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神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


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第41話 渋滞する物流と、退かない巨岩 ~鮮度ゼロの魚なんて、俺が許さない~

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!



 交易都市アルタイルのギルドマスター室。


 重厚なオーク材の扉が開くと、そこには書類の山と格闘する、立派なたてがみを持つライオンの獣人がいた。


「よ、よく来てくれた……! エルフの里の英雄、錬金術師クロウ殿とお見受けする!」


 ギルドマスターのレオパルドは、威厳ある見た目に反して、酷くやつれていた。

 目の下にはクマがあり、自慢の毛並みもボサボサだ。


「初めまして。……随分と忙しそうだな」

「ああ、見ての通りだ。今、この街は『死活問題』に直面していてな……」


 レオパルドは深いため息をつき、一枚の地図を机に広げた。

 彼が指差したのは、この街から南へ抜ける、海へと続く唯一の街道――『潮風の峠』だった。


「単刀直入に言おう。海への道が、塞がれたのだ」

「塞がれた? 土砂崩れか?」

「いや……『居座られた』のだよ」


 彼が語った内容は、あまりにも理不尽で、冒険者泣かせなものだった。


 数日前、峠のど真ん中に、巨大な『岩山亀アダマン・タートル』が座り込んでしまったのだという。

 その大きさは小山ほどもあり、甲羅はオリハルコン並みに硬い。

 さらに悪いことに、この亀は「冬眠モード」に入っており、どんな攻撃を加えても起きず、テコでも動かない。


「Bランク、Aランクのパーティーを何組も送った。だが、魔法も剣も通じない。物理的に動かそうにも、重すぎてビクともせん」

「なるほど。超重量級のバリケードってわけか」

「おかげで物流はストップだ。特に、海から届くはずの『海産物』が完全に止まってしまった。このままでは、街の魚屋は全滅だ……」


 ――ピクリ。

 その言葉に、俺の眉が反応した。


「……おい、待て。今なんて言った?」

「え? ああ、海産物が届かないと……」

「つまり、今のこの街には『新鮮な魚』がないってことか?」

「そうだ。干物や塩漬けはあるが、生の魚はもう一週間も入ってきていない」


 俺は立ち上がった。


 これは、ただの通行止めではない。

 俺のこれからの旅――「港町での海鮮グルメ」への冒涜だ。

 そして何より、この街で今夜食べようと思っていた夕食のプランが崩壊することを意味する。


「……許せんな」


 俺の声が低くなる。

 部屋の温度が数度下がった(サフィとダイヤが反応したせいもある)。


「レオパルドさん。その依頼、俺が受ける」

「ほ、本当か!? だが、相手はSランク指定の『動かざる山』だぞ!? 倒すのは不可能に等しい!」

「倒す必要はない。『どかせば』いいんだろ?」


 俺はニヤリと笑った。

 力任せに殴るしか能がない脳筋冒険者には無理でも、物理法則を操る錬金術師なら話は別だ。


「報酬は金貨じゃない。……開通した後、一番最初に届く『最高鮮度の魚』を優先的に俺に回してくれ」

「そ、そんなことでいいのか!? 交渉成立だ!!」


 ◇


 俺たちはビークルを飛ばし、問題の『潮風の峠』へと向かった。

 現場に到着すると、そこには絶望的な光景が広がっていた。


 切り立った崖に挟まれた一本道。

 そこを完全に塞ぐように、全高20メートルはある巨大な岩塊――『岩山亀』が鎮座している。

 その手前には、立ち往生した商人の馬車が長蛇の列を作っていた。


「でっかーい! 岩だねこれ!」

「分析。質量推定、5000トン。……これを人力で動かすのは不可能です」


 ルビィとサフィが見上げる。

 亀は完全に甲羅に閉じこもり、寝息(地響き)を立てている。

 周囲には、諦めて座り込む冒険者たちの姿もあった。


「おい見ろ、また物好きが来たぞ」

「無駄だ無駄だ! 俺たちの剣が折れただけだったぜ!」


 野次馬たちの声を無視し、俺は亀の前に立った。


