第43話 灰色に沈む村 ~見過ごすには、あまりに哀れで~
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『海竜の大橋』での騒動を片付け、ギルドへの義理も果たした俺たちは、再びビークルを走らせていた。
橋を越えれば、そこはもう海沿いの領土だ。
潮の香りが強くなり、植生も少しずつ変わってくる。
「……ん?」
快適なドライブを楽しんでいた俺の視界に、異様な光景が飛び込んできた。
街道沿いに現れた、小さな集落。
だが、そこには人の営みから感じられるはずの「生気」がまるでなかった。
家々の屋根は朽ち落ち、壁は崩れかけている。
畑は干からび、作物は雑草に埋もれ、枯れ木のような色をしていた。
「な、なにここ……? お化け屋敷?」
「分析。……生体反応はあります。ですが、極めて微弱です」
ルビィが窓に張り付き、サフィが眉をひそめる。
俺は少し速度を落とし、村の中をゆっくりと進んだ。
道端に座り込んでいる村人たちがいた。
彼らは一様に痩せこけ、服はボロボロで、泥と埃にまみれている。
俺たちの煌びやかなビークルが通っても、驚く気力すらないのか、虚ろな目でぼんやりと見送るだけだ。
「……酷いな」
貧しい村なら今までも見てきた。だが、ここは違う。
「貧しい」のではなく、「終わっている」のだ。
希望も、明日への活力も、全てが吸い取られたような絶望的な空気が漂っている。
「ご主人様……。どうされますか? 素通りしますか?」
アミィが心配そうに尋ねる。
関わる義理はない。俺たちはただの旅人で、これからバカンスに向かうところだ。
こんな辛気臭い場所に長居する理由は何もない。
だが。
「……チッ」
俺は舌打ちをし、ブレーキを踏んだ。
「止めるぞ。……さすがに、このまま通り過ぎたら飯が不味くなる」
俺たちがビークルを降りると、村の中央にある井戸のそばで、辛うじて立っていた老婆が、よろよろと近づいてきた。
「あ……あぁ……」
老婆の手は枯れ木のように細く、震えている。
彼女は俺の服の裾を掴もうとして、汚してしまうのを恐れたのか、空中で手を止めた。
「旅の……お方……でしょうか……」
「ああ。通りすがりだ」
「そうですか……。何も、ありませんが……どうか、お水だけでも……」
老婆はそう言って、井戸の釣瓶を指差した。
自分たちが飲む水すら惜しいはずなのに、旅人をもてなそうとするその姿。
見れば、井戸の水も枯れかけ、底にわずかに溜まった泥水のようなものしかなかった。
「……おい、婆さん」
俺は老婆の前にしゃがみ込み、視線を合わせた。
「水はいらん。俺たちは持ってる。……それより、教えてくれ」
俺は周囲の惨状を見渡した。
「一体、何があった? 天災か? それとも、誰かにやられたのか?」
ただの不作や貧困で、ここまで人が死んだような目になるはずがない。
何かが、この村の活力を根こそぎ奪っているはずだ。
老婆は俺の顔をじっと見て、その目から一筋の涙をこぼした。
「……『灰』じゃよ……」
「灰?」
「数ヶ月前から……山から『呪いの灰』が降ってくるようになったんじゃ……」
老婆が指差したのは、村の背後にそびえる岩山の方角だった。
言われてみれば、風に乗って微かに、焦げ臭いような、薬品のような異臭が漂ってくる。
「あの灰が畑に落ちてから、作物は枯れ……井戸の水は濁り……若い衆はみんな病に倒れてしまった……」
「……なるほどな」
俺は立ち上がり、岩山を睨みつけた。
ただの火山灰じゃない。俺の『鑑定眼』には、その風の中に混じる微細な「魔力毒素」が見て取れた。
これは自然現象じゃない。
誰かが、あるいは何かが、意図的に汚染物質を撒き散らしている。
「……話は分かった」
俺は老婆の肩に手を置いた。
「少し、詳しく聞かせてもらおうか。……義理はないが、俺はそういう『たちの悪い嫌がらせ』が大嫌いなんでな」
見過ごせば、この村は数日と持たずに全滅するだろう。
俺たちはビークルから降り、腰を据えて彼らの話を聞くことにした。
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