第38話 清流の魚人と、濁った上流 ~川魚が泥臭いのは、誰のせいだ?~
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ボッタクリ村での騒動を後にした俺たちは、さらに街道を進み、とある大きな川の岸辺でキャンプを張ることにした。
ここは『鏡水川』。
その名の通り、鏡のように澄んだ水面が美しい、大陸有数の清流……のはずだった。
「……ん?」
俺は釣竿を垂らしながら、眉をひそめた。
釣れた魚(アユの一種)を焼いて食べてみたのだが、どうも味が落ちる。
微かだが、泥臭さと、鼻を突くような薬品の臭いが混じっている気がするのだ。
「おかしいな。ここの水は、そのまま飲めるほど綺麗だったはずだが」
「分析。水質データに微量の『重金属』と『未処理魔力廃液』を検出。……上流で何かが起きています」
サフィが川の水をすくい、冷徹に告げる。
その時だった。
ザバァッ!!
目の前の水面が割れ、緑色の鱗肌を持つ半魚人が姿を現した。
「ギョギョッ! 人間か!?」
「うおっ、ビックリした」
現れたのは、水かきのついた手足と、背びれを持つ亜人――『魚人族』だった。
本来なら人前に姿を見せない彼らだが、その顔色は悪く、鱗もどこか艶がない。
「おい人間! ここは我らの縄張りだ! 即刻立ち去れ!」
「待て待て。争う気はない。俺たちはただのキャンプ客だ」
俺がなだめようとすると、魚人は悔しそうに拳を握りしめた。
「嘘をつけ! お前もどうせ、あの上流に住み着いた連中の仲間だろう!?」
「上流の連中?」
「そうだ! 数週間前にやってきた人間どもだ! 奴らが来てから、川の水が臭くなり、仲間たちが病気になり始めたんだ!」
魚人の訴えを聞き、俺の中で点と線が繋がった。
サフィが検出した「廃液」。そして魚の味の劣化。
どうやら、上流に新しく住み着いた人間たちが、何か良からぬものを川に垂れ流しているらしい。
「……許せんな」
俺の声が低くなる。
正義感じゃない。
「俺の晩飯(焼き魚)を不味くした」ことへの、個人的かつ深い怒りだ。
「おい、魚人さん。その話、詳しく聞かせてくれないか?」
「え? お、お前、奴らの仲間じゃないのか?」
「違う。俺は通りすがりの錬金術師だ。……そして、美味い魚を食うためなら、川一つ浄化することすらいとわない男だ」
俺はアイテムボックスから、エルフの里で貰った『最高級の虫下し(解毒作用あり)』を取り出し、魚人に放り投げた。
「これを飲めば、少しは楽になるはずだ。……その代わり、案内しろ。その『迷惑な隣人』とやらの所へな」
魚人は薬を受け取ると、驚いたように目を丸くし、やがて力強く頷いた。
「……分かった! 頼む、俺たちの川を助けてくれ!」
◇
魚人の案内で、俺たちは川沿いを上流へと向かった。
数キロほど進むと、森が開け、無惨に伐採された空き地が現れた。
そこには、急ごしらえの粗末な小屋と、煙を上げる怪しげな工場が建っていた。
そして、建物の裏からは、ドス黒い色の排水が、何の色処理もされずに川へと垂れ流されていた。
「……あれは」
俺は『鑑定眼』を発動させた。
工場から漂う臭い、そして廃棄されている瓶のラベル。
「『違法ポーション工場』か」
正規のギルドを通さず、粗悪な素材と危険な薬品を使って、安物のポーションを大量生産する闇業者。
コスト削減のために、廃液処理を怠って川に捨てているのだ。
「最低ですわ。自然を、そして命を何だと思っていますの?」
「許せん……! 森の水を汚すとは、万死に値する!」
アミィが鉄扇を握りしめ、プリムローズ(元・自然管理者)が激怒して震えている。
ルビィも、汚れた川を見て悲しそうな顔をしている。
「お魚さんたち、苦しそう……」
「ああ。だから、お掃除の時間だ」
俺は白衣を翻し、工場の入り口へと歩き出した。
「ゴルド、正面突破だ。ただし、中の機材は壊すなよ? 『証拠品』としてギルドに突き出すからな」
「御意! 悪徳業者ニ、鉄槌ヲ下シマス!」
美しい川と、今夜の夕食を守るため。
俺たち「錬金術師パーティー(環境保護団体)」による、過激なガサ入れが始まろうとしていた。
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