第47話 深海の散歩と、古代語のパスワード ~セキュリティは、壊すより乗っ取る方がスマートだ~
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翌朝。宿屋から出てきた俺たちの姿に、港町の住人たちは目を丸くしていた。
「さあ、海中探索の始まりだ」
俺が身につけているのは、耐水・防刃に優れた『海竜の鱗』から錬成したスマートなウェットスーツ(ハーフパンツ)。もちろんその上にフェンリルの白衣は羽織っている。
そして後ろには、俺が徹夜で仕立てた「専用の水着」を纏った美女たちが控えていた。
「ご主人様、この生地、とても伸縮性があって肌に馴染みますわ♡」
アミィは豊満なプロポーションを強調する紫紺のビキニ。
サフィは機能性を重視した蒼い競泳水着(眼鏡は着用)。
ルビィは元気いっぱいの赤いフリル付きワンピース。
ダイヤは純白のパレオ付き水着に、防水仕様の日傘。
プリムローズは長袖のラッシュガードにショートパンツというスタイルだ。
ゴルドは「我ガ装甲ハ完全防水デス!」と、いつもの赤いボディのままである。
「よし、全員『空気膜のペンダント』と『海流腕輪』は着けたな? 行くぞ!」
ザバーーーーンッ!!
俺たちは桟橋から、エメラルドグリーンの海へと一斉に飛び込んだ。
◇
「わぁぁっ! 息ができるー! 濡れないよー!」
「分析。ペンダントから発生する『空気膜』の強度、完璧です。水圧および水温の変化を完全に遮断しています」
海中に入った瞬間、俺たちの全身を極薄の「透明なシャボン玉」のような空気の層が包み込んだ。
肌のすぐ外側には海水があるのに、顔の周りの空気膜のおかげで陸上と同じように呼吸ができる。
「まずは浅瀬をゆっくり進むぞ。腕輪の出力を微調整しろ」
右手首の『海流腕輪』から緩やかな水流を生み出し、俺たちは海中を飛ぶように泳ぎ出した。
目の前に広がるのは、息を呑むほど美しい海の世界だった。
太陽の光が水面に乱反射し、光のカーテンとなって降り注ぐ。
色鮮やかなサンゴ礁の周りを、宝石のような熱帯魚の群れが泳いでいる。
「ご主人様! 見てください、小さなお魚たちが寄ってきますわ!」
アミィの周りを、黄色や青の魚たちが人懐っこく回遊する。
俺たちを包む空気の膜が、彼らには心地よい泡のように見えるのかもしれない。
「お兄ちゃん! でっかい貝見つけたー!」
ルビィが海底から、自分の背丈ほどもある巨大なシャコガイを軽々と持ち上げてきた。
「こらルビィ、それは『人喰い貝』だ! 食べられそうになってるぞ!」
「えへへー、今日の晩ご飯にするー!」
俺は苦笑しながら、周囲の岩場やサンゴ礁に目を向けた。
海は、陸上にはない「未知の素材」の宝庫だ。錬金術師の血が騒ぐ。
「おっ、これは『星屑のサンゴ』か! 粉末にすれば魔力増幅剤になる。……こっちは『海魔の真珠』! 水属性魔法の威力を底上げする最高級品だ!」
俺は夢中になって海中素材を採取し、アイテムボックスへ放り込んでいった。
サフィは未知の海藻のデータを記録し、プリムローズは水棲植物の採取に精を出している。
時間を忘れて海中を満喫した俺たちは、アイテムボックスが海産物と素材で潤ったところで、いよいよ目的地――深海へと向かって潜行を開始した。
◇
水深3000メートル。
太陽の光が完全に届かなくなった暗黒の深海。
腕輪のライトを頼りに進む俺たちの視界に、それは唐突に現れた。
「……見えたぞ。あれが『沈黙の海都』か」
海底に鎮座する、直径数キロにも及ぶ巨大なガラスのドーム。
防壁結界が青白い光を放っている。
「ご主人様! 何かがこちらに向かってきますわ!」
海底の暗闇から、巨大な影がうねりながら急接近してきた。
全長50メートルは下らない、金属の鱗を持つ青銀の怪物。遺跡の防衛システム――『機械のウミヘビ』だ。
「迎撃シマス!!」
ゴルドが拳を構えるが、ウミヘビが放ったある「音声」を聞き、俺は即座に制止した。
「待て! 手を出すな!」
機械ウミヘビは俺たちの周囲を旋回しながら、低い電子音を水中に響かせる。
『■■■……(対象ヲ検知)。■■……(認証コードヲ提示セヨ)。■■■……(サモナクバ、排除スル)』
古代の錬金術師たちが使っていた「古代語」。
俺はたった一人で機械ウミヘビの巨大な顔の前まで泳ぎ出ると、喉の魔力を震わせ、古代語で応答した。
『(我は真理を探究する者。賢者の星を継ぎし者なり)』
『……! ■■■(魔力波長ヲ確認中)……』
俺はアミィやサフィたち、賢者が作ったオートマタたちを指差した。
『(見よ。我は既に、他のラボの正当なる管理者たちを従えている。我こそが、この海都の新たな主である)』
その言葉と共に、俺自身の魔力(ドワーフの熱核、エルフの精霊力)を少しだけ解放する。
ピピッ……!
ウミヘビの眼が、警戒の赤から穏やかな青色へと変わった。
そして、巨大な頭を深く垂れ下げ、恭しく一礼するような姿勢を取った。
『■■■……(認証完了。歓迎イタシマス、新タナル・マスター)』
「よーし、いい子だ」
俺はウミヘビの冷たい金属の鼻先を撫でた。
「え、えっ……? お兄ちゃん、倒さないの?」
「ああ。こんな優秀なセキュリティシステムを壊すなんて勿体ないだろ。そのままラボの護衛を続けてもらう」
俺がウミヘビに合図を送ると、ウミヘビはドームの一部に向かって特殊な波長を放ち、強固な防壁結界に「ゲート」を開いた。
「さあ、ご案内だ。入るぞ」
俺たちは開かれたゲートを通り、『沈黙の海都』の内部へと足を踏み入れた。
……いや、「足を踏み入れた」という表現は正確ではない。
「マスター。ドームの内部も、外部と同様に『海水』で満たされています」
サフィの言う通り、ガラスドームの内側も完全に水没していた。
空気が一切存在しない。建物も、街路樹に似た発光サンゴも、全てが水中に揺らめいている。
「なるほど。だから『空気膜』の魔道具が必要だったわけか」
この海都は、陸の都市が海に沈んだのではない。
最初から「水中で活動することを前提として作られたラボ」なのだ。
水圧や海流、そして水という優れた魔力伝導体を活用するための、完全なる海洋プラント。空気があっては、その研究は成り立たない。
「これを作った賢者も、アキュノイドのように肺を持たない種族だったのか、あるいは極度の海好きだったのか……」
俺たちは空気の膜に守られながら、水に満たされた美しい古代都市を、海流腕輪の推進力でゆっくりと泳いでいく。
第5の賢者が遺した海の都。
ここには、果たしてどんな未知の技術(と、新たな管理者)が眠っているのだろうか。
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