「……ゴルド。お前の馬鹿力でも、こいつは動かせないか?」

「申シ訳アリマセン、主ヨ。持ち上げるコトハ可能デショウガ、足場ガ崩レマス」


 そう。ゴルドのパワーなら持ち上がるかもしれないが、支える地面が耐えきれない。


 なら、どうするか。

 答えは簡単だ。「摩擦」を消せばいい。


「錬金術、開始だ」


 俺はアイテムボックスから、大量の『スライム・オイル』と、ドワーフのラボで生成した『超潤滑ポリマー』を取り出した。


 それを大鍋で混ぜ合わせ、亀の底面と地面の隙間に、高圧水流魔法で流し込んでいく。


「な、何をしてるんだあいつら……?」

「油? 亀を揚げる気か?」


 周囲がざわつく中、俺は仕上げに、亀の後ろに回った。


「ルビィ、ゴルド。準備はいいか?」

「はーい! ハンマーの準備オッケー!」

「出力最大! いつでもイケマス!」


 俺は亀の甲羅に手を触れ、術式を発動させた。


「『質量保存の法則・改変ウェイト・コントロール』――対象の摩擦係数をゼロへ!」


 その瞬間、5000トンの巨体を支えていた地面との摩擦が消失した。

 今のこの亀は、氷の上のパックのようなものだ。


「やれッ!!」


 俺の号令と共に、ルビィのロケットハンマーと、ゴルドのブーストパンチが同時に炸裂した。


 ズドオオオォォォォンッ!!!

 凄まじい衝撃音が響く。

 そして――。


 ヒュンッ……!

 巨大な亀の体が、音もなく滑り出した。

 まるでエアホッケーのように、猛スピードで街道を滑走していく。


「あ……」

「え……?」


 商人たちが口をあんぐりと開ける前で、亀はそのまま街道のカーブに差し掛かり、勢い余ってガードレール代わりの岩を突き破り、崖下の荒野(何もない場所)へとダイナミックに射出された。


 ズズーン……!

 遥か彼方で土煙が上がる。

 亀は目を覚ます様子もなく、ただ場所が変わっただけで安眠を続けているようだった。


「……除去完了」


 俺はパンパンと手を払った。

 目の前には、綺麗に開通した街道が広がっている。


「す、すげぇぇぇぇッ!!」

「一撃だ! あの岩山を一撃で吹っ飛ばしやがった!」

「道が開いたぞぉぉぉ!!」


 ワッと歓声が上がる。

 商人たちは涙を流して俺たちを拝み、馬車を一斉に走らせ始めた。


「ありがとう! これで魚が腐らずに済む!」

「あんたたち、命の恩人だ!」


 商人たちが涙を流して感謝し、馬車を一斉に走らせ始めた。

 俺はその中の一人、一番足の速そうな魚屋の馬車を呼び止めた。


「おい、アンタ。このまま街へ戻るんだろ?」

「へ、へい! もちろんでさぁ!」

「よし。俺たちもすぐ戻る。ギルドで落ち合おう」


 クエストは「報告」するまでがクエストだ。

 俺たちは魚屋の馬車を先導するように、ビークルをUターンさせた。


 ◇


 ――数十分後。冒険者ギルド。

 俺が執務室のドアを開けると、レオパルドが目を丸くして顔を上げた。


「ク、クロウ殿!? もう戻ったのか!?」

「ああ。ただいま」

「早すぎる……! まさか、やはり無理だったか? いや、気にするな。Sランクの亀相手じゃ、撤退も勇気ある……」


 レオパルドが慰めの言葉をかけようとした、その時。

 窓の外から、けたたましい馬車の蹄の音が聞こえてきた。


「新鮮な魚が届いたぞーッ!!」

「『潮風の峠』が開通したぞーッ!!」


 街中が沸き立つ。

 レオパルドはコーヒーを吹き出しそうになりながら、窓に駆け寄った。


「な、なんだと!? もう開通しただと!? ついさっき出かけたばかりだぞ!?」

「だから言ったろ。終わらせてきたって」


 俺は涼しい顔で、クエストの受領書をデスクに置いた。


「確認印、頼むよ。それと……報酬の『現物』が下に届いてるはずだ」


 ◇


 俺たちはレオパルド(呆然自失中)を連れて、ギルドの裏口へと回った。

 そこには、先ほどの魚屋が、水槽付きの馬車から生きのいい魚を運び出していた。


「旦那様! お待ちしてやした! これが約束の品でさぁ!」


 魚屋が満面の笑みで差し出したのは、氷漬けにされた巨大なマグロ……に似た『黒鉄マグロ(アイアン・ツナ)』の最高級部位と、透き通るようなイカ、そして大量の車海老だった。


