第46話 多様なる海都と、深海の魔道具 ~港町の海鮮丼は、種族の壁を越える~
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潮の香りが、ビークルの窓から勢いよく流れ込んでくる。
『海竜の大橋』を渡り切り、俺たちはついに、大陸最大の港町『ポート・セルリア』へと到着した。
「わぁーっ! うみだー! 潮の匂いがするー!」
「美しい青ですわ……。太陽の光が乱反射して、まるで宝石のようです」
ルビィが窓から身を乗り出し、ダイヤが日傘を差しながら感嘆の声を上げる。
港には大小様々な帆船が停泊し、活気に満ちた商人たちの声が響き渡っていた。
だが、俺の目を引いたのは、その「住人たち」の異様さだった。
「……随分と、ユニークな街だな」
港の石畳を歩いていると、前から頭に『巨大な水風船』を被ったような人間が歩いてきた。
いや、被り物じゃない。魔法で作られた『ウォーターボール』で顔全体を覆い、その中でエラ呼吸をしているのだ。
「サフィ、あれは?」
「分析。深海環境に適応し、肺を持たない人間種――『アキュノイド』です。陸上活動時は、あのように魔法のヘルメットで呼吸と水圧を維持しています」
アキュノイドの商人は、水風船をポヨンポヨンと揺らしながら、乾物屋と何やら熱心に交渉していた。
さらに視線を海へ向けると、人間の姿をした少女が、桟橋からザパーン! と海へ飛び込んだ。
空中で彼女の足が美しい尾ビレに変化し、見事な人魚となって泳ぎ去っていく。
「あれが『マーメイド』か。陸上では魔力で足を作っているんだな」
「ええ。それに見てくださいませ、マスター。あそこで網を引いている方々……」
アミィが指差した先には、引き締まった筋肉と長い耳を持つ、エルフそっくりの若者たちがいた。だが、彼らの肌は青白く、手足には水かきがある。
「水棲エルフの『エーメイド』ね。そしてあっちで船の修理をしているずんぐりむっくりなのは、水棲ドワーフの『ドーメイド』だ」
プリムローズが補足する。
彼らもマーメイドと同じく、海に入れば下半身が魚になり、本気を出せば「シャチ」や「クジラ」などの巨大海洋生物に完全変化できるという。
「人間、エルフ、ドワーフ……それぞれの水棲進化系が共存する街か。面白い」
◇
「よし、まずは腹ごしらえだ。この街で一番美味い飯屋を探そう」
俺たちが向かったのは、エーメイドの女将が切り盛りする港沿いの海鮮食堂『潮騒の唄』だ。
「いらっしゃい! 陸のお客さんかい? 新鮮な魚、揃ってるよ!」
「ああ。メニューの端から端まで、一番いいところを持ってきてくれ」
俺が白金貨をカウンターに置くと、女将の目が輝いた。
数分後。
俺たちのテーブルに、巨大なすり鉢に盛られた『特上・深海海鮮丼』が運ばれてきた。
「おおお……ッ!!」
ご飯が見えない。
分厚く切られた透き通る白身魚、ルビーのように輝くイクラ、黄金色に輝くウニ。
そして、深海から採ってきたという、巨大な『幻影伊勢海老』がどんぶりの中央に鎮座している。
「いただきまーす!!」
俺たちは一斉に箸を伸ばした。
「……ッ! なんだこれ、コリコリしてて甘い!」
「深海魚特有の脂の乗りですわね。冷たい水で引き締まっていて、臭みが全くありませんわ!」
「ウニが……口の中でとろけます! 海のクリームです!」
全員が猛烈なスピードで丼を空にしていく。
俺は冷えた白ワインで海鮮の旨味を流し込み、女将に声をかけた。
「女将さん、最高だったよ。……ところで、少し聞きたいことがあるんだが。この辺りの海底に、『古代の遺跡』みたいなものは沈んでいないか?」
俺の言葉に、女将はビクッと肩を揺らした。
「……あんた、まさか『沈黙の海都』を探してるのかい?」
「沈黙の海都?」
「ああ。ここから南に数キロ先の海底に、巨大なガラスのドームに覆われた古代遺跡があるんだ。だが……あそこは『魔の海域』だ」
女将は声を潜めた。
「強固な『見えない壁』があって、魚もマーメイドたちも弾き返される。おまけに最近じゃ、その周りを『巨大な機械のウミヘビ』が泳ぎ回ってて、近づく者を無差別に攻撃してくるんだ。……行くのはやめときな」
強固な防壁と、機械のウミヘビ。
間違いなく、俺たちが探している『第5のラボ』だ。
「忠告感謝するよ。……だが、俺たちはどうしてもそこへ行きたい。人間が深海に潜るには、どうすればいい?」
「はぁ、物好きな陸の人間だね……。なら、市場で『海中活動用の魔道具』を買いな」
女将が教えてくれたのは、この世界の海における常識だった。
海底都市には空気が存在しない。
そのため、人間は『空気の膜』を作り出す魔石のペンダントを装備する。この極薄の空気の層が、呼吸を可能にするだけでなく、深海の超水圧からも人体を守ってくれるという。
さらに、移動手段として、手首に装着して海流をジェット噴射のように生み出す『海流腕輪』が存在するらしい。
「ただし、腕輪はピンキリだよ。安いのはすぐ魔力切れを起こすし、高いのは金貨数十枚は下らないからね」
「なるほど。助かったよ」
◇
俺たちは食堂を出て、すぐに魔道具屋へ向かった。
「親父、この店で一番高くて性能のいい『空気膜のペンダント』と『海流腕輪』を人数分くれ」
店主は俺の出した白金貨を見て飛び上がり、店の奥から鍵付きの箱を持ってきた。
「へ、へい! これが最高級品、魔力変換効率90%の特注品でさぁ!」
俺はそれを受け取り、店の外で『鑑定眼』を発動させた。
「……ふむ。確かに悪くない品だが……『沈黙の海都』の防壁を抜け、機械ウミヘビと戦うには、出力が全く足りてないな」
「マスター、改造しますか?」
「当然だ。潜水艦に引きこもるのもいいが、せっかくの綺麗な海だ。全身で海を感じながら泳ぎたいだろ?」
俺はニヤリと笑い、路地裏に簡易ラボを展開した。
買ってきた最高級の魔道具をベースに、俺の手持ちのチート素材を惜しみなく組み込んでいく。
「空気膜の魔石には、エルフの森の『浄化石』をブレンド。これで毒素も無効化しつつ、膜の強度をオリハルコン並みに引き上げる」
「腕輪の動力炉には、火山で拾った『濃縮・火精石』と、ドワーフの『熱エントロピー理論』を組み込んで……超高圧の『水流ジェット』を発生させる!」
ものの数十分で、市販品とは次元の違う『神造クラスの海中魔道具』が人数分完成した。
「よし、これで水深1万メートルでも散歩できるぞ」
俺は完成したペンダントと腕輪を仲間に配った。
「さあ、みんな。宿にチェックインしたら、明日の『深海ダイブ』に向けて準備だ。……動きやすい、海用の装備(水着)に着替えるぞ!」
「「「わーい!!(承知いたしましたわ!)」」」
港町の美味い飯で腹を満たし、深海への切符(魔道具)も手に入れた。
次なる舞台は、光届かぬ海底に沈む『第5のラボ』。
だが、その前に……錬金術師と絶世の美女たちによる、華麗なる水着お披露目会が待っている。
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