第52話 海都の英雄と、ギルドマスターの頼み事 ~次の獲物は、特大の八本足~
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『海底の箱庭』での優雅なピクニックを終え、港町『ポート・セルリア』に戻ってきた俺たちを待っていたのは、異様な熱気と視線だった。
「あ、あのお方だ! 『白衣の賢者』様だ!」
「世界樹を治し、海竜の大橋を開通させたっていう……!」
「うおおお! 英雄様だぁぁぁ!」
港に上がった瞬間、街中の住人たちから割れんばかりの歓声が上がった。
どうやら、俺たちが海の中で呑気にフルーツポンチを食べている間に、内陸の都市『アルタイル』からの情報が飛竜便などで届き、あっという間にこの街にも広がってしまったらしい。
「分析。私たちの英雄的行為の認知度が、この街において95%を突破しました」
「あらあら、すっかり有名人ですわね、ご主人様」
サフィが眼鏡を押し上げ、アミィがくすくすと笑う。
俺は少しバツが悪くなり、白衣の襟を立てた。
「……目立つのはあまり好きじゃないんだがな」
「お兄ちゃん、みんな手振ってるよー! えへへー!」
ルビィは満更でもない様子で、ぶんぶんと手を振り返している。
すると、人混みを掻き分けて、ギルドの職員(エーメイドの青年)が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「ク、クロウ様! お待ちしておりました! ギルドマスターが、どうしてもお会いしたいと……!」
「ギルマスが? まあ、挨拶くらいはしておくか」
俺たちは歓声を浴びながら、冒険者ギルドの最上階へと案内された。
◇
「ガハハハッ! よく来てくれたな、陸の英雄殿!」
ギルドマスターの執務室で俺たちを迎えたのは、樽のように太く逞しい胴体と、立派な髭を持つ水棲ドワーフ――『ドーメイド』の男だった。
肌は浅黒く、腕には無数の傷跡があり、海の男らしい豪快な潮の香りがする。
「ワシはこの街のギルドマスターにして、ドーメイドの族長でもある、バルバロッサじゃ!」
「俺はクロウだ。……で、族長殿が俺に何の用だ? サインなら色紙に書くぞ」
俺が冗談めかして言うと、バルバロッサは豪快に笑った後、ふっと真剣な顔つきになった。
「いやいや、サインよりも欲しいものがあってな。……単刀直入に言おう。あんたらの『力』を貸してほしいんじゃ」
「力?」
バルバロッサは窓のブラインドを開け、真っ青な海を指差した。
「あんたらが『海竜の大橋』を開通させてくれたおかげで、陸の物流は息を吹き返した。それは本当に感謝しておる。……だが今、この街は『海』からの脅威にさらされておるんじゃ」
「海の脅威……魔物か?」
「うむ。数日前から、沖合の豊かな漁場に、超巨大な魔物が居座りおってな。漁船が何隻も沈められ、漁師たちは恐れて海に出られんのじゃ」
バルバロッサがギリッと歯を食いしばる。
「ワシらドーメイドの精鋭が海中戦を挑んだが、歯が立たなかった。……相手はSランク指定、『暴食の海魔』じゃ」
「クラーケン……!」
その単語を聞いた瞬間、俺の脳内に電撃が走った。
巨大なイカ、あるいは「巨大なタコ」の魔物。
「……バルバロッサさん。そのクラーケンってのは、イカか? それともタコか?」
「え? い、いや、八本足の巨大なタコじゃが……それが何か?」
タコ。
その言葉に、俺の食欲メーターが振り切れた。
(……特大のタコ刺し、タコの唐揚げ、タコ飯、そして……山盛りの『タコ焼き』!!)
前世の記憶が、俺の胃袋を激しくノックする。
エルフの里で「醤油」と「出汁」の技術を確立した今、美味いタコさえあれば、至高の海鮮宴会が開ける!
「……マスター。心拍数と唾液の分泌量が異常に上昇しています」
「……お兄ちゃん、お腹空いたのぉ……?」
サフィとコーラルが俺の顔を下から覗き込む。
俺は口元を拭い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「バルバロッサさん。その依頼、俺が受けよう」
「ほ、本当か!? だが相手は海中での機動力が桁違いじゃ! いくらあんたらが陸の英雄でも、海の中では……」
「心配無用。俺たちにとって、海の中は庭みたいなもんだ」
俺の背後で、パールとコーラルの双子が「……うんぅ、お庭ですぅ……」とふにゃふにゃ同意する。
さらに俺自身も、海神の魔術によって水圧も呼吸も問題ない。
「報酬は金貨などいらん。……倒したクラーケンの『所有権』と、港の広場を半日貸し切らせてくれればいい」
「そ、それだけでいいのか!? ……恩に着るぞ、クロウ殿!」
バルバロッサは涙ぐみながら、俺の手を固く握りしめた。
◇
ギルドを出た俺たちは、すぐさま討伐(食材調達)の準備に取り掛かった。
「みんな、今日の晩ご飯はタコ焼きだ! 最高の生地とソースを錬成するぞ!」
「わーい! タコ焼きー! (よく分かんないけど美味しそう!)」
「タコ……吸盤のコリコリとした食感が楽しめそうですわね」
ルビィとアミィが盛り上がる。
「ダイヤ、巨大な『鉄板』の錬成を頼む」
「お任せくださいまし。熱伝導率の極めて高い、星核鉄の特製プレートをご用意いたしますわ」
「ゴルド、お前は生地をひっくり返すピック(千枚通し)の代わりだ」
「御意! 我ガ指先ヲ、タコ焼キ仕様ニ換装シマス!」
「サフィは出汁と小麦粉の黄金比率の計算! プリムローズは薬味(ネギと紅生姜の代用品)の調達だ!」
「「了解(任せろ)!」」
全員がそれぞれの得意分野を活かし、完璧なタコ焼きパーティーへの布陣を敷いていく。
「……わたしたちはぁ、何をするんですかぁ……?」
双子がぽやーっと聞いてくる。
俺は二人の頭を撫でた。
「お前たちは俺と一緒に海へ潜るんだ。あの巨大な八本足を探し出し、吸盤の奥まで柔らかくするぞ」
「……はぁい……♪」
街の危機を救うため……いや、至高のタコ焼きを腹いっぱい食うため。
錬金術師と絶世の美女たちの、海の大怪獣狩りが幕を開ける。
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