「おお……! 素晴らしい鮮度だ!」

「最高ですわご主人様! さあ、これをアイテムボックスにしまって、景色のいい丘へ……」


 アミィが提案しようとした、その時。

 俺は血相を変えて叫んだ。


「馬鹿野郎!!」

「えっ!? ご、ご主人様!?」

「何のために物流を回復させたと思ってる! 『今』この瞬間が鮮度のピークなんだぞ!? 移動してる間に味が落ちるだろうが!」


 俺は目を血走らせ、白衣の袖をまくり上げた。


「ここで食うぞ!! 直ちに調理開始だ!!」

「ええーっ!? ギルドの裏口で!?」


 ギルドマスターのレオパルドと魚屋が目を剥くが、俺には関係ない。


 俺はアイテムボックスから『ミスリルの包丁』と『ひのきのまな板』を取り出した。


「ゴルド! 即席のカウンターを作れ!」

「御意! 地面ヲ平ラニシマス!」


 ゴルドが地面を踏み固め、俺が錬金術で石畳を隆起させてテーブルを作る。

 さらに、ダイヤが指先で釜を加熱し、ルビィが団扇で仰いで、秒速で「酢飯」を炊き上げた。


「サフィ、ワサビだ! エルフの里で貰った最高級品をすり下ろせ!」

「了解。……細胞を潰さないよう、円を描いてすり下ろします」


 準備完了まで30秒。

 俺はマグロのサクをまな板に置き、神経を研ぎ澄ませて包丁を入れた。


 ――スッ。

 抵抗がない。脂が乗った身は、刃の重みだけで切れていく。


「へいお待ち! 『極上・大トロの握り』と『活き車海老の踊り食い』だ!」


 ドン! とテーブルに並べられたのは、宝石のように輝く寿司と刺身。

 醤油の香ばしい匂いが、裏路地の生ゴミ臭(浄化魔法で消臭済み)を上書きする。


「いっただきまーす!!」


 我慢の限界だったルビィが、大トロを口に放り込む。


「んん~っ!! とろけるぅ~!!」

「……ッ! 甘いですわ! 噛む必要がありません!」

「車海老……筋肉の弾力が凄まじいです。口の中で暴れています」


 美女たちが恍惚の表情で頬張る。

 俺もエビの殻を剥き、醤油を少しつけて口へ。

 プリッとした食感と、濃厚な甘み。そして鼻に抜けるワサビの香り。


「……優勝だ」


 俺は拳を握りしめた。

 これだ。これを求めて俺はあんなクソデカい亀を吹っ飛ばしたのだ。


「あ、あの……クロウ殿……?」


 レオパルドと魚屋が、ゴクリと喉を鳴らして見ている。

 俺はニヤリと笑い、二人分の皿を差し出した。


「ほら、あんたたちの分もあるぞ。物流開通の祝いだ、食ってくれ」

「い、いいのか!? では……」


 レオパルドがおそるおそる大トロを口にする。

 次の瞬間、強面こわもてのライオンの目から、滝のような涙が溢れ出した。


「ガアアアァッ!! う、美味すぎるッ!! なんだこれは!? 俺が今まで食ってた魚はゴムだったのか!?」

「ひぃぃ! こりゃあ竜宮城の味だぁ! 生きててよかったぁ!」


 むせび泣く獣人と商人。


 ギルドの裏口で、最高級の海鮮パーティーが繰り広げられる。

 通りがかった冒険者たちが、「な、なんだあの美味そうな匂いは!?」「ギルマスが泣きながら寿司食ってるぞ!?」と騒ぎ出したが、俺たちは気にも留めない。


「ふぅ……食った食った」


 数分後。

 皿は綺麗に空になり、俺たちは至福の溜息をついていた。


「やっぱり、料理は鮮度が一番だな」

「ええ。最高のランチでしたわ」


 俺は満足げに包丁をしまい、レオパルド(まだ泣いてる)の肩を叩いた。


「じゃあなギルマス。完了のハンコ、忘れずに押しといてくれよ」


 俺たちは満腹のお腹をさすりながらビークルに乗り込んだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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それでは、次回もどうぞお楽しみに!


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