課せられていた。
「なるほど。顔を上げて泳ぐと、下半身が沈んで水の抵抗が跳ね上がる。……普段、水中で生活している連中にとっては、一番やりづらい姿勢だな」
案の定、先ほどまで絶好調だったドーメイドやマーメイドの選手たちが、顔を上げた不自然なフォームに苦戦し、次々とスタミナを削られて失速していく。
その中で、見事な集団泳法を見せたのがアキュノイド(水棲人間)のチームだった。
「あのお兄さんたち、頭に水風船かぶったまま泳いでるよ!」
「分析。彼らは肺を持たないため、陸上活動時と同じく『ウォーターボール』を顔に装着しています。つまり、顔を海面に出していても、常にエラ呼吸の最適な環境が維持されているのです」
サフィの解説通り、アキュノイドの選手たちは「顔を出すこと」による呼吸の苦しさが一切ない。
彼らは無駄のないフォームで黙々と水を掻き、長距離の持久戦を完璧なペース配分で制して見せた。
【第三種目:障害物・流体操作レース】
レースは進み、今度は「魔法」の力が試される競技だ。
コース上に設置された巨大な岩礁や、不規則な渦潮を抜けなければならない。
ここで輝いたのは、精霊の力を引くエーメイド(水棲エルフ)の選手たちだった。
「美しい……。まるで水が彼らを避けているようですわ」
ダイヤが感嘆の声を漏らす。
エーメイドたちは、自分にかかる水の抵抗を魔法でゼロにし、逆に渦潮の力を利用して加速していく。他の種族が力技で岩を登ったり迂回したりする中、彼らは優雅に海流を操り、涼しい顔で1位を奪い取った。
「すげぇな。各種族の得意分野が完全に分かれてて面白い。ポイントもかなり拮抗してるんじゃないか?」
「はい。現在、ドーメイド、アキュノイド、エーメイドがほぼ同点で並んでいます。マーメイドチームが少し出遅れていますね」
サフィが点数表を確認する。
水中で人魚となるマーメイドは、極めてバランスの良い能力を持っているが、それゆえに「特化型」の競技では一歩及ばない展開が続いていた。
「……マスター。次がぁ、最後の種目ですぅ……」
「……マーメイドのお姉さんたち、すっごく気合入ってますぅ……」
双子がむくりと起き上がり、海を指差した。
【最終種目:四種族混合・水中バトンリレー】
大会の目玉であり、最も配点が高い大一番。
4人が水中でバトンを繋ぐ、純粋なスピードと連携が問われるリレーだ。
「位置について……バンッ!!」
第一泳者が飛び込む。
ここまで出遅れていたマーメイドチームが、ここで真価を発揮した。
彼らの強みは、一点特化の力ではない。魚の尾ビレを持つことによる「圧倒的な水中での旋回性能と、しなやかさ」だ。
「見て! バトンの渡し方がすっごく綺麗!」
ルビィが身を乗り出す。
ドーメイドが豪快にバトンをぶつけ合い、アキュノイドが堅実に渡す中、マーメイドたちは水中で美しいシンクロナイズド・スイミングのようなアクロバットを見せ、一切の減速なしに次の泳者へとバトンをパスしていく。
「見事な連携だ。個人の力じゃなく、チーム全体の『繋ぐ力』でスピードを維持してる」
最終泳者。
四種族の代表がほぼ横一線で並び、ゴールである桟橋めがけてラストスパートをかける。
パワーのドーメイド、スタミナのアキュノイド、魔法のエーメイド、そして連携とバランスのマーメイド。
「いけえええええっ!!」
会場全体が、昨日俺たちがクラーケンを仕留めた時と同じような大歓声に包まれる。
水しぶきが白く弾け、四人が同時にゴール板にタッチした。
静まり返る会場。
実況席の魔導具が弾き出したタイムが、空中の水鏡に大写しになる。
『……決着ゥゥゥーッ!! 僅差で最終リレーを制し、見事「総合優勝」に輝いたのは……マーメイド・チームだぁぁぁっ!!』
「おおおおぉぉぉぉっ!!!」
劇的な逆転優勝に、マーメイドたちが抱き合って涙を流し、他の種族たちもそれを笑顔で讃える。
各種族がそれぞれの長所をぶつけ合い、弱点を補い合った素晴らしい大会だった。
「……ふぅ、いいものを見たな」
俺は最後のエビの唐揚げを平らげ、満足のいく溜息をついた。
生まれ持った肉体と、それぞれの種族が磨き上げてきた技術の結晶。錬金術で作った魔道具では計れない熱さと美しさが、そこにはあった。
「みんな本当にキラキラしてましたわね!」
「海って、色んな生き物がいて、本当に面白い場所ですね」
熱狂に包まれる海都の景色を眺めながら、俺たちはのんびりとバカンスのひとときを満喫した。
海での冒険、美食、そしてスポーツ観戦。
港町での滞在は、俺たちの旅の中でも、ひときわ眩しい思い出として刻まれることになりそうだ。
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